カナダ潜水艦受注を巡る韓国とドイツの戦い、両国とも受注に自信満々
カナダは7月7日のNATO首脳会談前までに約1,000億加ドル=約11兆円を投資する潜水艦入札結果を発表すると予測されており、韓国メディアもドイツメディアも「自国が入札に勝利する」と信じてやまないが、カナダメディアは「両案は拮抗している」と報じている。
参考:캐나다 잠수함 사업, 한국 쪽으로…단독 수주 두고 ‘막판 조율’ 参考:TKMS pokert um den 56-Milliarden-Auftrag
韓国側が世論向けに大規模な広告攻勢を開始したのは「産業界の支持が政治家の判断に影響を及ぼして入札の結果を大きく左右する」という意味
カナダのブレア国防相(当時)は2024年7月「最大12隻の通常動力型潜水艦の取得手続きを正式に開始した」「正式な情報提供依頼書(RFI)を秋に発行する」と発言し、待望のRFIが9月に発行され「魚雷、対艦ミサイル、陸上攻撃用の長距離攻撃兵器搭載」「契約締結は2028年」「1番艦引き渡しは2035年」「海外建造=完成品の輸入」「サポート、訓練、インフラ分野へのカナダ企業参入=技術移転」を要求していることが判明し、カーニー首相は昨年8月「潜水艦入札のShort List=最終選考リストをドイツと韓国に絞った」「公正で透明な競争に尽力する」と発表。
出典:Hanwha Aerospace Europe
カナダ国営放送のCBCも入札の評価割合について「カナダが最も重視しているのは潜水艦12隻導入後の維持管理だ」「入札評価の割合は維持管理パッケージ=50%、潜水艦の能力=20%、企業の財務状況=15%、オフセットの内容=15%だ」と言及し、防衛投資庁のジェームズ・ルーク氏も「今回の調達はカナダ防衛産業を最大限活用して質の高い雇用を創出し、経済成長を促進しつつ、カナダに大きな経済的利益をもたらすものでなければならないと言及してきた」と述べ、潜水艦入札に関する最終提案は2026年3月頃に提出されたが、カナダは提案されたオフセットの内容を強化するよう両国に要求。
カナダメディアや韓国メディアはオフセット内容の強化について「カナダは米国との関税問題で国内の自動車産業基盤を拡充したいと考えている」「カナダは潜水艦調達の一環として韓国とドイツに自動車生産の約束を求めた」「カナダは韓国に現代自動車の生産拠点設立を、ドイツにフォルクスワーゲンのカナダ拠点で自動車生産を強化するよう要請した」「スティーブン・フー国防調達担当大臣は最も多くのカナダ人雇用を創出する潜水艦を入札で選ぶだろうと繰り返し述べている」と報じていた。
出典:TKMS
ドイツはノルウェーと共同でType 212CD(約2,800トン)を提案し、両国向けの生産枠の一部をカナダ向けに割り当てることで2036年までに4隻の引き渡し(残り8隻は順次引き渡し)を確約、納期と共に重要なウェイトを占めるオフセットについては大西洋側と太平洋側に潜水艦の整備拠点設置、魚雷製造工場の設立、極超音速ミサイル開発、二酸化炭素回収施設の設立、マニトバ州チャーチル港に構築する液化天然ガスの輸出拠点への投資などを提案し、カナダへの経済効果は約860億加ドルと試算され、数万〜数十万の雇用創出が見込まれている。
韓国はKSS-III Batch-II(約3,600トン)を提案し、2032年までに1番艦を、2035年までに4隻の引き渡しを、残り7隻は年1隻のペースで引き渡すと確約、さらにオフセットとしてオンタリオ州最大の鋼鉄メーカー=アルゴマ・スチールへの計3.45億加ドルの投資、潜水艦関連サブシステムの現地生産や技術移転、五大湖地域最大のオンタリオ造船所とモホーク大学への造船技術(設計・生産計画、品質管理、スマート造船システム)移転、造船専門家訓練センターの設立、AI、次世代LEO衛星通信、電子光学・赤外線センサーなどの共同開発を提案し、カナダへの経済効果は約940億加ドルと試算され、年1.5万人〜2.2万人の雇用創出が見込まれている。
出典:TEAM 212CD
ドイツ案の強みはNATO規格に対する完全な互換性と欧州との関係強化で、弱みは現時点でType 212CDの現物が存在せず運用実績もない点だ。韓国案の強みはType 212CDよりもサイズと火力が優れるKSS-IIIの現物が存在し、KSS-III提案でカナダで潜水艦保守を担当しているバブコックと手を組んでいる点で、弱みはドイツ案よりも政治・地政学的な結びつきが弱い点だ。
カーニー首相は5月末「6月末までにハンファ案とティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)案のどちらを採用するか決定する」と述べていたが、現在は7月7日のNATO首脳会談前までに勝者が発表されると見込まれており、韓国の経済紙=亜州経済新聞は3日「カナダの潜水艦受注は韓国案とドイツ案のどちらを採用するかではなく、韓国への12隻一括発注か、12隻の数量を韓国とドイツで分けるかの最終調整になっている」と報じた。
出典:Hanwha Ocean
“交渉状況に詳しいドイツの潜水艦専門家は「分割発注が行われたとしても韓国がより多くの物量を獲得する可能性があると認識している」「細部の調整が続いているため発表が多少遅れている」と語った。別の情報筋は「現在の雰囲気は韓国側に傾いている」「最後の争点は全物量を韓国に与えるかドイツ側と分けるかという点だ」と、さらに別の情報筋は「業界内ではすでに祝福の挨拶が交わされているという話が出るほど韓国優勢を既成事実として受け止める雰囲気だ」と述べた”
“ドイツの潜水艦専門家は両国の潜水艦の最大の違いとして大きさと運用コンセプトを挙げた。両潜水艦ともディーゼル推進と非大気依存推進(AIP)を備えた通常動力型潜水艦で、Type 212CDは相対的に小型で乗員数も少なく、長時間の潜航と隠密作戦に最適化されており探知回避とステルス性能に強みを持つ。一方のKSS-III Batch-IIは作戦半径が広く搭載可能な武装の種類や規模も大きいため、長距離哨戒や攻撃任務に適していると評価されている。同専門家はType 212CDがNATOの相互運用性を念頭に設計されているため、両プラットフォームはメンテナンス方式や運用システムにおいても違いがあると説明した”
Hanwha Ocean’s KSS-III proposal brings together 80+ Canadian partnerships, supporting 25,000+ jobs annually and $100B+ in projected GDP impact. Learn more: https://t.co/fVGLXXI8bV#CanadianDefence #CPSP #HanwhaOcean pic.twitter.com/wtrBuyKEMW
— Hanwha Canada (@HanwhaCanada) June 18, 2026
“カナダは潜水艦の性能だけでなく雇用創出、産業投資、広範な経済協力までを総合的に評価するという立場を繰り返し表明し、これに伴い今回の事業は単なる企業間の受注戦を超え、韓国政府とドイツ政府が支援する産業パッケージの競争に発展している。韓国側の代表的な提案は現代自動車の水素燃料電池車技術を活用した31億カナダドル規模のプロジェクト・ビーバー(Project Beaver)で、潜水艦事業の受注を前提にブリティッシュコロンビア州に液化水素生産施設を、オンタリオ州に水素燃料電池車製造工場を建設し、ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州に水素ステーションを構築するという内容だ”
“ドイツ側はNATOの相互運用性に加え、ドイツとノルウェーによるType 212CD共同生産体制へのカナダ参加を強みとして打ち出している。李在明大統領がNATO首脳会議に出席した際に潜水艦受注の結果が直接伝えられるという観測もあるが、経済産業部の関係者は「NATO首脳会議への出席には様々な理由がある」「潜水艦事業が韓国に有利に進んでいるから大統領が出席すると語るにはまだ時期尚早だ」といい、NATO首脳会議と潜水艦受注の結果を結びつけることを否定した”
Hanwha Ocean is committed to working closely with Canada to develop sovereign sustainment capabilities, ensuring that the Royal Canadian Navy maintains full operational readiness while simultaneously establishing a long-term domestic support structure. #DefensePartnership pic.twitter.com/K3j3eQdUmp
— Hanwha Canada (@HanwhaCanada) June 30, 2026
“今回の決定はカナダがどの潜水艦を購入するかを超え、今後数十年にわたる潜水艦戦力の運用とメンテナンスを担保する産業・防衛協力の構図を決定づけるものとなる。カナダのマクギンティ国防相は最近「異なる2種類の潜水艦を共に運用する場合、メンテナンス、兵站、訓練が重複してコストと複雑性が増す可能性がある」と警告したが、分割発注の可能性を公式には排除していない。現在の核心的な争点は韓国が競争に勝つかどうかではなく、カナダが潜水艦12隻を韓国に一括発注するのか、それとも政治的・産業的なバランスを考慮して韓国とドイツに物量を分割するのかという点に集約されている”
ドイツメディアのFrankfurter Allgemeine Zeitungも「これは潜水艦、建造リソース、技術移転、数万の雇用を巡るかつてない規模の競争入札でTKMSには十分な勝算がある」と報じている。
出典:TEAM 212CD
“この入札の核心は約600億カナダドル(約370億ユーロ)に上る12隻の潜水艦の受注だが、カナダは明確に潜水艦の性能だけでなくカナダ国内への付加価値創出に対する貢献を要求している。これは2月に採択された国防産業戦略にも明記されており、この入札に期待されている産業契約は潜水艦建造契約の規模をはるかに超えており、カナダが今後数十年にわたって潜水艦戦力を維持するために費やす総支出額に基づいている。この計算式によれば発注額は900億カナダドル(560億ユーロ)に達し、この契約を獲得するには建造能力だけではなくカナダの雇用、投資、技術移転が問われている”
“TKMSは潜在的なサプライヤー、研究機関、その他の協力パートナーとの間で基本合意書を発表してきた。ドイツ側はカナダに対する約1000億ユーロ規模のインセンティブを提供する予定で、カナダのコンサルティング会社は「ドイツ案は年65万人分の雇用が確保される」「状況によって数万の追加雇用も創出される」「韓国案の効果はドイツ案の約3分の1に過ぎない」と試算している。TKMSのオリバー・ブルクハルト最高経営責任者も5月中旬「我々が勝利すると確信している」「ドイツは他に類を見ない産業パッケージをまとめ上げた」「産業界と政界の双方が完璧な仕事をした」と語った”
出典:TEAM 212CD 水中発射式の対空ミサイル=IDAS
“しかしハンファとの競争は新たな次元に突入した。韓国側は大規模な広告攻勢を開始し、カナダの首都オタワは国会議事堂から空港に至るまでハンファのポスターで埋め尽くされた。さらに主要ニュース番組で長年キャスターを務め、事実上のカナダの声とも言えるピーター・マンスブリッジ氏を起用したキャンペーンをテレビやオンラインで展開し、カナダにおけるハンファの代表であるグレン・コープランド氏は「カナダで成功するためにはブランドを確立しなければならない」と語った。カナダ最大級の防衛見本市=Cansecにもダイヤモンドスポンサーとして参加することで専門家にもハンファブランドを印象づけた”
“韓国はドイツ案に欠ける現物の強みも活かし、韓国海軍のKSS-IIIは1万4,000kmの航海を経てカナダ海軍のエスクイモルト基地に寄港した。実物のKSS-IIIを視察したカナダ軍関係者は「1999年製のホンダからテスラに乗り換えたような感覚だ」と語り、カナダのヴィクトリア級潜水艦は1990年代に購入した中古艦なので最新鋭のKSS-IIIがもたらしたコントラストの影響を大きい。韓国側は2035年までに4隻の引き渡しを約束しているが、この点においてドイツは奥の手を持っている。ドイツとノルウェーが2023年に発注したType 212CDの1番艦がまもなく完成し、この生産枠の一部をカナダに優先して割り当てる予定だ”
出典:TEAM 212CD
韓国メディアもドイツメディアも「自国が入札に勝利する」と信じてやまないが、カナダメディアは「韓国案とドイツ案は拮抗している」と報じて「どちらが勝利に近いのか」については沈黙を貫いている。
ちなみに韓国側が世論向けに大規模な広告攻勢を開始したことに疑問を感じるかもしれないが、コープランド氏が「カナダで成功するためにはブランドを確立しなければならない」と語ったのは「産業界の支持が政治家の判断に影響を及ぼして入札の結果を大きく左右する」という意味で、海外では防衛企業の広告(特にWeb広告やSNSマーケティング)は積極的に行われているの日常だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Ocean