精神・発達障害者6割が「クローズ就労」 当事者団体アンケート

障害をオープンにしない、しづらいその他の理由

 精神・発達障害の当事者団体が当事者を対象に就労に関するアンケートをしたところ、6割超が自身の障害を開示せずに働く「クローズ就労」をした経験があると回答した。障害を開示しづらい理由として「解雇や雇い止めなど雇用に不利益があると感じる」と答える人が多く、団体の代表は「障害の有無にかかわらず、より良い働き方を会社側と一緒に相談しながら作っていける職場環境が求められる」と指摘している。

解雇や嫌がらせの不安

 アンケートは一般社団法人「精神障害当事者会ポルケ」(東京都大田区)が実施。2025年12月~今年1月にインターネットを通じて募集し、26都道府県の181人から回答を得た。30日にポルケのサイトで公開した。

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 回答者は20~60代で、うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害などの障害がある。10年以上通院している人が43%で、クローズ就労経験者は64%だった。

 障害をオープンにしない、またはしづらい理由を選択肢を設けて複数選択可で質問したところ、55%が「解雇や契約更新されないなど、雇用に不利益があると感じるから」と回答。51%が「嫌がらせやいじめ・からかいの対象になるのではと不安だから」、45%が「職場での人間関係が悪くなりそうだから」と答えた。「周囲から能力が低い・頼りないと思われそうだから」「『障害者』というラベルで見られたくないから」も多かった。

 自由記述には「面接で事前に伝えると採用されにくい」「訴えても聞き入れてもらえなかった」「(障害者雇用は)賃金体系が低い職場が多い」という声が寄せられた。

 厚生労働省によると、自身の障害を会社側に伝える必要はなく、会社側も障害などについて確認できるのは車の運転を伴う業務でてんかんの有無を確認するといった特別な職業上の必要性がある場合に限られる。

配慮を求めるのにハードルも

 一方、働き方において合理的配慮を求める目的などから障害を開示する「オープン就労」を経験したことがある人は54%だった。

 ポルケの山田悠平代表理事は「障害者雇用で採用されるためにオープン就労を選んだり、うまく開示でき途中でクローズ就労からオープン就労に変更したりするケースも少なくない。ただオープンにした際に差別的な扱いを受けてしまうケースもある」と説明する。

 アンケートでは就労で困難を感じたことがあるかについても質問し、81%が「ある」と回答した。職場に合理的配慮を求めた経験については58%が「ない」と回答しており、配慮を求めるハードルの高さがうかがえた。理由としては「同僚や上司の理解を得るのが難しい」「配慮を求めたことでコミュニケーションのトラブルや、その後の働き方で不利な扱いを受けないか不安」などの意見が多かった。

 山田代表理事は「障害者の働き方に限らず、障害のある人もない人もコミュニケーションが取りやすい健全な職場環境が必要だ」と話している。

当事者の意思尊重を

 精神障害者の就労に詳しい国立精神・神経医療研究センターの山口創生・精神保健サービス評価研究室長は「一般雇用と比べ、障害者雇用は給料面や働ける職種の幅が狭い。そのため、自分の希望する仕事を選ぶために『クローズ』を望む人が多い」と話す。障害者雇用は増えているものの多くの企業では待遇が低く就職後にキャリアアップできる仕組みも少ないという。

 山口室長は「偏見や差別がある中、障害の開示の有無のみならず、メンタルヘルスの不調について言えない人もいる。言いたくない人は言わなくてもよいという形があるべきだ」と当事者の意思を尊重することの重要性を指摘。その上で「オープンでもクローズでも、もっと言えば障害のあるなしに関わらず合理的配慮は必要だ。例えば、子どもに何かあって急きょ早退することと、通院のために早退することは、理由は違えど行動は同じ。社員全体にどういう配慮が必要か聞いて、それぞれに配慮があることが理想だ」と提案する。【加藤昌平】

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