空気を地下空洞に貯めたら超巨大バッテリーになる件
お天気まかせじゃない方法も欲しいもんね。
風力発電や太陽光発電など、パッと思いつく再生可能エネルギー(再エネ)の弱点は…風や日光がなければ発電できない。つまり、エネルギーの素が「あったとき」しか使えないことです。こればっかりは仕方ない。
だから「余ったときに貯めて、必要なときに使う」という蓄電技術は、さまざまな方法でエネルギー業界から熱い注目を集めています。
そして貯める手段として、どこにでもあるものを使う方法として、「こんなのあったのか!」と唸ったのが圧縮空気エネルギー貯蔵です。
空気を圧縮して地下に詰め込む
中国・江蘇省の淮安(ホイアン)市で2026年3月初旬、世界最大の圧縮空気エネルギー貯蔵(Compressed Air Energy Storage、CAES)実証プロジェクト「淮安塩穴圧縮空気エネルギー貯蔵実証プロジェクト」が全面稼働を開始したと発表されました。
設備の中核機器を供給したのは、中国の大手電力機器メーカーである上海電気(Shanghai Electric)です。
仕組みをざっくり表すと、「電気が余っているときに空気を圧縮して地下に詰め込み、必要なときに解放してタービンを回す」というもの。
いわば空気でできたバッテリーです。
空気を押し込む穴の深さは地下1,150〜1,500m。容積は約98万立方メートルにおよぶ巨大な地下空洞がタンクとして使われています。しかも、もともと塩が採掘されてできた空洞で、地表に何も建てずに「貯蔵タンク」として転用している発想も面白い。
スペックが頭ひとつ抜けている
プロジェクトは発電2基の300メガワットユニットで構成され、合計設備容量は600メガワット、貯蔵容量は2,400メガワット時(MWh)という規模です。一般的な家庭用蓄電池(約7〜10kWh程度)と比べて、その貯蔵量は数十万倍以上。文字どおりのケタ違いです。
変換効率は約71%。CAES技術はさまざま研究が進んでいるようですが、この変換効率は高水準に入ると評価されています。
この施設では、「溶融塩+加圧熱水」を組み合わせた高温断熱圧縮技術が採用されているそう。圧縮時に発生した熱を捨てずに回収・貯蔵し、発電時に再利用する仕組みで、化石燃料を燃やさなくてもいいのがポイント。脱炭素にも直結しますね。
年間発電量は約7億9200万キロワット時(kWh)で、約60万世帯の年間電力消費量をカバーできると見込まれているとのこと。日本で調べてみたら、だいたい広島市やさいたま市が賄えそう。そう考えると一層すごいな。
日本でも実証が行なわれていた
圧縮空気を使った蓄電技術は日本でも研究が進んでいます。調べてみたところ、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2017年から、静岡県河津町において早稲田大学やエネルギー総合工学研究所と連携してCAESの実証事業を実施していました(現在は終了・撤去済み)。
日本の実証では最大出力1,000キロワット(1MW)、放電電力量500kWhの規模で試験が行なわれました。今回の中国施設と比較すると、出力で600倍もの差があります。それだけスケールの違いが圧倒的です。実証では充放電効率も約54.7%に留まり、改善余地が明らかになった結果です。
世の中のものがますます電気で動き、さらに脱炭素の流れもあって、蓄電技術はさらに重要視される分野。その点、CAESは材料が空気と既存の地下空洞というのは魅力的。今回の中国のプロジェクトを見ても、日本でも地下空洞の候補地調査やさらなる技術開発が進めば、再エネ導入の大きな受け皿になれるかも?
なんせ空気というタダで無限にある素材が、エネルギー問題の突破口になる日が来るのだとしたら、それに越したことはないでしょうからね。
Source: PR Newswire, hdblog.it, ESREE Energy