トランプ氏に打撃、敵性外国人法による移民強制移送は違法と地裁判断
トランプ米大統領が227年前に成立した敵性外国人法(AEA)を根拠に、犯罪集団メンバーと疑われるベネズエラ人不法移民をエルサルバドルの刑務所に強制移送するのは違法だと、テキサス州の連邦地裁判事は1日、判断した。トランプ氏が強行する一方的な移民逮捕と移送に、これまでで最も厳しい司法の制約が課された。この問題は米連邦最高裁判所で問われる可能性が高まった。
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トランプ氏が任命したロドリゲス・ジュニア判事は、違法と認定した根拠として、米国が外国軍に侵略されておらず、「略奪的侵入」も受けていないため、法律発動の要件を満たしていないと説明した。
判事は「大統領令を通じたAEA発動は、法律の文言が明確に記す意味を超えており、法の趣旨に反する」と判決文で述べた。判事は判決に先立ち、同地裁の管轄地であるテキサス州南部地区に住み、強制退去に直面しているベネズエラ人移民複数の訴訟を、集団訴訟に認定。判事はAEAに基づく強制移送に差し止め令を出した一方、他の一般的な移民法に基づく国外排除は引き続き認められる。
トランプ大統領はAEAの発動を通じて暴力的な犯罪者集団「トレン・デ・アラグア(TDA)」の構成員と疑われるベネズエラ人を、エルサルバドルのテロリスト収容所に送り込んだ。この日の地裁判決は、この取り組みに対する初めての司法判断となった。
全米市民自由連合(ACLU)の筆頭法務顧問、リー・ゲラーント弁護士はこの日の判決について、「平時にありながら大統領が一方的に侵略されたと宣言し、戦時権限を行使することは許されないことが明確になった。18世紀の米議会がこの法律を成立させたとき、このような乱用は想定しなかった。この極めて重要な判決によって、これ以上の移民がテロリスト収容所に送られずに済む」と評価した。
ロドリゲス判事は3月15日の大統領令について、AEAに明記されている「侵略」に相当する行為の説明が欠落していると指摘。「ベネズエラが米国を征服、もしくは部分的に掌握する目的を持って、組織的な武装集団を米国に侵入させているという脅威が、まったく言及されておらず、示唆もない」と述べ、AEAの定義に適合しないと断定した。
米最高裁はこれまで、この法廷係争に関連した判断を2度下している。直近ではテキサス州中部の拘置施設からの強制移送を一時差し止めたが、トランプ氏によるAEA発動の適法性についてはまだ判断を下していない。4月上旬には過半数判事の判断として、個々の訴訟は拘置されている地区の裁判所でそれぞれ提起されなくてはならないとした。これに伴い、全米各地で新たに訴訟が相次いでいる。
原題:Trump’s Deportations Under Wartime Law Blocked by US Judge (1)(抜粋)