イラン、「数兆ドル」の経済機会あると米国を誘惑-有利な核合意狙う
関税問題で世界各国がトランプ米大統領とのディールを目指す中で、米国の長年の敵対国であるイランが同大統領に対し、自国経済に投資機会が旺盛にあると売り込んでいる。
イランの核活動を巡る同国と米国の協議には、進展の兆しが表れている。この過程でイラン高官は恒久的でより効果的な核合意を確保しようと、ホワイトハウスに対して自国経済をあからさまに宣伝している。
イランのアラグチ外相は先週、米紙ワシントン・ポストに寄稿し、新たな核合意が結ばれれば、約9000万人の人口を抱え世界最大級の石油・ガス埋蔵量を誇る同国に米国企業がアクセスできるようになり、「数兆ドル」の事業機会が生まれると主張した。
シンクタンク、欧州外交問題評議会の中東・北アフリカ政策責任者エリー・ゲランメア氏は「1兆ドルの破滅的な戦争ではなく、1兆ドルの事業機会があるとの発言は、トランプ大統領の関心を引く方法だ」と指摘した。
この手口は、ウクライナ戦争終結を巡りロシアが米国との交渉でとっている戦略と酷似する。
米国とイランの関係を敵対から経済協力に転換しようとすれば大変な要求となるだろうが、数十年にわたり中東の安全保障を不安定にさせてきた争いの解決に役立つ可能性はある。
1979年のイスラム革命と在テヘラン米国大使館人質事件を受け、イランは米国との国交を断絶。これに対し、米国は制裁と通商禁止をイランに科した。イランは中東地域における米国の影響力に対する防波堤と自らを位置づけ、核開発と反イスラエル政策が緊張を高めている。
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アラグチ外相は、自国の核開発自体が米国の投資対象となり、「潜在的に数百億ドル規模の契約」が結ばれる可能性もあると述べた。
先週にはX(旧ツイッター)で、「イランの市場は、苦戦する米国の原子力産業を再生できるほど大きい」とアラグチ氏は投稿した。
米国務省の報道官はブルームバーグの問い合わせに対し、トランプ氏はイランの核兵器保有を容認しないと明確にしていると回答。このような問題を公に交渉することは米国の国家利益に反すると付け加えた。
「進行中の交渉の詳細については、肯定も否定もできない」と、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の報道官は述べた。
トランプ氏は以前、イランの潜在的な経済力について言及していた。また、今年3月にブルームバーグは、トランプ氏がロシアのプーチン大統領に、イランとの交渉の仲介を要請したと報じた。
トランプ氏は今月、「私はイランの繁栄を望んでいる。誰かを傷つけるようなことはしたくないが、イランは核兵器を保有してはならない。私たちはイランの産業や土地を奪うつもりはない」と語っていた。
イランのペゼシュキアン大統領によると、オバマ政権時代の2015年に核合意を渋々受け入れた最高指導者のハメネイ師も、米国がイランに投資すべきでない理由は見当たらないと述べた。
原題:Iran Dangles ‘Trillion Dollar’ Incentive for Trump in Deal Talks(抜粋)