世界は明るすぎる?! 鳥が1日あたり50分長く鳴くようになった

Image: Bachkova Natalia / Shutterstock

まぶしすぎるって抗議していたりして…。

鳥の鳴き声でいつもより早く目が覚めたり、夜も遅い時間までさえずったりしているなら、それは「光害」のせいかもしれません。

人工的な光は、今や地球の隅々まで照らしています。新しい研究結果によると、明るすぎる世界が鳥の体内時計を大きく狂わせてしまっているそうですよ。

鳥が1日あたり最長50分長く鳴くように

研究チームは、世界中から集めた580種以上に及ぶ昼行性の鳥類の鳴き声6100万件を分析しました。学術誌Scienceに掲載された研究結果で、都市部のような最も明るい環境においては、光害が原因で鳥のさえずりが1日あたり50分長くなっていることが明らかになりました。

明るすぎる地域に生息する鳥は、最も暗い環境の鳥と比較して、朝は平均18分早く鳴き始め、夕方は鳴きやむのが32分遅いといいます。人工光が種や地域、季節を問わず、鳥の行動に影響を及ぼしていることを示唆しているというのです。

見過ごされがちな光害の影響

研究の著者である南イリノイ大学のBrent Pease氏(生物多様性保全学准教授)とオクラホマ州立大学のNeil Gilbert氏(生物学准教授)は、米Gizmodoの取材に対し、光害が鳥に与える影響についてメールで次のように話しています。

光害は、人間と野生生物の健康にとって、進行中の深刻な懸念材料です。現在、世界の80%、アメリカとヨーロッパの人々の99%以上が、光に汚染された空の下で生活していると推定されています。光害が人間の健康にもたらす影響は広く研究されていますが、世界中の野生生物にどのような影響を与えているかについては、まだ研究途上です。

世界中の鳥の声を6100万件集めて分析

両氏は、光害が昼行性鳥類に与える影響を調査するために、鳥の鳴き声を記録・分析する世界的な市民科学プロジェクトであるBirdWeather(バードウェザー)が収集したデータを使用しました。

2023年3月から2024年3月の間に録音された6100万件の鳴き声を収集し、日の出や日没、昼間など、さまざまな太陽光の状態に応じて、朝の鳴き始めと夕方の鳴き終わりを算出しました。

両氏は、VIIRS(可視赤外撮像機放射計)の衛星データを用いて、BirdWeatherの各観測地点における月ごとの光害レベルを測定しました。現在、米海洋大気庁(NOAA)が運用する衛星であるSuomi NPPとNOAA-20に搭載されているVIIRSは、人間の居住地の明るさを観測できます。この技術によって、光害と連動して鳥が鳴き始める時間と鳴きやむ時間を分析できたとのこと。

光害の影響は想像以上

予想外の結果に驚きを隠せない両氏は、次のようにコメントしています。

鳥の反応の大きさに驚きました。平均すると、最も明るい夜空の下では、鳥の1日はほぼ1時間長くなります。夜間の光に対して、行動を適応させるのではないかとある程度予想していましたが、これほど影響が大きいとは思いもしませんでした。

この活動時間の延長が、鳥類の生存と繁殖能力に重要な影響を及ぼす可能性があるといいます。たとえば、活動時間が50分長くなれば、その分だけ休息時間が短くなり、結果的により多くのカロリーが必要になる可能性があります。

一方で、活動時間が長くなることで、採餌時間の増加や、繁殖生産性の向上につながるかもしれません。

光害と鳥の行動の複雑な関連性を解明するにはさらなる研究が必要とのことですが、明るくなり続ける世界が、昼行性の鳥たちの行動を変えているのは間違いありません。そして、光害の影響を受けているのは鳥だけではありません。

Pease氏とGilbert氏は、こう述べています。

光害は、人間と野生生物の健康に顕著な影響を与えているようです。人間がそうであるように、もしも活動時間が延びることで必要な睡眠を十分にとれなくなるようなら、健康や個体数への悪影響が予想され、世界中で進んでいる鳥類の長期的な減少をさらに悪化させる恐れがあります。

暗い時間は道を照らす程度の明かりだけにして、世の中がもっと明るくなるといいな。

Source: Science, NOAA

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