金氏、マドゥロ氏排除で「斬首作戦」現実にあり得ると痛感 北朝鮮の元外交官

韓国ソウルで、AFPとのインタビュー中に写真撮影に応じる、李日奎(リ・イルギュ)氏(2026年1月26日撮影)。(c)Jung Yeon-je/AFP

【AFP=時事】2019〜2023年に北朝鮮の在キューバ大使館で政治担当参事官を務め、2023年11月に韓国に亡命した李日奎(リ・イルギュ)氏がAFPのインタビューに応じ、南米ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を排除した米国の急襲作戦は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記に自身も「斬首」作戦の標的とされるのではないかとの危機感を抱かせた可能性があると述べた。

李氏は、マドゥロ氏を排除した米国の急襲作戦は、金氏にとって最悪のシナリオだったと述べた。

現在ソウルのシンクタンクに勤務する李氏は、「金氏は、いわゆる『斬首』作戦が現実的にあり得ると痛感したに違いない」と述べた。

北朝鮮指導部は長年、米国が北朝鮮の政権転覆を試みていると非難しており、それに対する抑止力として核・ミサイル開発計画が必要だと主張している。

だが、李氏はAFPに対し、マドゥロ氏の排除は安全保障に執着する北朝鮮指導部の間でパニックを引き起こすだろうと語った。

「金氏は自身に対する攻撃に備え、自身のセキュリティーと対抗手段に関するシステム全体を徹底的に見直すだろう」と述べた。

マドゥロ氏の社会主義政権の主要な支援国であるキューバの北朝鮮大使館で、李氏は中南米における北朝鮮の国益増大を任されていた。

2013年にパナマで拿捕(だほ)された北朝鮮船を解放させるなど、注目を集めた交渉で重要な役割を果たし、そうした功績により金氏から直々に表彰された。

李氏の最後の任務の一つは、キューバが韓国と外交関係を結ぶのを阻止するというものだったが、最終的には失敗に終わった。

だが、北朝鮮の体制への積もり積もった不満から脱北を決意した。

「もううんざりだった」と李氏は語った。

上司からの賄賂(わいろ)の要求を拒否し、機会を奪われたことで我慢の限界を超えたという。

■最高指導者は神聖不可侵

韓国に定住して以来、李氏は北朝鮮に関する率直な評論家となり、韓国最大の新聞でコラムを連載している。

日本語で回顧録「私が見た金正恩ー北朝鮮亡命外交官の手記」を出版しており、英語版も出版する予定だ。

李氏が韓国で過ごした時期は、2024年末の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による衝撃的な「非常戒厳」宣布から、弾劾とそれに続く罷免まで、韓国政治において近年最も激動の時期と重なった。

その後、韓国国民は北朝鮮との関係改善を重視する進歩派の李在明(イ・ジェミョン)氏を大統領に選出した。

元北朝鮮外交官の李氏は、こうした最近の混乱によって自由民主主義への理解が深まったと述べた。

「韓国は弾劾後、数か月間大統領不在の状態が続いた。大統領がいなくても、体制は非常にうまく機能していた」と指摘。

北朝鮮ではこのような事態は考えられないとして、「北朝鮮は指導者を完全に神格化している」と述べた。

「いわゆる最高指導者が民意によって実際に倒される可能性があるとは、北朝鮮人民には思いもよらない」と付け加えた。 【翻訳編集】AFPBB News

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