神奈川県秦野市:ドリフト走行後絶たず…「攻めやすく」するため安全設備の損壊相次ぐ : 読売新聞
公道で車を横滑りさせる危険なドリフト走行が後を絶たない。ドリフトの名所として知られる神奈川県秦野市のヤビツ峠では、防犯カメラや道路 鋲(びょう) など安全設備の盗難、破壊行為が相次いで確認されている。県警は「(ドリフトは)命にかかわる危険な行為。絶対にやめて」と呼びかけているが、取り締まりには新たな課題も見えてきた。(山崎永麗南)
監視カメラ窃盗や道路鋲損壊
道路鋲が取り外された跡。ドリフト走行と思われるタイヤ痕も残る(秦野市で)「強い憤りを感じる」。秦野市地域安全課の原徳郎危機管理担当課長は怒りをあらわにする。人気漫画「頭文字D」にも登場するヤビツ峠は、カーブが多くて道幅が狭く、片側は崖。危ない道路を「攻める」若者は減らず、市は昨年12月、地元住民らの要望に応えて防犯カメラ2台を設置した。だが1月下旬、カメラは2台ともなくなっていた。
3月には、県がヤビツ峠につながる県道に道路鋲18基を設置したが、すぐに6基が壊されたという。現場には工具ではがされた跡と、車のタイヤ痕がくっきりと残されていた。道路鋲はセンターラインなどに沿って設置され、視覚的にドライバーを誘導する安全装置だが、ドリフトをする際に段差が邪魔になるため、壊されたとみられる。秦野署が防犯カメラは窃盗事件、道路鋲は器物損壊事件として調べている。
都内取り締まり強化で神奈川に
横浜市鶴見区の首都高速大黒パーキングエリア(PA)は1989年の開業後、東京都内で改造車や暴走族への取り締まりが強化された流れを受け、「ドリフト族」が集まるようになった。90年代後半には、大黒PA近くのスカイウォーク入口交差点でドリフト走行が横行した。
横浜市鶴見区大黒ふ頭でのドリフト走行の様子(県警提供)週末の深夜には改造車がけたたましいマフラー音を響かせ、見物人も大勢集まる。県警によると、昨年1~6月のドリフトによる騒音などの通報は150件に上った。
県警は取り締まりを強化し、昨年6月~今年3月、大黒ふ頭でドリフト走行を繰り返したとして、道路交通法違反(共同危険行為等の禁止)容疑で男ら11人を逮捕、書類送検した。今年の通報は5月末時点で12件と減少している。
パトカーの位置情報をSNSで共有
県警暴走族対策室によると、ドリフト族はSNSで呼びかけて集まり、パトカーの位置情報などを共有すると、すぐに散り散りになるという。SNSではパトカーや取り締まりを意味する複数の記号や隠語が使われ、摘発を難しくしている。
県警は捜査車両が追跡することでけが人が出たり、一般車両に危険が及んだりすることを避けるため、ドリフト行為を動画で撮影するなどし、後日の摘発につなげている。県警幹部は「騒音被害も続いており、継続的に摘発していく」と力を込める。