迷惑「撮り鉄」がひまわり畑に三脚、民家の敷地に無断侵入して庭木を切断 最悪マナーに各地で悲鳴

 鉄道写真を撮ることを趣味とする、通称「撮り鉄」。最近、そのマナーの悪さが目立つようになっている。被害に頭を悩ませて、運行予定表を非公開にした人気鉄道もある。「紳士淑女の趣味」だったはずの「撮り鉄」の世界に何が起きているのか。 【写真】迷惑「撮り鉄」がひまわり畑に三脚、民家の敷地に無断侵入して庭木を切断 最悪マナーに各地で悲鳴 * * * 「下がってください!」 「そこの人邪魔!!」  8月某日、ひまわり畑に罵声が響いた。声の主は、鉄道写真を撮ることを趣味とする、通称「撮り鉄」たち。撮影の妨げになる人たちを追い払っていたのだ。  ひまわり畑があるのは、岐阜県大垣市平町。約3ヘクタールに約14万本ものひまわりが咲き誇り、大垣の夏を彩る風物詩として有名。そして、撮り鉄たちにとっても格別のスポットとなっている。 ■ドクターイエローを撮りたくて  ひまわり畑は東海道新幹線の線路沿いにあり、ひまわり越しに新幹線を撮影できる。中でも撮り鉄が狙うのが、「幸せを呼ぶ」と言われる黄色い新幹線のドクターイエロー。JR東海の車両は1月に引退したが、JR西日本の車両は今もおよそ10日に1度走行している。そこで、多くの撮り鉄が、ひまわりとドクターイエローの“黄色の共演”をカメラに収めようと詰めかけた。ところが、撮影の妨げになるからと、見物客に怒号を上げたのだ。 ひまわり畑を開催・運営する「大垣ひまわり畑実行委員会」は8月8日、公式サイトで異例の注意喚起を発表した。 「今後はこの様な怒号等が飛び交うならば、ひまわり畑の三脚・脚立・踏み台等の持ち込み自体を禁止することを検討します」  ひまわり畑だけではない。今、撮り鉄たちの傍若無人な振る舞いが各地で起きている。  今月1日、長野県北部を走る「しなの鉄道」は、9月以降は115系車両の運行情報の公表を取りやめると発表した。

■撮り鉄が無断で民家の敷地に  115系は旧国鉄時代に製造された電車。しなの鉄道ではJR東日本から譲り受け、クリーム色と青色の「横須賀色」や、緑にオレンジの「湘南色」など6編成を走らせている。同社では、多くの人に115系に親しんでもらおうと10年以上にわたり、列車の運行日・時間・運行経路を示した「運行予定表」を公式サイトで毎月公表してきた。だが、8月上旬、重大なマナー違反が勃発。撮り鉄が走行中の115系を撮影しようと、民家の敷地に無断で侵入した上、庭先の木を切ったのだ。 「社内で協議し、残念ながら運行予定表の公表を終えることにしました」(しなの鉄道)  撮り鉄の心理は、「いい写真を撮りたい」に尽きる。しかし、写真への情熱は時に、マナー違反や迷惑行為に繋がる。  関東地方のあるローカル線の関係者は、「マナーを守らない撮り鉄はお客様ではありませんよ」と憤る。線路内に入った撮り鉄に注意すると、「あんたは警察か」と逆ギレされたという。 ■鉄道を愛するものとしての気品を  迷惑行為をする撮り鉄は、一部に過ぎない。しかしなぜ、ここまでマナーが崩壊したのか。  全国の鉄道を取材するフォトライターの矢野直美さんは、「撮影以外のことがないがしろにされていると感じます」と話す。 「いい写真を撮りたいという思いは、誰もが持っています。しかし、本当に鉄道を愛しているのであれば、運行の邪魔をしたり、周囲に迷惑をかけたりする行動はしないはずです。撮影さえできればいいとルールやマナーを破りがちになっているのではないでしょうか」  矢野さんは、鉄道写真は「紳士淑女の趣味」だと言う。ホームに三脚や脚立を立てない、線路内や個人の私有地に立ち入らない、運転士に向けてストロボをたかない――。鉄道を愛する者としての気品を持ち、互いに敬意を払いながら、こうしたルールやマナーを守って撮影するものだと。 「それは、自分の命を守るためでもあります。そして、迷惑行為が増えると規制は厳しくなり、撮影環境はますます悪化します。鉄道があるから写真を撮れるのであって、写真を撮るために鉄道は存在するわけではありません。そのことを忘れずに、鉄道写真を楽しんでほしいと思います」  この呼びかけが、鉄道を愛する全ての人に届いてほしい。 (AERA編集部・野村昌二)

野村昌二

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