各国が猛反発、米国経済も大混乱、それでもトランプは簡単には関税攻勢の手を緩めない(JBpress)

 (舛添 要一:国際政治学者)  4月2日(現地時間)、トランプ大統領は、ホワイトハウスで演説し、相手国の関税水準を基にして自国の関税を引き上げる相互関税を導入することを決めた。このトランプの関税攻勢を、国際政治学の観点から検討してみたい。 【写真】トランプ大統領が相互関税に関する大統領令に署名した翌3日、ニューヨーク株式市場では取引開始とともにダウ平均株価が1000ポイント以上値を下げた ■ アメリカの解放?   トランプは、相互関税として、日本24%、中国34%、EU20%、韓国25%、インド26%などをリストアップした。また、個別の関税率を明示してない全ての国に対して10%の関税を課すことにした。この発表は、世界中に衝撃を与え、4月3日午前の日本の株価も、一時1600円を超す下落となった。  そして、4月3日には、25%の自動車関税を発動した。  トランプは、相互関税発表の日を「アメリカ解放の日」と誇示した。「何十年間にも渡ってアメリカを搾取してきた不公平な貿易慣行を押し返す」のだから、「解放」だという。しかし、アメリカの景気を後退させる可能性が大きく、真逆の結末を迎えるかもしれない。  今回のトランプの関税政策は、アメリカ第一主義に基づくものであり、モンロー主義でもある。トランプが、相互関税導入を発表する演説で、その目的を「アメリカを再び豊かに(Make America Wealthy Again)」と述べたが、それは、これまでの政策でアメリカが貧しくなったということを意味している。  今でもアメリカは、世界一の軍事大国・経済大国である。つまり、パックス・アメリカーナは続いている。

■ 「国際公共財」という考え方  国際秩序について考えるとき、国際公共財の議論を念頭に置いておく必要がある。  公共財というのは、道路、公園、治安のように数多くの人が共通に使い、また誰でも自由に消費できるもののことである。このような公共財は市場メカニズムでは供給されないので、国や地方公共団体が提供することになる。つまり、財源は税金である。  この議論は国内については理解しやすいが、同様なことを国際社会についても適用しようというのが、国際公共財の考え方である。  問題は、国際社会の場合は、国内の場合と異なって、国際公共財を提供することについて最終責任を負う組織、つまり国内で言えば政府のような組織が存在しないことである。国連の機能は限定的なものでしかない。そこで、それぞれの時代に世界のヘゲモニーを握った国が、主として公共財を提供する役割を担ってきた。18世紀から第二次世界大戦まではイギリスであり、その後はアメリカである。  それでは、パックス・アメリカーナの下で、国際公共財とは何なのか。第一は、自由世界の安全保障である。第二は、自由貿易体制を維持、発展させることである。第三は、ドルを基軸通貨とする国際通貨・金融システムの円滑な運営である。  これらの他に、対外援助、国連活動への支援、研究開発、難民受け入れなど、国際公共財と考えられるものを列挙できるが、パックス・アメリカーナとの関連では、先の3つの公共財とはカテゴリーもレベルも異なるであろう。

JBpress
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