米軍、ナプキンの落書きから9ヶ月間で完成した低コストミサイルを採用
2023年に設立された米防衛スタートアップ=Aeon(イーオン)はソフトウェア定義型とシリコンバレー流のスピード開発を掲げ、ナプキンの落書きから自社生産体制の確立までを9ヶ月間で成し遂げた低コスト肩撃ち式ミサイルのZeus(ゼウス)を発表していたが、米特殊作戦軍への納入契約(1,380万ドル)を獲得した。
参考:SOCOM taps Aeon for limited run of shoulder-fired Zeus with $13.8M deal 参考:Joint Aeon-Destinus low-cost interceptor proposal selected for U.S. Army xTech|Apex Intercept finals
国防総省はPAC-3 MSE、THAAD、トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB/IIA、SM-6の生産能力増強(各ミサイルで3倍~4倍)に関する7年間の枠組みを発表、JASSMとLRASMに関しても今後5年間から7年間で最大1万6,450発調達する意向を表明し、MLRSやHIMARSで使用する精密誘導ロケット弾に関しても防衛産業界に7年間で13万3,014発生産するよう要請しているが、主要ミサイルの増産においてボトルネックになっているのはシーカーと固体ロケットモーターの供給で、急激な増産が困難な根本的な原因は防衛分野に特化したサプライチェーンの規模拡大や維持に柔軟性が欠けているためだ。
米軍が進めている低コストミサイル計画 計画 用途 目標単価 調達目標 陸軍 LCCM 地対地巡航ミサイル 50万ドル未満 2027〜2029年に1万発以上 LCI 地対空ミサイル 100万ドル未満 パトリオットミサイルを補完する迎撃ミサイル 海軍 CHAOS 地対艦巡航ミサイル 2028年に生産開始 MACE 空対地極超音速ミサイル 30万ドル未満 TSI SM系後継ミサイル 2027年末までに初試射 空軍 FAMM 空中発射式巡航ミサイル 30万ドル未満 今後5年間で27,910発 ミサイル防衛局 LCI-MD ミサイル防衛用ミサイル 安価な中間段階での弾道ミサイル迎撃そのため防衛分野に特化したサプライチェーンに依存しない、つまり生産規模が桁違いの商用サプライチェーンから生み出せる低コスト兵器の調達にも乗り出しており、米陸軍はLow-Cost Containerized Missiles=低コストコンテナ化ミサイル(LCCM)計画、Low-cost interceptor=低コスト迎撃ミサイル(LCI)計画、米海軍はCoalition Heterogeneous Affordable Offensive Strike=連合異種混成・低コスト打撃兵器(CHAOS)計画、Multi-Mission Affordable Capacity Effector=多任務対応・低コスト大量配備型エフェクター(MACE)計画、Terminal Stage Interceptor=終末段階迎撃ミサイル(TSI)計画を進めている。
空軍はFamily of Affordable Mass Missiles=低コスト大量配備型ミサイルファミリー(FAMM)計画を、ミサイル防衛局もLow Cost Interceptors for Missile Defense=ミサイル防衛用低コスト迎撃ミサイル(LCI-MD)計画を進めているが、あくまで上記の計画は「代表的な低コスト兵器計画」でしかなく、防衛スタートアップが次から次へと従来兵器を補完する有望そうな計画を持ち込んでくるため、実際に評価・テストで動いている低コスト兵器の種類と数は膨大で、ここに欧州の防衛スタートアップが進めている計画まで加わってくると管理人ですら全容を把握して追いかけて行くのが困難だ。
2023年に設立された防衛スタートアップのAeon(イーオン)も「シリコンバレー流のスピード開発」と「ソフトウェア定義型の兵器開発」を掲げており、ナプキンの落書きから自社生産体制の確立までを9ヶ月間で成し遂げた「モジュール式戦術兵器システム=Zeus(ゼウス)」を発表していたが、遂に米軍への納入契約を獲得したらしい。
ゼウスは肩撃ち式の対戦車ミサイルに近い存在で、同社のタフマス氏も「ナプキンの落書きから誘導ミサイルの飛行試験、そして垂直統合=自社生産体制の確立までを9ヶ月間で成し遂げた」「現在の戦術兵器のラインナップは30年以上も前のもので時代遅れだ」「我々は信管、推進剤、固体ロケットモーター、点火装置、制御駆動システム、各サブシステムを全部自社で内製している」「ゼウスは無誘導兵器と対戦車兵器の両方より優れた能力を提供しながら、遥かに優れたコスト(1ユニットあたり5万ドル=約790万円)で大量生産できるため、精密戦術兵器が抱えているギャップを埋めることができる」と言及。
出典:GuillaumeFrantz/CC BY-SA 4.0
この時点で国防総省から8桁規模の契約(1,000万ドル以上=最低でも15億円以上)を確保していたが、イーオンは「1,380万ドルの低率初期生産契約に基づいて米特殊作戦軍にゼウスを納入(1年間で100発未満)する」と発表し、Breaking Defenseも「米軍がゼウスを買うのは今回が初めてだ」「米軍は無誘導のM72 LAWと高価な精密誘導のジャベリンに何十年も依存してきた」「米特殊作戦軍との契約はゼウスの量産・納入を具体化させる上で重要なマイルストーンになるだろう」と報じており、イーオンは無人水上艦艇への搭載や対ドローン用途向けへのゼウス統合作業も獲得していると主張している。
ちなみにイーオンは欧州の防衛スタートアップ=Destinus(デスティナス)と提携して迎撃ドローン=Hornet(ホーネット)シリーズを米国市場向けに生産する予定で、米陸軍が進めている低コスト迎撃ミサイル(LCI)計画のファイナリストにも選ばれており、これには新型の低コスト迎撃ミサイルシステム=ASTRA(アストラ)を提案している。
出典:Aeon
イーオンがLCIに提案しているアストラは単一の迎撃手段ではなく3層構成で、ホーネット迎撃ドローン、ゼウスの迎撃ミサイルバージョン、デスティナスが開発を進めている低コスト迎撃ミサイル=Vorexon(ヴォレクソン)を束ねたものを低コスト迎撃ミサイルシステムとして提案しているのが特徴だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Aeon