「首狩り族」から「麻薬部族」へ…ヘロインと覚醒剤で年間600億ドルを稼ぐ「地図に載らない国家」ワ州の“知られざる実態”(文春オンライン)
地図には載らないが、オランダと同じ面積を持ち、スウェーデンを上回る軍隊を擁する「国」が存在する。その名はワ州。違法薬物であるメス(メタンフェタミン)やヘロインを輸出し、年間600億ドルを稼ぐ麻薬国家だ。 【写真】この記事の写真を見る(8枚) ミャンマーの中で事実上の独立国として機能し、中国政府も頭を悩ませるこの謎の民族国家は、いったいどのようにして誕生したのか。そして、なぜ麻薬なしには存在できないのか。 『 ナルコトピア 東南アジア“黄金三角地帯”の麻薬国家「ワ州」を追う 』(パトリック・ウィン著、光文社)から、ワ州の驚くべき実態を紹介する。 ◆◆◆
ワ人は、はるか昔から、世界とは言わないまでもアジア内でひどく蔑さげすまれてきた民族のひとつだ。大英帝国にとって、ワ人は「薄汚く」て「疑いなく残忍」であり、中国の清王朝では「いちばん厄介な野蛮人」と見なされた。 16世紀の探検家ヴァスコ・ダ・ガマでさえワ人を中傷した。ミャンマーと中国を隔てる険しい山岳地帯にあるワ人の根拠地に足を踏み入れたこともないのに、彼らにまつわる噂をもとに、詩のなかで次のように書いている。 人肉を貪る凶暴な食い意地 みずからに焼印を入れる蛮行! ヴァスコ・ダ・ガマはまちがっていた。ワ人は食人族ではないからだ。首狩りをして、儀式のために敵の首を槍に刺して並べたが、スコットランドの部族やフランスの革命勢力も同じことをしている。みなそれぞれの理由があるのだ。
中世から20世紀までワ人は軽蔑されてきた。彼らの最後の首狩りは、ビートルズが解散してディスコが流行するまえだったにもかかわらず、偏見は根強く残った。いまやワ人は「麻薬部族」として知られている。何か書かれるときには毎度と言っていいほど、違法薬物をせっせと生産する悪質な山岳民族と見なされる。 これほどまでに特定の物産と強く結びついている文化はほとんどない。アーミッシュが家具を、スイス人が時計を作るように、ワ人はメスを製造する。メスが流行するまえにはヘロインを量産していた。ワ人の土地は寒冷で痩せているので、野菜の栽培には最悪だが、ヘロインの原材料であるアヘンゲシには理想的なのだ。