中国が通貨防衛強化、元安けん制 香港外準増や海外借入規制を緩和
[上海/香港 13日 ロイター] - 中国は13日、海外からの借り入れに関する規制を緩和するとともに、人民元安をけん制する声明を発表した。元が対ドルで約16カ月ぶり安値付近で推移する中、通貨防衛策を強化した。
中国人民銀行(中央銀行)は企業が海外からの借り入れを拡大できるよう上限を引き上げると発表した。企業の純資産に対する借り入れ額の上限を定めたマクロプルーデンシャル評価に基づく比率を即日実施で1.5から1.75に引き上げる。
外為当局との共同声明で「クロスボーダー資金調達のマクロプルーデンス管理をさらに改善し、企業や金融機関のクロスボーダー資金調達先を引き続き増やし、資産・負債を最適化できるようにする」ためとした。
人民銀と為替当局が主催するフォーラムである中国外国為替市場指導委員会は、元相場を基本的に合理的で均衡の取れた水準で安定させる決意だと表明。金融当局が為替市場の強靭さを高め、市場管理を強化するとも述べた。また、プロシクリカル(景気循環増幅的)な市場の動きを是正し、市場の秩序を乱す行動に対処し、為替のオーバーシュートリスクを防止するとした。
人民銀の潘功勝総裁は香港で開かれたアジア金融フォーラムで「中国には為替市場の安定的な機能を維持する自信と条件、能力がある」と強調。元相場を基本的に合理的で均衡の取れた水準で安定させる」と繰り返し表明した。
みずほ銀行のチーフアジア通貨ストラテジスト、ケン・チャン氏は、これらの措置は「元を安定させるためのシグナルだ」と指摘。ただ「国内の資金調達コストが低いため、資本フローや為替相場への実際の影響は比較的限られる」と述べた。
潘総裁は、潤沢な流動性を維持するため適度に緩和的な金融政策を支持するとも表明。金利や銀行の預金準備率などさまざまな手段を活用し、市場に流動性を供給すると述べた。
外貨準備の香港への資産配分を大幅に引き上げる考えも示したが、詳細には踏み込まなかった。
また、香港金融管理局(HKMA、中銀に相当)が「スワップ基金」制度を使ってオフショア人民元市場の流動性を補うことを支持すると述べた。
香港は現在、通貨スワップ協定により最大8000億元の交換が可能。
INGの大中華圏担当チーフエコノミストは「関税の影響相殺のため通貨切り下げが市場で議論されているが、通貨安定が人民銀にとって依然重要な優先事項であることをきょうの発表は示している」と指摘。「中国の外貨準備増加により、市場状況により必要になった場合に通貨防衛の弾薬が増えることになる」と述べた。
きょうの発表は、資金を緩めにして景気回復を目指す一方で、急激な債券高に対応し、政治・経済面での不確実性の中で通貨安定を図る人民銀の課題と綱渡りぶりを浮き彫りにした。
人民銀は最近、香港で大量の国債を発行する計画を明らかにした。
ナティクシスのシニアエコノミストは、中国本土市場の方が人民元預金プールが充実しているが、香港は「為替スワップやスポットの取引が多く重要な役割を果たしている」と指摘。「これはトレードや潜在的投資を通じて人香港が民元を支える市場となり得ることを意味する」との見方を示した。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab