「あのとき検証していれば…」 冤罪を謝れない警察・検察が陥った穴
毎日新聞 2025/5/30 06:00(最終更新 5/30 06:00) 有料記事 2280文字
アンケートは冒頭で「未来志向型の検証」としていたが、生かされることはなかった=2024年10月31日午後3時35分、遠藤浩二撮影
「何をやっているんだ」「そんなことはやるな」
2021年9月ごろ、佐藤快孝・警視庁公安部外事1課長は、キャリア警察官として13年先輩で、全国の外事事件を監督する立場の近藤知尚・警察庁外事情報部長に厳しい口調で責められた。
大川原化工機冤罪事件で、東京高裁は1審よりも踏み込んだ認定で、警視庁公安部と東京地検の捜査を違法と断じました。連載「暴走した権力」(全3回)は31日まで連日6時に配信予定です。 1回目 ゆがめた捜査 2回目 検証しない警察・検察
3回目 「人質司法」は変わるのか
「未来志向型の検証」
この年の7月30日、軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反の疑いで逮捕、起訴されていた化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人の起訴が取り消された。
初公判の4日前だった。
近藤部長は逮捕時、警視庁公安部長として捜査を指揮していた。
起訴後に着任した佐藤課長は8月、異例の事態となった捜査の問題点を検証しようと、事件を手がけた捜査員を対象に「未来志向型の検証」とうたったアンケートを実施した。
無記名式で回答を求めたところ、捜査の問題点が浮き上がった。輸出規制省令を巡る公安部の解釈に経済産業省が否定的だったことや、輸出規制品と判断する根拠になった公安部の温度実験に不備があったことを指摘する記載があった。
こうした点は、大川原化工機側が起こした国家賠償請求訴訟で、今月28日に東京高裁が認定した内容と合致する。
起訴取り消し直後の段階で、公安部は司法判断と同じ捜査の問題点を把握していたことになる。
固執した組織防衛
だが、アンケート結果が生かされることはなかった。
佐藤課長は…