ドルに下落余地あり、新FRB議長就任が引き金にも-ダブルライン

ドルは今後さらに大幅に下落する可能性があり、その引き金となり得るのが、利下げに前向きな新たな米連邦準備制度理事会(FRB)議長の就任だ―。ダブルライン・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ビル・キャンベル氏がこうした見方を示した。

  キャンベル氏はインタビューで「ドルを下落させる燃料はまだ十分に残っている可能性がある」と述べた。

  ドルは年初から下落してきたが、7月には今年初の月間上昇を記録した。それでもキャンベル氏は、巨額の米財政赤字を警戒した投資家が他の国・地域へと資産を分散させる中、ドルは長期的な下落局面に入ったとの見方を崩していない。

  米サービス業に関する経済指標が市場予想を下回ったことを受けて、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は5日に下落した。

  ドルにとっての主な逆風のひとつが、トランプ米大統領による利下げへの強い圧力だ。トランプ氏はFRBの独立性が疑問視されるほどに、パウエルFRB議長を繰り返し公然と批判しており、異例の圧力を加え続けている。

  トランプ氏は数日中に、8日付で辞任するクーグラーFRB理事の後任を指名すると明らかにした。トランプ氏にとっては自身の低金利志向に沿った人物をFRBに送り込む好機となる。

  トランプ氏は次に、来年5月に任期が満了するパウエル議長の後任を指名することになる。トランプ氏は任期満了前にパウエル氏を解任する意向はないとしている。

  キャンベル氏はまた、米経済の減速もドルにとって重しとなる可能性があると指摘する。

  5日に発表された米供給管理協会(ISM)の非製造業総合景況指数は7月に50.1に低下し、サービス業が事実上の停滞状態に陥ったことを示した。

関連記事:米サービス業は事実上停滞、雇用はまた縮小圏-ISM非製造業指数

  先週発表された雇用統計でも想定よりも弱い実態が示された。

  成長減速は、米政府が財政の軌道を修正することを一層困難にする。こうした見通しから、キャンベル氏は最近のドル相場の安定を利用し、今後の下落に備えたポジションを構築。新興国および先進国市場でドル建て以外の債券への投資を拡大している。

  ドル指数は年初からこれまでに7%超下落している。

  キャンベル氏によれば、ドル安予想に対する最大のリスクは米国例外主義の再来だ。財政が修正され通商政策の不透明感が払拭(ふっしょく)されて経済が持ち直せば、米資産への需要が支えられドルを押し上げる可能性がある。

  同氏はまた、欧州連合(EU)や日本など米国の貿易相手国が大規模な対米投資を表明している点にも注目する。投資資金の流入が他の資金流出を相殺する可能性がある。ただ、これらの投資の性質や実施時期は依然として不透明だ。

原題:DoubleLine Capital Sees Scope for US Dollar to Sink Further (1)(抜粋)

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