米ブラックフライデー、消費者は慎重姿勢-インフレや関税が逆風に
今年の米ブラックフライデーで、厳しい寒さと高インフレに見舞われる米国の消費者を魅了した小売業者の一角がある。ティーン向けブランドだ。
香水やボディーウォッシュ、スウェットシャツといった商品の値引きがこだわりの強い米国人を引きつけている。28日に全米の都市で最も混雑していたのはレディースファッションの「アディクテッド」、アクセサリーの「ケンドラ・スコット」、フレグランスの「バスアンドボディワークス」などティーンに人気のブランドだった。
一方、モール内の他の小売店では客足が鈍く、ラルフローレンやコーチといった高価格帯のブランドに対しては値引きが小さいと失望する声もあった。
ミズーリ州からニューヨーク市を訪れた元教師のキャシー・マクファーランドさんは、市内で30%引きセールを実施していたアディクテッドの店舗に足を運んだ。ブランド名は知らず、店内は混雑していたが、孫が行きたいと言うため連れてきたという。
一方、フロリダ州ではジェナ・ガットマンさん(49)が13歳になる娘の誕生日にアディクテッドの店舗へ連れて行った。シカゴの自宅近くには店舗がないためだと話した。
ティーンや動画投稿アプリ「TikTok」で人気のブランドは、割引率がそこまで大きくなくても今年のブラックフライデーで存在感を示している。ヨガウェアの「アローヨガ」、レディースファッションの「ブランディーメルビル」など若い層に支持されるブランドはいずれもにぎわっていた。
アイオワ州ウェストデモインのショッピングモール「ジョーダンクリーク・タウンセンター」では、ゾーイ・スリックさん(13)とバークレー・スリックさん(16)の姉妹がケンドラ・スコットの店舗に入るための列に並んでいた。ブラックフライデーでの買い物は初めてといい、ゾーイさんは混雑するモールを見回しながら「刺激が強すぎる」と興奮した面持ちだった。
目玉セールを展開する店舗への集客も目立った。バージニア州ニューポートニューズのバスアンドボディワークス店舗では「3点買うと4点無料」を掲げて大混雑。来店客は横向きにならないと前に進めないほどだった。
ウォルマート米国部門の店舗運営担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、セドリック・クラーク氏によると、28日は30%以上値引きされたビジオ製テレビやスマートリング「オーラリング」などが人気だったという。
ディスカウントチェーンを展開する米ターゲットによると、一部店舗では早朝3時から行列ができ、平均150人が開店と同時に配布される無料ギフトを待っていた。最も人気だったのは、50%引きのおもちゃと40%引きのクリスマスツリーや装飾品だった。
一方、多くの買い物客は今年のブラックフライデーにおける大半の販促に拍子抜けしたようだ。
毎年のブラックフライデーにバージニア州のショッピングモール「タイソンズコーナーセンター」に出掛けるのが恒例となっているレパスキー家は、今年は目玉商品や無料ギフトが少なくなったと感じたという。
メリーランド州のショッピングモール「ウェストフィールド・モンゴメリー」でも同様の声があった。銀行員のジェニファー・シュムックさん(50)は「今年はあまりお得なものがなかったようだ」と述べた。昨年はメーシーズが先頭客に10ドルのクーポンを配布したが、今年はなかったという。
フィラデルフィア近郊では、主婦のメリッサ・リッツィウスさん(50)がポロ・ラルフローレン・ファクトリーストアの値引きに不満を示した。昨年並みの内容に見えるが、表示価格が上がっているため実質的な割引が小さいという。
大勢の人混みを楽しみに来た客も多かったが、一部ではそれも期待外れとなった。バージニア州の「パトリック・ヘンリー・モール」のように全米各地のショッピングモールの幾つかは朝に閑散とした状態だった。一方でメーシーズ、オールドネイビー、ターゲット、アディクテッドなどの一部店舗には行列ができていた。
米国の消費者は雇用市場の冷え込みや賃金の伸び悩み、根強いインフレ、関税の悪影響といった複数の懸念を抱えたまま、28日に本格的に始まるホリデー商戦に臨む。米国の消費者は経済面の逆風を押し切って買い物を続けるのか、それとも消費主導の米経済が勢いを失い始めるのか、ブラックフライデーはまさにその試金石となる。
こうした中、今年のホリデーシーズンは例年ほど華やかにならない兆候が既に見え始めている。
調査会社サーカナの主任小売りアドバイザー、マーシャル・コーエン氏は「今年のホリデーシーズンは、熱気にあふれた華やかなものになるとは期待していない」と述べた。
サーカナによると、全体の支出額は昨年並みになると見込まれるものの、販売数量は最大2.5%減少する可能性がある。言い換えれば、消費者は支出を増やしても買える商品の量は減るということだ。
「今年はクリスマスツリーの下がプレゼントでぎっしり、という状況にはならない」とコーエン氏は語った。
米小売業者にとって11月と12月は年間売上高の20%を占める重要な時期だ。今年は、価格に一段と敏感になり不安を抱える消費者を巡り、企業間の競争が激しさを増している。依然として購買意欲はあるものの、支出先を慎重に選ぶ動きが広がっており、特に所得上位10%の層ではその傾向が顕著だ。ブラックフライデーのセールを、ぜいたくではなく、生活必需品のまとめ買いに活用するという消費者もいる。
一方、関税の影響でブランドによっては例年のような大幅値引きを実施しずらくなっている。また実店舗に足を運ぶ買い物客は、長い行列や店員不足に直面する可能性もある。小売業における季節雇用は2009年以来の低水準に落ち込む見通しだ。
ニューヨーク市に住むジェニファー・グリーンバーグさん(29)は、百貨店ブルーミングデールズでメノラー(ユダヤ教の燭台)を探しながら、「『必要ではないけれど今すぐ買わなきゃ』と思わせるほどの値引きはどこにもない」と語った。
今年はマクロ経済が安定さを欠く中でも消費は比較的堅調だった。年初には、一部の消費者が関税引き上げを見越して高額商品を購入し、それが売上高を押し上げた。その後は、好調な株式市場が所得上位層の消費を支えている。多く小売企業は、消費者の購買行動はおおむね安定しており、関税の価格への影響も当初の予想ほど大きくなかったと指摘している。
ただ最近になり、暗い兆しも見え始めている。低所得者層の消費は減退し、11月の消費者信頼感指数は7カ月ぶりの大幅低下となった。また9月の小売売上高の伸びも鈍化した。
コンサルティング会社コンシューマー・コレクティブのマネジングディレクター、ジェシカ・ラミレス氏は、来年関税の影響を受ける可能性のある商品に買い物客の関心が集まるだろうと指摘。同氏によれば、消費者はストレスの多い時期に気分を明るくしてくれるものを購入している。ハンドバッグを彩るアクセサリーや部屋の雰囲気を明るくするインテリア雑貨などが人気だという。
近年、ブラックフライデーはかつてほどの一大イベントではなくなってきている。秋のセールやアマゾンの「プライムデー」などのオンラインセールで、ホリデーシーズンの買い物を早めに済ませる消費者が増えているためだ。
戦略コンサルティング会社カーニーの米州小売り部門責任者、マイケル・ブラウン氏は、関税への懸念から、今年はその傾向がさらに顕著になっていると指摘。結果として、今後2カ月の支出全体が押し下げられる可能性があるという。
原題:Teen Brands Win Over Black Friday Shoppers Underwhelmed by Deals (3)(抜粋)
— 取材協力 Uma Bhat