人工甘味料で脳の老化が加速、「1.6年分の差」に相当 新研究
人工甘味料の摂取量が多い人は、少ない人に比べて認知機能の低下が1.6年速く進むとの研究結果が報告された/Stefania Pelfini la Waziya/Moment RF/Getty Images via CNN Newsource
(CNN) 人工甘味料の摂取量が多い人は、少ない人に比べて認知機能の低下が速く進み、その差は1.6年分に相当するとの研究結果が報告された。
ブラジル・サンパウロ大学医学部の准教授、クラウディア・キミエ・スエモト氏らのチームがこのほど、米神経学会誌に発表した。
研究チームは、同国での「ブラジル成人健康縦断研究」(ELSA―Brasil)に参加した35~75歳の1万3000人について、食生活と認知機能の関係を分析した。
参加者の食生活に関する情報はELSA―Brasilの開始時に収集されていた。認知機能検査は平均8年間のうちに3回実施され、言語の流暢(りゅうちょう)性、ワーキングメモリー(作業記憶)、単語の想起、処理速度が測定された。
人工甘味料の摂取量は3段階に分かれ、最も多いグループが1日当たり平均191ミリグラム(小さじ約1杯)。世界保健機関(WHO)によると、ダイエット炭酸飲料1缶には合成甘味料のアスパルテームが約200~300ミリグラム含まれている。
中間のグループは1日平均66ミリグラム、最も少ないグループは同20ミリグラムの人工甘味料を摂取していた。
「低カロリー、ノンカロリー甘味料を最も多く摂取したグループは、最も少ないグループに比べて全般的な認知機能の低下スピードが62%速かった。これは1.6年分の脳の老化に相当する」と、スエモト氏は語る。
中間グループの低下スピードは最も少ないグループより35%速く、1.3年分の老化に相当するという。スエモト氏によれば、これはあくまで観察に基づく研究で、人工甘味料が認知機能を低下させる原因だとは断定できない。「ただし、甘味料が認知機能の不良な経過に関係していることは分かった」という。
チームによると、こうした甘味料は低糖質の超加工食品や、糖尿病患者向けの食品によく使われている。
米ラッシュ大学の専任講師、トーマス・ホランド氏はこの研究に合わせて執筆した論評の中で、低カロリー、ノンカロリー甘味料は「ヘルシー」をうたう多くの食品に含まれているが、砂糖の安全な代替品ととらえるのは間違いかもしれないと指摘した。
これに対し、業界団体の国際甘味料協会(ISA)はCNNへのメールで「低カロリー、ノンカロリー甘味料の安全性は、世界の主要な保健組織が一貫して確認している」と主張した。
糖尿病患者で特に目立つ衰え
スエモト氏によると、糖尿病患者では記憶力と全般的な認知機能の衰えが特に目立った。糖尿病でない人々に比べ、甘味料の摂取量が全体に多い可能性があるためと考えられる。
同氏は「さらに、糖尿病自体がアルツハイマー病と血管性認知症の大きなリスク要因だという理由も考えられる。その結果、有害物質の摂取に対して脳がより脆弱(ぜいじゃく)になるのだろう」との見方を示した。
チームはまた、研究結果を年齢ごとに分析した。すると、60歳未満で甘味料の摂取が多かったグループは、言語流暢性と全般的な認知機能の衰えがより速く進んだことが分かった。この結果は60歳以上のグループには当てはまらなかった。
ホランド氏は論説の中で、「認知症の症状が出るより何十年も前の中年期での摂取が、生涯にわたる脳への結果をもたらすことを示唆している」と述べた。
機能低下との関連性がみられない甘味料も
研究チームが調べた甘味料はアスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK(カリウム)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、タガトースの7種類だ。
このうちタガトースは、認知機能低下との関連性がみられなかった。タガトースは果糖やブドウ糖と同じ単糖類。自然界で希少な植物にしか存在しないため希少糖とみなされるが、酵素を使って人工的に製造することもできる。
チームによれば、そのほかの甘味料は全般的な認知機能低下の加速に関連していた。特にワーキングメモリーと言語流暢性では顕著な関連性がみられた。
サッカリンとアセスルファムK、アスパルテームは、米食品医薬品局(FDA)から「一般に安全とみなされる(GRAS)」との認証を受けた代表的な人工甘味料だ。FDAの公式サイトには、これらを含む甘味料の許容摂取量が掲載されている。
WHOは23年7月、アスパルテームを「発がん可能性がある物質」のリストに加えたが、FDAはこれを否定している。
エリスリトール、キシリトール、ソルビトールは糖アルコールと呼ばれる炭水化物の一種。自然界でもカリフラワーやナス、レタス、ラズベリー、イチゴなどにごく少量含まれるが、人工的に作られてダイエット炭酸飲料や紅茶、菓子などに添加されている。
エリスリトールとキシリトールは血小板の凝集反応を誘発し、血栓形成のリスクを増大させる可能性が、過去の研究で指摘されている。その研究を率いた米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所のスタンリー・ヘイゼン氏は、ブラジルの研究に「関心と懸念」を示し、両チームの結果のように「人工甘味料やノンカロリー甘味料の長期的な安全性と、そのGRAS認証に疑問を投げかけるデータが増えつつある」と強調した。