コラム:トランプ政権始動、膨らむ投機筋のドル買い持ちが意味する今後の相場展開
[オーランド(米フロリダ州) 20日 ロイター] - 第2次トランプ米政権が始動するとともに、外国為替市場の投機筋はドルに対して、第1次政権発足前以来の強気姿勢となっている。
問題はこれが、今後のさらなるドル高を意味するのか、トランプ氏が昨年終盤に言及した「強いドル」のサイクルのピークを示しているのかである。
昨年9月終盤、投資家が米国経済の勢い拡大や、より高い金利がより長く続く展開、そしてトランプ氏の大統領選での勝利を見越して以降、ドル上昇に賭ける取引が目を見張るほど活発化している。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを見ると、その後の3カ月半でファンド勢は約150億ドル規模だった主要通貨と新興国通貨に対するドルの売り持ちを、350億ドル超相当のドル買い持ちに転換。買い持ち規模は2016年1月以来の大きさに膨らんだ。
同時にG10通貨に対するドル指数の上昇率も10%と、過去2年余りで最大を記録し、ポンドやカナダドルに対しては数年ぶり、ブラジルレアルやインドルピーといった新興国通貨に対しては過去最高値圏に達した。
第2次トランプ政権が誕生した足元では、ドル指数の水準は過去25年平均を20%程度上回り、1980年代以降ではほとんど目にしなかった高値にある。ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏が指摘するように、ドルは「力強い」のだろうが、「幾分実態より行き過ぎている」かもしれない。
<ドル安につながるリスク>
モルガン・スタンレーのアナリストチームも同じ意見で、17日にはドルについて弱気に転換したと発表。ユーロ、ポンド、円に対して売りを勧めている。
最近ドルを強くしてきた経済のファンダメンタルズや変化は既にドルのレートに完全に織り込まれたか、幾つかのケースでは織り込まれ過ぎているという。
モルガン・スタンレーが示唆したのは(1)米国債利回りのピークアウト(2)米国経済例外主義を巡る話題の出尽くし感(3)ドルに追い風とされるトランプ氏の関税の規模や範囲に関する投資家の過度な楽観(4)欧州の先行きに対する過剰な悲観論――などだ。
これらの要素を総合的に踏まえると、特にファンドや投資家のポジションがかなり一方に偏っている以上、長期的な展望に変化はないとしても、短期的なドルの見通しは明るさ一色とは言えなくなる。
モルガン・スタンレーのFXストラテジストチームは17日に「米国の政策がどのような順序で出てくるか、またどのような内容になるかについて相当な不確実性が存在することは認める。だが短期的には、非対称的なリスクが利回り低下を伴うドル安方向に傾いているのは明らかだと考えている」と記した。
このような見方が市場のコンセンサスでないことも確かだ。例えばゴールドマン・サックスのアナリストチームは先週、米国経済の優位性継続やドルを支える米国債利回り動向、さらにトランプ氏が打ち出すと予想されるドル高につながる関税がまだ完全に織り込まれていないとの考えを理由に、ドルに対して一段と強気の姿勢を示した。
それでも投機筋のドル買い持ちが限界まで拡大している点を考慮すれば、「力強いドル」を高値から押し下げる上でそれほど大げさな材料は必要ないかもしれない。
折しもトランプ政権高官の1人は20日、米国の貿易相手国に対する関税は直ちに導入されないと発言し、ドルは1%余り下落。1日の下げとしては昨年8月以来の大きさになった。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the U.S. again. Focus on economics, central banks, policymakers, and global markets - especially FX and fixed income. Follow me on Twitter: @ReutersJamie