EU、オンライン年齢確認アプリを導入へ。世界的な標準になるかも
未成年のSNS利用完全禁止への第一歩。
EUが新しいオンライン年齢確認アプリをまもなく導入すると発表しました。欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen氏は水曜日の記者会見で、「ヨーロッパの年齢確認アプリは技術的にはすでに準備が整っており、まもなく利用可能となります」と述べました。
この年齢確認アプリについて同氏は「ソーシャルメディアプラットフォームにアクセスする際に、このアプリで年齢を証明できるようになります。これは、酒類を購入する際に店舗で年齢確認を求められるのと同じ仕組みです」と説明しています。
このアプリは、政府が承認したヨーロッパ全体での年齢確認手段として導入されるもので、将来的にEU全体で未成年のソーシャルメディア利用を制限する動きに向けた重要なステップとなりそうです。
未成年のSNS規制強化と各国の動き
世界各国でもSNS規制の動きが進んでいるのですが、そのきっかけとなったのが2025年12月に施行されたオーストラリアの法案。この法案では16歳未満の子どもによるSNS利用が事実上禁止されています。
特にヨーロッパではこうした動きが活発で、イギリスを含む少なくとも15か国の政府が未成年とSNSの関わりに対して何らかの対応を取っています。
von der Leyen氏は、アイルランド、スペイン、フランス、キプロス、デンマーク、ギリシャ、イタリアがすでにこのEUアプリの導入を検討していると述べています。
また、子どものオンライン安全に関する特別委員会を設置し、木曜日に初会合を開き、夏までに全加盟国向けの提言をまとめる予定だとし、「欧州として統一された対応が必要です」と示しました。
一方で、SNSの禁止やオンライン年齢確認の義務化に対しては、プライバシーへの懸念を示す声も多くあります。年齢確認の仕組みが大規模な監視システムにつながり、悪用されるおそれがあると指摘する専門家も多いとのことです。
プライバシー懸念と技術的対策
EU当局は、このアプリはあらゆるデバイスで利用でき、プライバシーを守るために「完全に匿名化」されると説明しています。また、コロナ禍で作成されたEUのCOVID-19デジタル証明アプリと同様の原則に基づいており、結果的に他国でも広く使われ、世界保健機関(WHO)にも採用された仕組みの延長線上にあるとしています。
EUのテック分野責任者であるHenna Virkkunen氏は、プライバシー保護にはゼロ知識証明と呼ばれる暗号技術が使われると述べています。また、このアプリはオープンソースとして公開され、民間企業や提携国もアプリの設計を参考にできるとしています。
しかし年齢確認の義務化に反対していて、対応コストが高くなると主張するテック企業の幹部もいるようです。
アダルトサイトPornhubの幹部やマーク・ザッカーバーグ氏は、代替案としてデバイス単位での年齢確認を推進しています。Appleもイギリスでこの仕組みを導入する予定だと発表しています。
「アプリは、オンラインプラットフォームで簡単に利用できるようになっていますので、使えないなどの言い訳は通用しません。子どもの権利を尊重しない企業には一切の容認はしません。だからこそ、ヨーロッパのルールの執行を強い意志とスピードで進めているのです」とvon der Leyen氏は述べています。
アメリカへの影響とMeta訴訟
EUのこの取り組みは、他地域で同様の動きが進む中で、アメリカにも影響を与える可能性があります。アメリカの規制当局はこれまで必ずしもEUの動きに合わせてきたというわけではありませんが、EUのテック規制がアメリカに大きな影響を及ぼした例もあります。
たとえばEUがクッキー同意の規制を導入した際、多くの企業はヨーロッパ向けとアメリカ向けを分けるよりもシステム全体を変更したほうがコスト面で安上がりであったため、アメリカのユーザーにも同じように同意表示を行うようになりました。
また、トランプ政権がテック企業への規制強化に積極的ではない中、州レベルでの動きはあり、この1年でカリフォルニア州、ユタ州、ルイジアナ州、テキサス州などが、端末レベルの年齢確認を前提とした州法を制定しています。
さらにアメリカでは、SNS企業に対する法的な監視も強まっています。先月出された2つの大きな訴訟判決により、プラットフォームが社会に与える影響について企業の責任を問う動きが一気に広がっているのです。
一つめは、ニューメキシコ州の訴訟。Metaが性的加害者が児童と接触しやすい状況を生んだ責任があるとの判決でした。もう一つは、Metaによる無限スクロールなどの依存性の高い設計のせいで若者のメンタルヘルスを損なったと判断されたカリフォルニア州での判決。
この2つの判決によって、それまで第三者コンテンツについて責任を免れてきたプラットフォームの立場が、大きく揺らぐことになりました。