立花孝志氏、小西議員を訴えた裁判も請求放棄「正直驚いた」 "被告側"が会見「社会として厳しい目を向けていかねば」
昨年11月にあった兵庫県知事選挙をめぐるSNSへの投稿に関して、政治団体「NHKから国民を守る党」の党首・立花孝志氏が、立憲民主党の小西洋之参院議員から名誉を毀損されたとして160万円の損害賠償を求めた訴訟で、立花氏が請求を放棄し、裁判が終了したことがわかった。
小西氏の代理人弁護士が4月17日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見して明らかにした。
立花氏は、兵庫県議会議員の奥谷謙一氏を相手取って起こした訴訟でも4月15日に請求を放棄しており、小西氏と奥谷氏に対して「同じ内容」での訴訟を起こせなくなった。
●小西氏がXに投稿「虚偽の誹謗中傷を拡散」
立花氏が問題視したのは、兵庫県知事選挙で再選を果たした斎藤元彦知事が2024年12月18日にXに『令和6年の漢字は「結」といたしました』と投稿したのに対して小西氏が書き込んだ以下の投稿だった。
<どういう神経をしているのか。。 公益通報法に違反し元局長を自死に追い込み、その虚偽の誹謗中傷などを拡散し後にそれを認めた立花氏と公選法違反の二馬力選挙を行い、更には、SNS選挙の買収罪の疑惑説明からも逃げ回っている。 決して政治家、首長として市民と結び合ってはならない人物だろう。>
この小西氏のXの投稿について、立花氏は訴状で、「公職選挙法違反の犯罪をした人物であるという印象を持たせる」などと主張した。
これに対して、小西氏側は「『公職選挙法に違反する二馬力選挙』をおこなったとする主体は斎藤元彦氏を指しており、原告(立花氏)において公職選挙法違反が成立することを明言したものではない」などと反論していた。
●4月15日に続く立花氏の請求放棄
小西氏の代理人をつとめる石森雄一郎弁護士は4月17日、司法記者クラブで記者会見を開き、立花氏が請求を放棄したことを明らかにした。
立花氏は4月15日にも奥谷県議を相手に起こした訴訟の請求を放棄している。
石森弁護士は「結果として請求放棄、請求に理由がないということで、小西先生のポストは名誉毀損ではない」と話した。
東京地裁が入る庁舎(弁護士ドットコム撮影)
●代理人「立花氏は二馬力選挙を認めたと捉えざるを得ない」
また、小西氏がXに「二馬力選挙」と書き込んだことに関して、石森弁護士は兵庫県知事選挙の期間中に撮影されYouTubeにアップされている動画を調査する中で、斎藤知事が街頭演説したあと、同じ場所で斎藤陣営のスタッフと思われる人物が立花氏の選挙カーを誘導する様子などが記録されているものを見つけたという。
石森弁護士はこれらの証拠を今回の裁判で提出したことを説明したうえで、次のように述べた。
「この選挙は知事選なので当選者は1人しか出ません。なので、普通は自分の陣営で集めた聴衆を他陣営に引き継いだり、他陣営の選挙カーを誘導したりすることはあり得ない。
今回の訴訟は二者の争いだが、斎藤氏の違法行為も高いレベルで立証できたと自負している。その中で立花氏の請求放棄がおこなわれたことは非常に重い。二馬力選挙を認めたと捉えざるを得ない」
●小西氏「なぜ警察が動かないのか不可解」
小西氏も記者会見に同席し、こう話した。
「二馬力選挙だということを論戦するつもりでいたが、立花氏が請求放棄ということで正直驚いています。裁判をするなら最後まで堂々と法と証拠に基づいて論戦すればいいのに、自ら幕引きするのは政治団体の代表としてどうか。
私は公人なのでこうした闘いができるが、一般人が受ければ耐え難い。そういう立花氏の行為に社会として厳しい目を向けていかなければなりません。
二馬力選挙は法律上は公職選挙法違反。なぜ警察が動かないのか、国会議員として非常に不可解に思っています」
●立花氏「今後は裁判を減らしていく」
一方、立花氏は4月16日、YouTubeにアップした動画で、請求を放棄した理由について「僕が裁判に勝っても報道されない。裁判に勝っても大した額がもらえない。今後は裁判の量を減らしていく」などと話した。
●請求の「取り下げ」と「放棄」の違い
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏が、『週刊文春』の記事をめぐって文藝春秋などに5億5千万円の損害賠償などを求めていた訴訟では、松本氏が2024年11月、訴えを取り下げている。
「訴えの取下げ」と「請求の放棄」はどのような違いがあるのか。
まず、「訴えの取下げ」(※条文ママ、民事訴訟法261条)の場合、訴訟ははじめからなかったことになる(同法262条1項)。
終局判決が出る前に訴えを取り下げた場合には、再び同じ訴訟を起こすこともできる。
そうすると、被告側も訴訟のためのさまざまな対応を強いられたうえに、何度も訴えられる危険にさらされる。
これは不当と考えられることから、相手方が弁論準備手続において申述したり、口頭弁論をしたあとでは、取り下げには相手方の同意が必要となる(同法261条2項)。
これに対して、立花氏が今回おこなったのは「請求の放棄」だ。
「請求の放棄」(同法266条)とは、原告が自己の請求に理由がないことを認めて訴訟を終了させる意思表示をすることをいう。
原告自身が「理由がないことを認め」るということは、いわばその訴訟における敗北を認めることであり、請求の放棄が調書に記載されると、確定判決と同一の効力が生じる(同法267条)。
そのため、あとで同じ訴訟を起こすことができなくなる。そして、請求の放棄には相手方の同意も不要だ。
この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。