揺れる角田裕毅のシート―VCARB代表が語った「構想はある」来季ドライバー人事、最終局面へ
角田裕毅のF1シート喪失が囁かれる中、レーシング・ブルズ(VCARB)のチーム代表アラン・パーメインが、2026年のドライバー選考の現状について口を開いた。F1第23戦カタールGPのFP1終了後、「まだ最終決定ではない」としながらも、チームとして明確な構想を持っていることを認めた。
ハジャー昇格、VCARBは「ローソン&リンブラッド」か
ロサイルのパドックでは、”古くて新しい一つのシナリオ”が噂されている。それは、VCARBの新人アイザック・ハジャーが来季、マックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてレッドブルに昇格し、VCARBの2席には、リアム・ローソンの残留に加え、10代のイギリス人ドライバー、アーヴィッド・リンブラッドが抜擢されるというものだ。
一時は沈静化していたリンブラッド昇格の可能性だが、ここにきて再浮上した格好であり、ローソンが彼のベンチマークを担うという構図だ。むろん現時点では憶測の域を出ないが、もしこれが事実となれば、角田はシートを失うことになる。
カタールGP後の決定が見込まれているドライバー人事(レッドブル単体なのか、レッドブル系列全体なのかについては言及なし)について問われたパーメインは、詳細には踏み込まなかったものの、内部の議論が大詰めを迎えていることを認めた。
「構想はあるが、実際にはまだ最終決定していない。ある種の計画はあるのだが、まだ完全には固まっていない」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
アラン・パーメイン(レーシング・ブルズ代表)、2025年11月27日(木) F1カタールGPメディアデー(ロサイル・インターナショナル・サーキット)
ハジャー昇格の可能性について問われると、パーメインは否定も肯定もせず、先ほどのように「まだ何も決まっていない」と返すでもなく、「ノーコメント!」と笑いながら返答を拒んだ。時に沈黙は雄弁だが、今回ばかりはそうでないことを願いたい。
ハジャーは直前に行われたFP1で、レッドブル陣営最上位となる5番手タイムをマークした。限られた時間内で着実にパフォーマンスを発揮する姿は、ある種のベテランのようにも映るが、パーメインはあくまで冷静だ。
「いや、まだ彼はルーキー側だ。こちらの言うことをすべて吸収し、しっかり聞いて、そして走りでまとめてくる。それでも、まだまだ伸びしろがあると思う」
そして、角田の来季シートを脅かすと噂されるもう一人の存在、リンブラッドについても、パーメインは高い評価を口にした。
一方で、その強みについては「まだ掘り下げていない」とし、現時点で彼の現状やポテンシャルを詳細には把握していないことを認め、VCARBへの昇格が既定路線ではないことをうかがわせた。
「とにかく速い。それは確かだ。メキシコのFP1でも非常に速かった。F2でも何度か力強い週末を過ごしているし、我々のマシンを走らせても速い。フィードバックも悪くないし、順調に成長している」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ガレージ内でエンジニアを話をするアーヴィッド・リンブラッド(レッドブル・レーシング)、2025年10月23日(木) F1メキシコGPメディアデー(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)
角田はカタールGPの開幕に先立ち、自身の去就に関連して「知っていることもありますが、もちろんそれは話せません。ただ、おそらくは、ほとんどの人が知っていることなのかなとも思います」と意味深な発言を口にしつつ、「知っている事という点に関しては、実は僕も皆さんとあまり変わらない状況」ともこぼした。
一方で、フェルスタッペンの逆転タイトルを援護できれば、「自然と僕の将来にもプラスになるはず」とも語った。
これらの発言の真意は不明瞭だが、パーメインの発言を踏まえ、あえて一つのシナリオを導き出すとすれば、ハジャーのレッドブル昇格が既定路線である一方、カタールでの走り次第では、VCARBのシートを確保できる可能性が残されているということだろうか。
角田のパフォーマンス、ホンダとの関係終了、そして台頭する若き才能たち。パーメインの言う「計画」に角田の居場所はあるのか。最終決定の時は、刻一刻と迫っている。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
パドックを移動する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年11月28日(金) F1カタールGPフリー走行1(ロサイル・インターナショナル・サーキット)