《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題

3年ぶりにドラマ復帰した女優・黒島結菜(事務所HPより)

 NHKの朝ドラ『ちむどんどん』に主演した黒島結菜(28歳)。その内容から、ヒロインである黒島も批判の矛先を向けられた。その影響はいまだ続いているという。3年ぶりにドラマ復帰した今、苦境をはね返すためには何が必要か? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。 

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『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』(フジテレビ系)で主演の沢口靖子さんに継ぐ女性キャストとして注目を集めているのが黒島結菜さん。ドラマ出演は2022年の「ちむどんどん」(NHK総合)と「クロサギ」(TBS系)以来3年ぶりであり、24年7月の第1子出産公表後初めてだけに話題性としては十分でしょう。 

 黒島さんが演じているのは、情報犯罪特命対策室(DICT)のメンバーで調査官の清水紗枝。高度化・巧妙化する情報犯罪、特にインターネット上の犯罪に対応するエキスパートとして、天才的なデータ収集力や解析力を見せるシーンが目立ちます。 

 気になるのは、同作におけるキャストのクレジットが沢口靖子さん、安田顕さん、横山裕さんに続く4番手であること。朝ドラ主演を務めた女優としては微妙なポジションであり、現在の難しい状況がうかがえます。 

 その背景にはどんなことが考えられるのか。そもそも黒島さんはどんな女優で、今後はどんな活動が期待されるのか。朝ドラ主演も務めた若きママ女優の現在地点と未来を掘り下げていきます。 

『スカーレット』の役にも批判の声 

 黒島さんは沖縄県出身の28歳。芸能界デビュー後、『NTTドコモ』『クラレ』『カルピス』などのCMに出演したあと、2014年に深夜ドラマの名作『アオイホノオ』(テレビ東京系)で連ドラ初出演を果たしました。 

 さらに同年、日曜劇場『ごめんね青春!』(TBS系)でゴールデン・プライム帯ドラマ初出演したほか、翌2015年には朝ドラ『マッサン』(NHK総合)、大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK総合)に出演。2016年には『時をかける少女』(日本テレビ系)で連ドラ初主演、2017年には『アシガール』(NHK総合)でも主演を務めました。 

 その後も、2019年に『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)で2度目の大河ドラマ出演、2020年に『スカーレット』で2度目の朝ドラ出演を果たすなど、まさに順風満帆。特にNHKは朝ドラ2作、大河ドラマ2作、主演ドラマ『アシガール』シリーズ、『悲熊』シリーズ、『恋の三陸 列車コンで行こう!』、『夏目漱石の妻』、『流れ星』、単発主演ドラマ『戦後70年 一番電車が走った』に起用するなど黒島さんを重用していました。 

 しかし、満を持して朝ドラ主演に据えた2022年の『ちむどんどん』でムードは一変。ネット上で作品への批判が加熱し、なかでも主人公の人格や言動を疑問視するものが多く、主演の黒島さんもその対象にされてしまいました。しかも放送中だけでなく放送後も黒島さんへの批判は続き、「名前が出れば叩かれる」という状態が現在まで続いています。 

 批判の中には、1つ前の朝ドラ『スカーレット』の役柄や演技にふれたものも散見されました。同作で黒島さんが演じたのは、主人公の川原喜美子(戸田恵梨香)と夫・八郎が営む、かわはら工房に弟子入りする松永三津。八郎に恋心を抱き、何度かアプローチするような描写があったことを持ち出して、「このときも嫌な女の役を演じていた」などと批判するような声があがっているのです。 

 こうして振り返っていくと黒島さんはNHKに重用されて将来を嘱望された一方で、NHKの朝ドラに振り回された感は否めません。「これ以上の批判を避ける」という意味で、妊娠・出産を含む3年間の連ドラ空白期間は、黒島さんにとってよかったのではないでしょうか。 

求められるNHKからのオファー 

 では、出産を経て連ドラ復帰した黒島さんには、今後どんな役柄や演技が求められていくのか。 

 以前ほどはないもののまだ批判の声が見られるだけに、まず求められるのは『ちむどんどん』以前に評価されていた演技を見せること。以前、「あまり緊張しない性格」「自分をよく見せたいという気持ちが少ない」などと語っていたように、最大の持ち味は自然体で伸びやかな演技であり、特に『アシガール』では称賛を集めました。ただ、その点で今回の『絶対零度』で演じている役柄は、まだ黒島さんの長所を引き出しているように見えないのは気がかりです。 

 また、そんな本来の姿を見せながら、『ちむどんどん』のイメージを少しずつ払拭していくことも重要でしょう。たとえば、料理人の役を再び演じて以前との違いを見せる。あるいは、周囲の人々をさりげなく気づかう役をそつなく演じるなど、批判されたポイントをクリアしておくことが、流れを変える1つの手になりそうです。それ以外では、視聴者に母親であることを感じさせるような母性のある役柄なども、演技の幅を見せることにつながっていくのではないでしょうか。 

 そして、ぜひ実現させてほしいのがNHKからのオファー。以前、黒島さんは「NHKの秘蔵っ子」と言われ、朝ドラ主演まで大切に育てられていただけに、苦境の今こそ起用すべきでしょう。制作陣にとっては、かつてほれ込んだ才能を発揮してもらう絶好機であり、その責任があるようにも見えます。 

 10代のころ「オーディションに落ちてもあまりへこまない」と語っていた切り替えの速い性格は、朝ドラの苦しい時期と出産を経た現在でも変わっていないのか。もしそうであれば、再び連ドラ主演に返り咲く日はあまり遠くないのかもしれません。 

 いずれにしても演技の才能を認められた人だけに、それをもう一度どのように発揮していくのか。本人にとっても今回の役と来年の活動をその足がかりにしたいところでしょう。 

【木村隆志】コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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