ゼレンスキー氏に停戦圧力、同盟国に切迫感-トランプ政権の発足控え
ロシアによる侵攻に1000日近く抵抗してきたウクライナ支援国は、戦闘終結に向けプーチン大統領を交渉のテーブルに着かせる新たな方法を検討するようゼレンスキー大統領に迫っている。
戦争の早期終結を公約に掲げたトランプ次期米大統領は来年1月にホワイトハウスに復帰する。ドイツのショルツ首相は15日にプーチン大統領と電話会談し、和平協議への参加を促した。フランスのマクロン大統領も17日、適切な時期にプーチン氏と話す考えを示した。
欧州当局者2人によれば、ウクライナもロシアも決定的勝利を確実にできない状況が明らかになる中で、ゼレンスキー氏はプーチン氏と妥協せざるを得ないとの認識が強まっている。
バイデン米大統領にとって最後のG20首脳会議の開幕を翌日に控えた17日夜、プーチン氏に対する北朝鮮の協力強化への対応として、米国はウクライナにロシア領内への長距離ミサイル攻撃を許可した。トランプ次期大統領就任前にウクライナの立場を強化し、最終的に行われる交渉を優位に進められるようにしたい思惑がある。
ロシアは米国の決定を非難。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、長射程の戦術弾道ミサイルシステム「ATACMS」の使用をウクライナに許可したことは、「新たな緊張」を招くと述べた。同報道官の発言は国営タス通信が伝えた。
ゼレンスキー氏は長らく、ロシア領内深くの軍事標的を西側の兵器で攻撃することを認めるよう支援国に求めていた。だが、米国の決定が17日に漏れ伝わると驚いた様子で、「このようなことは発表されるべきではない」とビデオ演説で語った。
匿名を要請した事情に詳しい関係者によると、米国の許可はロシア・クルスク州の攻撃対象のみに限定され、ウクライナ側の期待には遠く及んでいないという。
ホワイトハウスは決定を明確には確認しなかったが、ファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)は北朝鮮兵士の戦線への投入が事態をエスカレートさせたと指摘。「それには対応すると、ロシア側に明らかにしていた」と述べた。
一方、トルコのエルドアン大統領も和平交渉の開始を支持している。関係者によると、同氏は18日にリオデジャネイロで開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議で、現状の戦線で戦闘を凍結する案を提示する予定だ。
関係者が匿名を条件に明らかにしたところでは、エルドアン氏は、プーチン氏への譲歩の一環として、北大西洋条約機構(NATO)加盟協議を少なくとも10年遅らせることにゼレンスキー氏が同意するよう提案する見通し。
停戦を求める声の突然の高まりは、トランプ氏の大統領復帰で米国の支援が大幅に削減される可能性をにらみ、ウクライナ支援国の間に広がる切迫感をうかがわせる。北朝鮮軍がロシア側に加勢する現状で、ウクライナの広大な地域を破壊し、何千億ドルもの金融支援や外国製の武器を大量に消費し、欧州や世界の地政学的関係を一変させた戦闘の停止を目指す機運は広がっている。
しかしプーチン氏は、ロシア軍に多数の死傷者が出ているにもかかわらず、停戦を検討する姿勢はほとんど見せていない。先週にはショルツ氏に対し、常に協議に応じる用意はあるが、いかなる合意もロシアの安全保障上の懸念と領土獲得を考慮したものでなければならないと述べた。ロシア側は、ゼレンスキー氏への圧力の高まりを消耗戦略が実を結びつつある兆候と解釈する可能性が高い。
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G20首脳会議に出席する中国とブラジルは5月以降、ロシアとウクライナが参加する国際会議の開催を呼びかけている。
ゼレンスキー大統領は16日、自国の公共放送に対し、来年には戦争を終結させたいと語った。同大統領は、ウクライナがロシアの攻撃により効果的に対抗し、プーチン氏に交渉を促す圧力を高めることを目指し、一層強力な兵器の追加供与を同盟国に求めている。
だが、ゼレンスキー氏はG20首脳会議に出席しない。招待を求める切実な訴えをブラジルのルラ大統領が無視し、排除された格好だ。国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑で逮捕状を出しているプーチン氏は先月、出席すれば「混乱を招く」として、G20首脳会議への出席を見合わせると明らかにした。
G20首脳会議のほぼ最終的な共同声明案の言い回しは、ゼレンスキー氏とウクライナを支持する主要7カ国(G7)諸国を不愉快にしそうだ。ロシアの侵攻に対する非難が抜け落ちた、昨年ニューデリーで合意された宣言と同様の内容だからだ。
週末にかけ、ロシアはミサイルとドローンで過去最大級の攻撃を仕掛け、ウクライナの電力や水の供給網を破壊した。それでもG20では、昨年の宣言には盛り込まれたエネルギーインフラへの攻撃停止の呼びかけにすら、反対の声がある。
ゼレンスキー氏が提唱する「平和の公式」は、北大西洋条約機構(NATO)加盟への明確な道筋と加盟までは守られるという安保上の保証に基づいている。
対照的に、エルドアン氏はプーチン氏への譲歩として、ウクライナがNATO加盟交渉を最低10年遅らせることに同意することを提案している。エルドアン氏の考えについて説明を受けた関係者が、非公表の内容だとして匿名で明らかにした。
エルドアン案はロシアが2014年以来占領するウクライナ東部のドンバス地方に非武装地帯を設置し、国際的な軍が駐留することなども示唆しているという。トルコの当局者はウクライナには受け入れがたい案だろうと認めつつ、最も現実的なアプローチだと主張した。
この情報について、トルコ外務省のケジェリ報道官は細かな部分で正確ではないとしつつ詳細への言及は控え、「トルコは戦争終結へのイニシアチブを支持している」と述べるにとどめた。
原題:Zelenskiy Pressured to Find Ways to Negotiate With Putin (2)(抜粋)