NY金4,000ドルを視野に――投機的攻勢の自己達成
先週(9月29日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、さらに上値追いが続いた。5営業日中4営業日で終値ベースでの最高値を更新し、3営業日は取引時間中の最高値を更新した。月末と四半期末が重なった9月30日の終値は3,873.20ドルで9月月間では357.10ドル(10.16%)の大幅高となった。四半期ベースでも565.50ドル(17.09%)の大幅高で3四半期連続の上昇となった。
終値ベースで初の3,900ドル台
こうした中で先週末10月3日のNY金は、前日比40.80ドル高の3,908.90ドルで終了した。終値ベースで初の3,900ドル台乗せとなり、最高値を更新した。取引時間中の最高値は10月2日の3923.30ドルだった。買われ過ぎを示すテクニカル指標もあり高値警戒感から10月2日は利益確定売りが先行し、一時3,850ドル割れまで売られていたが、早くも切り返すことになった。
新会計年度入りを前に9月30日までに与野党間でつなぎ予算の協議は折り合わず、米政府機関の一部は閉鎖されこの日3日目に入った。予定されていた重要指標、9月の雇用統計の発表は延期され政府機能の停止に対する懸念が高まったことも買い手掛かりとなった。
一方、10月1日に発表された9月の民間雇用のデータで雇用者数が前月比減少となったことで、今月10月28~29日のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げが確実視されていることも買い手掛かりとされた。
7週続伸で年初来48%の上昇
週間ベースでは前週末比99.90ドル(2.62%)高となり、7週連続の上昇となった。レンジは3,785.50~3,923.30ドルで値幅は137.8ドルとなった。
NY金は2025年に入り10月3日までで48%の上昇となるが、このままいけば年間ベースでは1979年以来最大の上げとなりそうだ。もっとも、金市場版バブル相場で知られる1979年年初から翌1980年1月に掛けての上昇相場(1979年126.5%の上昇)とは比ぶべくもないが、それ以来の規模となりそうだ。
最高値更新続くJPX金、国内店頭小売価格
最高値更新が続くNY金の動向を映す形で、国内金価格も取引時間中および終値ともに最高値更新が続いた。先週(9月29日週)は米ドル/円相場が週末にかけて約2円円高方向に動いたことで、国内金価格には押し下げ要因となった。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、週明け9月29、30日と最高値を更新し、9月30日の取引時間中および終値の最高値はそれぞれ1万8674円、1万8621円となった。四半期ベースでは3237円(21.04%)の大幅高となった。週末10月3日の終値は1万8495円で、週足は前週末比277円(2.62%)高で7週続伸となった。レンジは1万8225~1万8674円で値幅は449円と、週足で4%超の大幅上昇となった前週の746円から縮小した。
10%の消費税込みで表記される店頭小売価格も10月1日の標準的な価格は2万324円と最高値を更新した。
次の利上げのタイミングが注目されている日本銀行だが、植田和男総裁は10月3日、米国の関税政策が米および世界経済、ひいては日本経済に与える影響について「不確実性は依然としてかなり大きなものが残っている」と警戒感を示し、様子見を続ける期間については「われわれの政策判断に必要な程度の見極めができるところまで」と話した
米雇用の減速を示唆する民間関連データ
米政府機関の閉鎖にともない10月3日の米労働省の9月雇用統計の発表は延期されたが、市場は民間調査会社のデータを参考値として注目している。その中でも注目されたのが10月1日に発表された9月のADP全米雇用報告だった。非農業部門の雇用者数(政府部門除く)は4万5000人増加予想に対し前月比3万2000人減と2023年3月以来、最大の落ち込みとなった。8月分は5万4000人増から3000人減に下方修正された。ADPは集計の基である米労働省労働統計局(BLS)のデータに問題があることを認めたものの、トレンドが低下傾向にあるとしており、労働市場軟化の新たな兆しとなった。
その他関連するものとして、10月3日に発表された9月のISM(米サプライマネジメント協会)の非製造業(サービス業)景況指数では、細目の雇用指数は47.2と拡大・悪化の分かれ目となる50を4ヶ月連続で下回り、労働市場の軟化が改めて示唆された。関税による不確実性とAI(人工知能)の台頭が労働需要鈍化の要因との指摘があり、企業は欠員補充を見送る一方、適切な技能を持った人材の確保に苦戦しているとされる。
今週(10月6日週)の動き:米政府一部機関の閉鎖がいつ解消されるかが最大の関心事、FOMC議事要旨にも注目、高市自民党総裁誕生に関連する円安観測 NY金3909.00~4,030ドル、JPX金1万8454~1万9400円のレンジを予想
米政府一部機関の閉鎖、いつ解消されるか
今週の注目点も米政府一部機関の閉鎖がいつ解消されるかが最大の関心事となる。本日10月6日には米上院にてつなぎ予算案が5度目の採決にかけられる予定となっている。成立すると11月21日まで政府機関の業務を続けられるが、定数100名の上院の60票の賛成票が必要となる。そのためには民主党から造反議員が出る必要がある。
トランプ米大統領は一時帰休中の約75万人の職員の中から一部を、この機会を捉え解雇する意向を民主党に伝え、法案を通すようプレッシャーを掛けている。ところがオバマケアと呼ばれる公的医療保険の維持を巡る予算確保は2024年来支持率が低下している民主党にとって、譲ることのできないものとなっている。一時帰休中の職員の解雇が法令で認められるか否かの議論があるが、仮にトランプ政権が解雇を発表すると、混乱の度合いは上がり、金融市場にも影響が及ぶと思われる。
長期化し10月15日に発表が予定されている9月の消費者物価指数(CPI)や翌日の生産者物価指数(PPI)など重要指標の発表が懸念されると、株安など混乱は必至と思われる。
10月8日(水)には9月FOMC議事要旨発表
今週(10月6日週)は幸いにも主要な米経済指標の発表はない。10月8日(水)に9月のFOMCの議事要旨が発表される。新たにトランプ大統領の腹心とされるスティーブン・ミラン氏が理事として初参加した会合でもあり、どのような意見が出ていたのか注目したい。他にも今週はFRB高官の発言期間が多く予定されており、10月7日(火)のアトランタ地区連銀ボスティック総裁、ミラン理事、10月9日(木)のボウマン副議長、サンフランシスコ地区連銀デイリー総裁などの発言内容が注目される。
NY金、JPX金の想定レンジ
本稿執筆中の10月6日日本時間の午前の時点で、NY金は買い優勢の中で10月1日の取引時間中の最高値3,922.70ドルを更新して推移中となっている。こうしたモメンタム相場に際しては目先筋の投機買いが上値追いにつながるパターンがあることから、節目の4,000ドル突破の可能性も生まれている。この動きに呼応する形でJPX金は1万9000円を突破している。NY金に関してはすでに付けている安値3909.20ドルを含めテクニカル上の観点から4,030ドル、JPX金は同様に1万8454~1万9400円を見込む。国内金価格に関しては高市自民党総裁誕生に関連する円安観測が押し上げ要因でもある。