維新は「大阪の大名」? 池上彰と佐藤優が語る「日本維新の会の行方」
国内でも世界でも社会的に大きな動きがあった2025年。公明党の連立離脱後、初の与党入りを果たした日本維新の会について、池上彰さんと佐藤優さんに語ってもらった。AERA 2025年12月8日号より。
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──自民党で唯一、自身の派閥を解消しなかった麻生太郎副総裁の支援もあって高市総裁が誕生し、公明党の連立離脱の結果、自民党は日本維新の会と連立しました。多党化の時代、維新についてはどう見ますか。
佐藤優(以下、佐藤):池田大作さん(創価学会第三代会長)がこんなことを言っています。「悪人は、なりふりかまわず、結託しやすい。善人は、なかなか連帯できない」。裏金議員とか悪人たちが結託して、そこに維新という悪人もくっついて、「悪人連合」のように公明党には見えるのでしょう。興味深い見方です。
維新の目指すものについては、ドイツに答えがあると思います。ドイツの与党は、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)。ただキリスト教社会同盟の方はバイエルン州限定で、他の州選出の国会議員は一人もいないんです。同州は社会同盟だけで、民主同盟はいないという状況。これと同じで、維新は大阪府と兵庫県の一部限定の与党保守党になれたらそれでいい、と考えているのではと見ています。
合意書署名後の写真撮影を終え、握手を交わす自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会代表の吉村洋文・大阪府知事=2025年10月20日、国会内池上彰(以下、池上):キリスト教社会同盟ってまったくの地域政党で、かつものすごい右派なんですよ。でも民主同盟の方はそんな社会同盟と組むことによって、とりあえず与党たり得ていると。維新についての佐藤さんの見立ては正しいと思いますね。
佐藤:例えば自由民主党に対して、維新は「民主自由党」にするとかね。維新の会という名前がなくなっても、自分たちが「大阪の大名」になりたいってことだと思うんです。
──大名といえば、兵庫県の斎藤元彦知事をはじめ、地方の首長が国政には影響されずに、いわば「大名的に」自治体行政を動かすような傾向もあるかと思います。
池上:一つには米国の大統領制、つまりトランプ大統領が「自分は何でもできるんだ」と振る舞うことの「影響」があると思います。自治体の首長も、その気になれば自治体の中では何でもできるわけです。以前なら「権力は抑制的に使おう」と考える首長もいたのですが、「やろうと思えばやれる」、あるいは「居座ろうと思えばいくらでも居座れる」ということを、首長たちがみんな知っちゃった。兵庫県でうまくいったことを伊東市でもやろうとしているということではないでしょうか。
たとえばドイツでは州ごとに、つまり地方自治体ごとに議会制民主主義がある。それぞれの議会で多数を占めたところからトップが出る形です。日本は戦後、地方行政に米国的なものが中途半端に入ってしまったことによって、「そうか、米国みたいにやろうと思えばできるんだ」と首長たちが学んでしまい、かつそれができてしまっているわけです。
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2025年12月8日号より抜粋
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