やさしさは幸福感を高めうつを軽減する、トルコの心理学研究が明らかにした事実

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 誰かにやさしくされたとき、気持ちが明るくなった経験はないだろうか? 逆に、自分が誰かにやさしくしたとき、心が温かくなったことは? 実は「やさしさ」と「幸福感」には深い関係があることが、新たな研究で明らかになった。

 トルコ人を対象に行った研究によると、やさしい人ほど抑うつ症状が少なく、自分が幸せだと感じる度合いが高いことがわかったという。

 また、やさしさは単なる性格の良さではなく、独立した心理的特性であることも確認されたという。

 心理学などの分野では、特に報酬を期待することなく、他人のために行われる行動を「向社会的行動」という。

 人助けをしたり、ものを分け合ったり、協力して何かに取り組んだり、こうした行動は特別なものではなく、古今東西、人々が普通に行ってきたことだ。

 たとえ直接的には自分の利益にならなくても、向社会的行動を行うことで、集団が生存しやすくなり、結びつきを強化することもできる。したがって向社会的行動は進化によって培われたものだろうと考えられている。

 今回のテーマである「やさしさ」も向社会的行動の1つだ。他人に友好的に接し、他人が幸せになれるよう配慮し、思いやりある協力的な関係を育むこと、これがやさしさなのだ。

 誰かに微笑みかけたり、親切な言葉をかけたりすることだってやさしさだ。感謝を伝えたり、丁寧な言葉で話すといったこともやさしさだ。こういう接し方をされた人は、きっとその日を気分良く過ごせることだろう。

 重要な点は、こうした行動が見返りを期待して行われるものではないということである。何らかの対価を求めて行われるのなら、それはやさしさとは少々違うものになる。

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 これまで、やさしさが私たち自身の幸福やメンタルヘルスにどのように影響を与えるのか、詳しく検討されたことはほとんどなかった。

 そこで、トルコ、国立防衛大学の研究チームは2度の調査を行った。

 1度目の調査は、トルコ人成人404人を対象にしたもので、内訳は女性210人、男性194人、年齢は18〜71歳(平均32歳)。

 この調査ではやさしさのほか、ビッグファイブに基づく性格特性と主観的な活発さを計測し、やさしさが独立した心理的特性なのかどうかを調べた。

 2度目の調査はトルコ人成人372人を対象にしたもので、内訳は女性184人、男性188人、年齢は平均23歳で、やさしさ、抑うつ、幸福感の関係が調べられた。

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 集められたデータを分析した結果わかったのは、やさしさのレベルが高い人は、うつレベルが低く、主観的な幸福感が高い傾向にあったことだ。

 研究チームによると、やさしさがうつ症状を緩和し、それが幸福感の高さにつながっていると考えられるという。

 またやさしさが独立した心理的特性であることも判明した。

 やさしさは他の性格特性とまったく関連していないわけではないが、それはかなり弱いものだったのだ。また主観的な活発さともわずかにしか関連していなかった。

 ただし、この研究は観察研究であり、やさしさが直接的に幸福をもたらす」という因果関係を証明したわけではないことには注意が必要だ。たとえば、もともと幸福度が高い人がやさしさを発揮しやすい可能性もある。

 見返りを求めずに他人を思いやる行動が、最終的には自分自身の幸福にもつながるのかもしれない。

 日常生活でちょっとしたやさしさを意識することは、それほど難しいことではない。笑顔で接する、感謝を伝える、親切な言葉をかける。そんなシンプルな行動が、心の健康を支えるカギになるのかもしれない。

 この研究は『Psychological Reports』(2024年9月2日付)に掲載された。

References: Niceness is a distinct psychological trait and linked to heightened happiness

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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