【日本市況】円が上昇、中東情勢懸念で2週間ぶり高値-債券下落

21日の日本市場では30年債や40年債などの超長期債が下落し、利回りが過去最高を更新した。前日の20年債入札が記録的な不調となったことや、日本の財政拡張への懸念から売りが優勢だった。円相場はリスク回避の円買いで一時1ドル=143円台半ばと8日以来の高値を付け、株式は円高を受けて下落した。

  新発30年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp)高い3.185%、新発40年債利回りは同4bp高い3.635%と、前日に続いて過去最高を更新した。

  アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、20年国債入札不調の影響できょうも長いゾーンが売られ、買う投資家は不在だと指摘。超長期債の供給過剰が浸透しており、「需給の構造的な問題が解決されない限り、相対的価値からの買いは脇の方にどけられている感じだ」との見方を示した。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、野党の財政拡張要求を石破茂首相が食い止めているが、支持率低下で不安があり、債券相場の上値は重いと話していた。

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日本市場の債券・為替・株式相場の動き-午後3時30分現在
  • 長期国債先物6月物の終値は前日比1銭安の139円14銭
  • 新発10年債利回りは一時1.5ベーシスポイント(bp)高い1.53%と、3月28日以来の高水準
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.7%高の143円56銭
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.2%安の2732.88
  • 日経平均株価は0.6%安の3万7298円98銭

債券

  債券相場は30年債や40年債が下落。一方、中長期債は押し目買いが入り底堅く推移した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、江藤拓農相の辞任で石破政権の基盤の弱さが意識され、財政悪化が連想されやすいと指摘。「超長期債の金利水準は過去最高を更新してチャートの節目がなく、落ち着きどころが分からない」と語った。

  日本銀行は21日、機関投資家などの実務担当者との債券市場参加者会合を開く。6月の金融政策決定会合で行う国債買い入れ減額計画の中間評価に向け、市場の動向や機能度を含めて点検し、計画修正の是非や来年4月以降の方針を議論する。

  20日に行われた銀行と証券会社との会合では来年度以降の方針について、市場関係者から毎四半期4000億円となっている現在の減額ペースの加速、維持、減速を求める幅広い意見が寄せられた。

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新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.705% 0.995% 1.510% 2.540% 3.135% 3.635% 前日比 -2.0bp -1.0bp -0.5bp -1.5bp +1.0bp +4.0bp

為替

  円相場は上昇。イスラエルがイラン核施設への攻撃を準備しているとの報道を受け、リスク回避の動きからドル売り・円買いが優勢だった。

  SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は「本来なら地政学リスクが浮上すれば円だけでなくドルも買われるが、今は即ドル売りにつながる」と指摘。円はレンジを切り上げ、まずは142円を目指すとみる。

  みずほ銀行国際為替部の加藤倫義ディレクターは、ドルはリスク回避通貨としての「神通力がなくなっている」と分析。また、日米の通商協議を巡っては「株価に悪影響を与えない程度にゆっくり円高が進むのが日米双方にとって都合が良い」との認識を示した上で、金融当局が考えるドル・円相場の落とし所は「多くの市場参加者が想定する140円ではなく130円」と述べた。

  一方、オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、日米通商協議ではこれまで為替への言及はなく、米格下げも予想されていたこと、超長期金利上昇は円売り材料ともとれる中、「ドルは雰囲気だけで下げている」と指摘。日米協議で何も出なければ「日米の2年金利差からみたフェアバリューの147-148円までドルが買い戻される余地は十分ある」と言う。

株式

  株式は下落。決算見通しが弱かったSOMPOホールディングスなど保険株が売られた。為替相場の円高進行を受けて電機や精密機器といった輸出関連も安い。米半導体製品メーカーのウルフスピードが破産申請の準備中と報じられ、ルネサスエレクトロニクスを含む半導体関連銘柄も下げた。

  半面、イスラエルによるイランの核施設への攻撃準備報道を受けて三菱重工業やIHIといった防衛関連や石油関連株が買われた。 

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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