ウォルマート、コスト高警戒も通期見通し上げ-ナスダック上場へ移行
小売り最大手の米ウォルマートは、通期の売上高および利益見通しを引き上げた。コスト上昇を吸収しつつ、価格に敏感な消費者の支持を獲得していることが示唆された。
通期の純売上高は前年比4.8-5.1%増になると見込んでおり、8月時点の予想を上回る水準となった。今会計年度内での業績見通し引き上げはこれが2度目となる。
雇用市場の減速や企業の人員削減、物価上昇を背景に消費者が支出を抑制しているとの懸念は、今回の結果を受けていくらか和らぐ可能性が高い。競合する大手量販店チェーン各社が消費者の慎重姿勢を警告する中、ウォルマートに一層の注目が集まっている。同社は来年、新最高経営責任者(CEO)の下で新たな局面を迎える。
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ジョン・デービッド・レイニー最高財務責任者(CFO)はインタビューで、「消費者の動向を注意深く見守っているが、当社の事業全体については総じて良好な状況だと感じている」と発言。その上で、同社はコスト上昇に直面しているとし、「依然として一定の圧力がある。今後数カ月でさらに強まる可能性もある」と付け加えた。
好調な分野の一つが電子商取引だった。レイニー氏によると、ウォルマートは配送地域の拡大や輸送コストの削減、外部出店者によるマーケットプレイスの拡充を進めている。所得層を問わず、商品をより早く受け取りたいと考える顧客が追加料金を支払う傾向も続いているという。
底堅い個人消費
消費支出はおおむね安定して推移していると、レイニー氏は指摘した。低所得層ではわずかな減速が見られるものの、中・高所得層の消費者は支出を抑えておらず、特に高所得層では一部分野で支出が増加しているとの見方を示した。「補助的栄養支援プログラム(SNAP、旧フードスタンプ)」の支給遅延が、8-10月(第3四半期)に一時的な売り上げ減少を招いたが、その後は回復したと説明した。
同四半期を通じて月ごとの事業動向はおおむね安定していたと、ウォルマートの幹部らはアナリストとの電話会見で話した。衣料品や家庭用品など非食品分野の売り上げが増加したという。
レイニー氏によれば、年末商戦も順調な滑り出しとなっている。同社傘下の会員制量販店サムズ・クラブでは、今シーズンの人気商品としてマージャンセットが注目を集めているという。
ウォルマートの米国事業では、8-10月期に価格が1%上昇した。関税によるインフレ圧力を同社が最小限に抑えていることを示唆している。一部コストを自社で吸収しつつ、必要に応じて一部を価格に転嫁しており、価格をできるだけ抑えるために仕入れ先と緊密に連携したり、他地域から調達したりしている。
過去最大規模の移管
ウォルマートはこれとは別に、自社株の上場先をナスダックに変更すると発表した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)にとっては史上最大規模の移管となる。
米アーカンソー州ベントンビルに本社を置く同社は、1972年から上場しているNYSEから、ナスダック・グローバル・セレクト・マーケットに移る予定で、株式の取引開始日は12月9日の見通しだ。
ナスダックへの移行は、同社の「テクノロジー重視の姿勢」を反映したもので、9本の社債も同取引所に移管する計画。株式のティッカーシンボルはこれまでの「WMT」を維持する。
ナスダックによると、昨年はS&P500株価指数構成銘柄のうち約40社が同取引所に移管し、そのうち24社が現在ナスダック100指数に採用されている。
原題:Walmart Boosts Outlook While Warning That Higher Costs Loom (1)、Walmart Jumps to Nasdaq in Biggest Exchange Transfer on Record(抜粋)