南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の結果について
2026.07.24
国立研究開発法人海洋研究開発機構
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「海洋安全保障プラットフォームの構築」(プログラムディレクター:石井 正一、以下「SIP海洋」)では、海底鉱物資源として注目される南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)の海底下にあるレアアース泥(ハイテク製品に欠かせないレアアースを高濃度に含む堆積物)の探査、採鉱、分離・精製・製錬などの実証に取り組んでいる。
本試験は、SIP海洋において2018年以降開発してきた、石油・天然ガス掘削用の「ライザー掘削方式」に独自技術を加えた「閉鎖型循環方式」による採鉱システムについて、深海6,000メートル環境下でも確実に作動することを確認するために行った。この「閉鎖型循環方式」は閉鎖系で稼働するため、採鉱時に発生する懸濁物(けんだくぶつ)の漏洩・拡散を抑制し、海洋環境への負荷を少なく抑える技術を目指したものである。
本試験は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長:河村 知彦)が保有する地球深部探査船「ちきゅう」(以下「ちきゅう」)を用いて、本年1月12日から2月14日にかけて実施した。また、採鉱に伴う海洋環境への影響を調べるため、海底と船上での同時環境モニタリングシステムの運用試験も併せて行った。
本試験の期間中は、現場海域で7メートル近い波高と約20メートルの強風を記録する荒天に何度か遭遇した。船上からの採鉱機や揚泥管の降下作業には、予定の7日間を上回る12日間を要する厳しい環境であったが、安全を最優先に作業を遂行した。
その結果、1月30日にパイプ長(※1)5,569メートルの海底に解泥機が着底し、2月1日午前0時30分過ぎ、「ちきゅう」船上にて海底下のレアアース泥の解泥と船上への連続揚泥を確認した。
3日間の揚泥試験において3箇所のレアアース層からレアアース泥の回収に成功し、開発した採鉱システムの安定稼働を確認した。
今回の試験成果として、世界で初めて水深5,569メートル(パイプ長(※1))の海底下から連続して船上へ揚泥することに成功した。
期間 内容 1/12 清水港出港、ROV試験潜航 1/13~17 南鳥島試験海域へ回航 1/17~18 トランスポンダ設置、自動船位保持セット、降下前準備 1/18~30 採鉱機・揚泥管降下、貫入 1/30~31 ドリルパイプ降下 1/31~2/2 採鉱試験(2月1日未明 最初の揚泥を確認) パイプ長(※1)で水深5,569ⅿの地点で実施 2/2~3 ドリルパイプ揚収 2/3~9 採鉱機、揚泥管揚収 2/9~14 清水港へ回航、清水港帰港用語解説
※1
パイプ長 水深を測る指標の一つで、揚泥管(ライザーパイプ)の長さから水深を決めている。
本試験で回収されたレアアース泥は、スラリー(海水中に固体の微粒子が均一に分散している流体混合物)として「ちきゅう」に搭載された貯留タンクに貯蔵した。
レアアース泥の揚泥量は、解泥時に加えた海水を除去した重量で約50トンと算定された。
また、回収したレアアース泥の成分分析を行った結果、レアアース総量の約54 %がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重レアアース(※2)であることが判明した。
なお、有害物質および放射性物質については、有意な数値は検出されなかった。
用語解説
※2
中重レアアース レアアース(希土類)のうち、原子量が比較的重いグループ。イットリウムやジスプロシウムなどが含まれ、電気自動車(EV)の駆動モーター用磁石など、最先端のハイテク製品に不可欠な極めて希少価値の高い金属。
採鉱試験と並行して実施した環境モニタリングシステム運用試験では、海底に設置型無人探査機「江戸っ子1号COEDO」(以下「COEDO」)、環境DNA自動採取装置、ハイドロフォン(水中マイク)を設置し、採鉱システムの稼働に伴う懸濁物の発生状況などを連続観測した。
また船上ラボでは、SIP海洋で開発し国際標準化機構(ISO)から発行された国際標準規格(ISO 23730、23731、23734)の手法を用い、表層海水と揚泥したスラリーを試料として生物群集のモニタリングを実施した。さらに、遠隔操作無人探査機(ROV)や「COEDO」のビデオカメラにより、海水中の魚類や海底の底生(ていせい)動物の生息状況を記録した。
現在、観測データの解析と試料の分析を進めているが、船上におけるバイオアッセイ(生物検定:ISO 23734)に基づく分析結果からも、今回の採鉱に伴って生じる鉱物由来の環境汚染リスクは、低いと判断される。
本試験の成果を踏まえ、これまでの技術開発と運用ノウハウをベースに、令和9年(2027年)2月から同じ試験海域にて、約1ヶ月間にわたる本格的な採鉱試験を実施する予定である。
この試験では、揚泥したレアアース泥のスラリーを南鳥島へ船舶輸送して陸揚げし、脱水処理を行った「マッドケーキ」の状態で本土へ輸送した上で、分離・精製・製錬のプロセス試験を実施する計画である。
さらに、飛行機やヘリコプターでの人員輸送を含む産業的規模を見据えた本格的なオペレーションを行うことで、産業的規模でのレアアース生産プロセスを検証する。これらの試験で得られたデータを基に、令和10年(2028年)3月までに、国内における国産レアアースの産業化に向けた総合評価(経済性評価を含む)を行う予定である。
図1 本航海での最初の揚泥サンプリング(2月1日未明 「ちきゅう」船上)※下の写真はスラリー状のレアアース泥
図3 地球深部探査船「ちきゅう」の出航(1月12日、静岡県清水港)
参考プレスリリース:
令和3年9月27日プレスリリース 「海底資源開発での環境影響評価に関わる調査手法が国際標準規格として発行」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210927/
令和4年10月18日プレスリリース 「レアアース泥採鉱装置による水深2,470m海域からの海底堆積物揚泥試験の成功について」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20221018/
令和7年12月23日プレスリリース 「南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の実施について」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20251223/
令和8年2月2日プレスリリース 「南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の状況について(速報)」