40℃になったらどうしようと思われる方、多いと思うんですが、大丈夫です ~気象予報士増田さんに聞く
今月もこのメンバーでお送りします
林: 今年が、平年より平均気温が2.3℃高かったというニュースで、あのグラフを見ると……あのコロナが爆発した時みたい感じになってるじゃないですか。来年もこのペースで平均気温が上がるのかなって思うと……。
2025年がカギを握るのでは?増田: どうでしょうね。去年、一昨年までのところで、これは2025年がカギを握るのかなあと思っていて……過去のグラフを見ていてもこのぴょこっと突き出すタイミングはあったので、もしかしたら戻るのかな……というふうにも思っていましたが、2025年の夏はそんなの全部すっ飛ばしてポーンと上がって、今までのどの上がり方よりも上ですよね。
気象庁発表・「2025年の梅雨入り・明け及び夏(6~8月)の記録的高温について」 より林: この、天気の話をすると、脅かしてPV集めるみたいな感じにならないように心がけてはいるんですが、この気温をみると、びっくりしますね。
増田: ここまで来るとそうですよね。今まで「いや、高温ってなんだかんだ言っても」なんて思ってた方々も、このグラフをみたら水戸黄門の印籠を見たときみたいに「ヘヘーッ」って、なっちゃうんじゃないかと。
悲観的な話はしません!林: この連載は、明日雨だとか晴れだとか、そういう直近の話じゃなくて、長期的に見ればそんなに一喜一憂するものでもないんだというのが根っこにあったんですが、長期的に見ても……長期的に見てるからこそ……なんか、困ったな(笑)
増田: 今年の気温の上がり方は本当に飛び抜けてますからね。ただ、東京の最高気温は38.5℃です。これが、40℃になったらどうしようと思われる方、多いと思うんですが、大丈夫です。群馬県の伊勢崎をはじめ、そういうところの皆さん40℃でも生活してらっしゃいます。そう悲観的にならずに。
林: 別に群馬で山火事がガンガン発生してるとか、暑さでモバイルバッテリーが次々爆発したりとかしてるわけじゃないですからね。
増田: こんなこと言うと「危機感がない」と怒られちゃいますけれども。
そういう話でなく、これから気温が上昇して暑くなることはわかっているわけですから、じゃあその先をみんなで考えて、先進地域(すでに暑い地域)の方々の生活も見習って、わたしたちも対応・対策して慣れていくというのも大切ってことですね。
林: 最高気温ランキングも気づけば今年ばっかりですもんね。
西村: 20位までに限ると、30℃台がもう無いんですね。
気象庁ホームページより
増田: (1933年の記録の)山形がなんとか踏みとどまってますが……来年ぐらいで消えちゃうかもしれないですね。
西村: 山形は今後40.8℃以上の記録が6箇所ほどでると(トップ20からは)消えちゃうということですね。
増田: 74年間、日本の最高気温の座を守り続けてたんですよね。
林: 74年前の山形は異常値というか、たまたまちょっと出ちゃって、それからはあまり出なかったんですよね。
増田: そうですね、この山形の40.8℃の時は、台風が日本海にあって南の暑い空気を引き込んでフェーン現象が起こってこの気温になった。
1933年7月25日の天気図。日本海上にある台風が、南の温かい空気をぐっと引き寄せて、この日は関東地方と東北地方で気温が上がった林: この天気がもし今来たら……。
増田: まあ、あり得ますね。今これだけベースの気温が上がってますから。
西村: 今(2025/9/3)台風が来てますが……。
増田: 南海上を進んでますが、もしこれが一気にグーッと北上したら……。
林: 鬼に金棒ってことですね。
増田: 気温のランキングは今年みたいに記録が一気に塗り替えられるような年が、今後は度々出ると思います。
林: これがまあ、次は2029年ぐらいにくればいいんだろうけど……来年だったらやだな(笑)
西村: 全体的に少しづつ上がって来てはいるんだけど、この、なんだろう? 細かな上がり下がりで今年はたまたまグッと上がったので、来年はちょっとは落ち着くんじゃないか。という見方もできますかね。
増田: そうですね。でもね、去年もそう思ったんですよねー(笑)そう思ってたらポーンで跳ねたから。どこかで必ず下がるタイミングは来ると思うんですけど、でもそれも結局またどっかでポーンと上がる、上がり基調になっている感じですね。
アクシデントで気温が一時的に下がる可能性は無きにしもあらず
林: 公害って、公害対策をしていたら、30年とか40年で東京の空気は変わったじゃないですか? 温暖化対策ってそんな20年、30年の短期間で効果はでるんでしょうか?
増田: 世界規模のスケールになると、さすがにすぐには。
林: 100年単位ぐらいで下がっていくのかな。
増田: ただ、それこそなにか大きな要因、アクシデント的なものが起こる、例えば大規模な噴火があって、火山灰が広範囲に広がるとか、1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときは、火山灰の影響で気温が少し下がりましたから。そういう可能性も、無くはない。
林: 火山の噴火に期待? いや、期待しちゃだめですけど、そうか、噴煙で日光が遮られて気温は少し下がるのか。
増田: 天気だけで考えると、気温はどんどん上がっていってしまうわけですけど、そういったアクシデントで下がるというのはあるかも知れませんね。
フィリピンピナツボ火山の噴火(Dave Harlow, United States Geological Survey, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で)今年の梅雨を総括。結局、増田さんの言った通りになった
林: 梅雨の話です。気象庁の梅雨の確定値が出ましたが、関東の梅雨は5月22日から6月28日ごろということになりました。東京の降水量のグラフに書いてみたんですが……。
赤い「速報値」が、気象庁が最初に発表した梅雨の期間。青い「確定値」が、9月に発表された今年の梅雨の期間(気象庁ホームページのデータを元に製作) (速報値:6月10日頃~7月18日頃・確定値:5月22日頃~6月28日頃)
林: これは速報値で出しそこねた……って感じですかね。
増田: 気象庁はなぜこんなに(梅雨明けを)待っていたのか……というのはありますね。
林: でも、わかりますよ、こういうことってありますよね「あー、乗りそこねた!」っていう、「どうしよう、今更言えない!」みたいな(笑)すごくみんな身に覚えのある感じじゃないですか?
西村: わかる……(笑)
林: 増田さんは3ヶ月前のこの連載で、もう5月の下旬から梅雨って言っちゃっていいじゃないですかと。で、梅雨明けは発表するなら6月の18日ぐらいじゃないかと。でも、それは気象庁は難しいだろうって、おおよそその見立ての通りになりました。結局、気象庁は速報値ではここの雨(7月10〜17日頃の雨)まで入れてたわけですね。
梅雨の確定値と速報値が大幅にズレた増田: 気象庁は6月下旬の雨(25〜27日頃の雨)は梅雨の確定値に入れましたけど、たった3日だけですよ。この3日の雨は梅雨と言っていいのかどうかっていうところはありますよ。
西村: この感じならただ、2、3日天気がぐずついただけっていう見方もできますもんね。
増田: ただ、いろんな推測をすると……このデータだけ見れば、梅雨明けはここ(6月半ば)だと思うんですよね。でもやっぱりね、7月半ばまで梅雨明けを引っ張ったのは、そんな早い梅雨明けの前例がないっていうのが大きかったんじゃないかなと思うんです。
林: なるほど。
増田: 6月末の梅雨明けというのは一応あるので、まあ6月末ならなんとか許せるんだけど、6月中旬の梅雨明けはそんな早いの今までなかったから……でも、6月末という早い梅雨明けの例がこれで増えましたから、じゃあ次、このへん(6月中旬)でどうかな? ってなった時に行けると思います。
林: それって、さっきの気候の変化の話でもそうですけど、前例主義とかそういう話じゃなくて、科学者としてそんなに急に変えちゃうとその後の整合性がとれないからっていうことかもしれないですね。
増田: そういうのもあると思います。やっぱり季節現象で、本当にまあ、この辺かな? というふうにやっているので、そうすると、変化も少しずつという感じにしないといけないというのはあるでしょうね。
林: 等圧線を急にグニャッと書いちゃだめなのと同じで。
増田: そうそうそう、滑らかに滑らかになるように。天気はそうかも知れないですね。梅雨に関しては、これはもう、今後こういう梅雨ってあり得ると思いますね。前にもお話しましたけど、夏が前と後ろに延びているんだから、当然梅雨だって前倒しになって、5月の梅雨入りっていうのもあると思うし、で、6月ごろまでが梅雨として、その後はまあ、いわゆる戻り梅雨という扱いにすればいいですし、別の言い方でしたら、梅雨シーズン2、シーズン3でもいい。
林: こうやって、データを眺めて見てみると、なんかむしろ、気象庁の人の苦労が、手に取るようにわかりますね。……なんか「乗り遅れて撤退しにくい」って、仕事とかでもあるじゃないですか、会社でも今更TikTokやるんですか? でも始めたからには3ヶ月はやるぞ! みたいな。そういうことですよね。
西村: 株価が上がってる時に……あぁ、今買っても遅いんだ、みたいな。
増田: 最初の気候の話なんか、経済指標みてるみたいですもんね(笑)
気温のグラフが経済指標みたいですねPage 2
西村: 東京で一番遅い猛暑日(35℃以上の日)っていつでしたっけ?
増田: 去年ですよ、去年の9月18日。35.1℃。
西村: 去年だったんだ……去年も、そうとう暑かったですよね……。
林: 「半袖兄さん」(23℃以上だったら、半袖でも大丈夫)と考えたら、もう日本は一年の半分以上半袖ってことですよね。
増田: だからもう、それこそ冬服が売れなくなってくる。明らかに半袖、短パンの期間が増えてきてますよね。今後は空調服とか、そういうのも売れるようになってくるんでしょうね。昔は9月ぐらいになったら、コートの売出しとかあったじゃないですか。
林: あー、あったあった。
増田: こう、汗かきながら羽織って試着してたのが懐かしいな。……25年ぐらい前の9月の天気予報では、そろそろ長袖の準備をとか、朝晩は羽織るものをなんて言ってましたもん。今、9月上旬で羽織るものなんて言ったら怒られますね。
林: 暑さ寒さも彼岸までなんていいますけど、寒くなりませんか。
増田: 今は「猛暑寒さも彼岸まで」ですよ。彼岸過ぎても30℃ぐらいの真夏日は普通にでるんじゃないですか?
西村: 猛暑が終わるだけか……。10月は……。
彼岸は猛暑が終わるだけ……増田: 減りはするでしょうけど、10月上旬はまだ30℃は出るでしょうね。ベースが上がってるのを考えると、気温の下がり方ももっと後ろ倒しになってくる。秋(9月10月ごろ)でも暑い日は出やすくなるでしょうね。
林: 秋が、あったかくなって過ごしやすくなると考えれば……いや、暑い日が増えて長くなってるだけか……。
増田: 暑さ好きの人にとっては、いい季節が増えると。
西村: 夏の花火大会を秋にずらしてやるところも増えてますよね。だから、そういう夏っぽさのいい風情が、秋になっても楽しめると考えれば……なんとか。
林: 夏は、休憩みたいな感じになりましたよね。暑いからとにかく動かずにじっとしておけという。
増田: だから、季節が一個増えたということですよね、春・猛暑・夏・秋・冬というふうに。
林: 「猛暑」ってマニア向けというか、上級者向けの季節がいいですね。
小林: エクストリーム夏ですね。
林: ヤケみたいな話にしかならないな(笑)
どうすれば、クッソ暑い夏と折り合いをつけられるかを考えています(やけくそみたいなアイデアしか出てこない)今月は大量の正解者が!
8月の問題・8月の東京の最低気温を予想してください(小数点以下1桁まで) 正解:23.8℃(2025年8月1日)
林: 8月のクイズの結果ですが……。
西村: 今回はすごいですね。
林: 東京の8月の最低気温ですが。これ、8月1日の23.8℃でいいんですね。
増田: そうですね。
林: 前回、出題した時点の最低気温以下にはならなかったわけですね。6人の方が正解してます。
かず 23.8℃ 8月1日の最低気温23.8℃以下にはならないのでは? リアン 23.8℃ 8/1に23.8度でそれより下にはならない予想 青い三角木馬 23.8℃ 8月1日の最低気温23.8℃よりも下がらずに、8月を終えそうな気がします。もう27℃くらいでも、涼しく感じています。 せろりん 23.8℃ 8/1が最低のまま更新されないと予想 マンゴープリン 23.8℃ 残暑が厳しそうなので8/1の最低気温を下回ることは無いでしょう メロポン 23.8℃ 今年は暑い日が続いています。最低気温があまり下がらず、これからしばらくの間、熱帯夜が連続するのではないかと考えました。8月1日の23.8℃が月間最低気温だと思います。でも、本音は早く涼しくなってほしいですね。正解の方々
増田: 8月1日の最低気温以下は下がらないと踏んだ方がすべて正解ですね。
林: 楽観的にもっと下がるぞ! といった人は外れてしまいましたね。
勘です。このまま夢の17度台突入もあり得るかなって
増田: 夢の17℃台は、夢となっちゃった。
理由はありませんが、増田さんのお好きなゾロ目で行ってみます。
林: 増田さんの好きなゾロ目で! という人もいましたね。
増田: ありがとうございます(笑)
お盆以降は太平洋高気圧が盛り返し、連日猛暑となるため、熱帯夜が続くでしょう。その中で最低気温を観測するなら、積乱雲による下降気流で気温が急降下するパターンがあります。その場合、22℃台中盤まで下がると思われます。
増田: Bernieさんも読みまくってますね。確かにこのパターンもあり得たかもしれないですね。素晴らしい読みだとおもいます。
林: 東京は積乱雲で大雨ってなかったですよね。
増田: 8月そうだったんですよね。北関東はバンバン降ってたんですが、普段と違ったパターンだなと。そうするとまた雨で冷めないから暑くなりやすいということになる。
西村: 適度に降ってほしいんですけどね。
林: 打ち水ぐらいじゃダメなんですよね。
西村: 焼け石に水じゃないですか。
林: すでにそういうことわざありましたね(笑)
増田: 9月も、もう1回東京の最低気温でいきますか? 9月はきっと下がるはず! 8月と同じ展開になったら絶望以外なにものでもないんですが……。まだ3日(9月3日収録)ですからね、27.1℃。さすがにこれは下回るでしょう。
9月の問題・9月の東京の最低気温を予想してください(小数点以下1桁まで・締め切り 2025年9月15日23:59) 回答はこちらから
西村: 9月末までかけてですからね。秋雨前線もくるかもしれないですし。
2022年 16.5℃
林: 秋雨前線くるじゃないですか。
増田: ま、はい(笑)
林: どうしたんですか!
増田: 天気予報の仕事始めて、秋雨前線って8月から来るんだ。なんてよく思っていて、2004年みたいに、すごい猛暑だけどお盆過ぎに秋雨前線が下りてきて暑さが和らぐ。みたいな年がけっこう多かったんですが、今年のやつは「おい、秋雨前線! いつまで夏休みのままなんだよ!」と。
林: もう、秋雨前線は来ててもおかしくないんだ。
増田: 一応、来ていたりはするんですけれども、秋雨前線らしさを発揮できてない。発揮できているのは北海道とか北の方ですね。秋雨前線は働かせてもらえないという。
小林: 太平洋高気圧がブロックして。
増田: ディフェンダーのガードが強くて、俺の仕事のスペースがない。俺のプレーができない! みたいな。
林: 太平洋高気圧の圧がすごいと。でも去年が暑くても17℃台ですからね、9月の東京の最低気温は16℃台ですよ。楽観を貫くよ。
西村: 9月の最低気温は……20℃だったら面白いかな。20℃切らない!
増田: また悲観的な話に!
あらためて9月の問題です 9月の東京の最低気温を予想してください(小数点以下1桁まで・締め切り 2025年9月15日23:59) 回答はこちらから
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ 「大変だ!」と悲観的になるウェブマスター林を増田さんが勇気づける回となりました。しかもこの対談のあと、空気が秋の雰囲気になっているのでもっと心穏やかにしています。
さて、今回のインタビューまとめは西村さんにお願いしてみました(前回までは林)。ライターによってのまとめの雰囲気の違いも楽しんでください。古い天気図を貼るあたりが西村さんの本領発揮です。(林)
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今月もこのメンバーでお送りします
林: 今年が、平年より平均気温が2.3℃高かったというニュースで、あのグラフを見ると……あのコロナが爆発した時みたい感じになってるじゃないですか。来年もこのペースで平均気温が上がるのかなって思うと……。
2025年がカギを握るのでは?増田: どうでしょうね。去年、一昨年までのところで、これは2025年がカギを握るのかなあと思っていて……過去のグラフを見ていてもこのぴょこっと突き出すタイミングはあったので、もしかしたら戻るのかな……というふうにも思っていましたが、2025年の夏はそんなの全部すっ飛ばしてポーンと上がって、今までのどの上がり方よりも上ですよね。
気象庁発表・「2025年の梅雨入り・明け及び夏(6~8月)の記録的高温について」 より林: この、天気の話をすると、脅かしてPV集めるみたいな感じにならないように心がけてはいるんですが、この気温をみると、びっくりしますね。
増田: ここまで来るとそうですよね。今まで「いや、高温ってなんだかんだ言っても」なんて思ってた方々も、このグラフをみたら水戸黄門の印籠を見たときみたいに「ヘヘーッ」って、なっちゃうんじゃないかと。
悲観的な話はしません!林: この連載は、明日雨だとか晴れだとか、そういう直近の話じゃなくて、長期的に見ればそんなに一喜一憂するものでもないんだというのが根っこにあったんですが、長期的に見ても……長期的に見てるからこそ……なんか、困ったな(笑)
増田: 今年の気温の上がり方は本当に飛び抜けてますからね。ただ、東京の最高気温は38.5℃です。これが、40℃になったらどうしようと思われる方、多いと思うんですが、大丈夫です。群馬県の伊勢崎をはじめ、そういうところの皆さん40℃でも生活してらっしゃいます。そう悲観的にならずに。
林: 別に群馬で山火事がガンガン発生してるとか、暑さでモバイルバッテリーが次々爆発したりとかしてるわけじゃないですからね。
増田: こんなこと言うと「危機感がない」と怒られちゃいますけれども。
そういう話でなく、これから気温が上昇して暑くなることはわかっているわけですから、じゃあその先をみんなで考えて、先進地域(すでに暑い地域)の方々の生活も見習って、わたしたちも対応・対策して慣れていくというのも大切ってことですね。
林: 最高気温ランキングも気づけば今年ばっかりですもんね。
西村: 20位までに限ると、30℃台がもう無いんですね。
気象庁ホームページより
増田: (1933年の記録の)山形がなんとか踏みとどまってますが……来年ぐらいで消えちゃうかもしれないですね。
西村: 山形は今後40.8℃以上の記録が6箇所ほどでると(トップ20からは)消えちゃうということですね。
増田: 74年間、日本の最高気温の座を守り続けてたんですよね。
林: 74年前の山形は異常値というか、たまたまちょっと出ちゃって、それからはあまり出なかったんですよね。
増田: そうですね、この山形の40.8℃の時は、台風が日本海にあって南の暑い空気を引き込んでフェーン現象が起こってこの気温になった。
1933年7月25日の天気図。日本海上にある台風が、南の温かい空気をぐっと引き寄せて、この日は関東地方と東北地方で気温が上がった林: この天気がもし今来たら……。
増田: まあ、あり得ますね。今これだけベースの気温が上がってますから。
西村: 今(2025/9/3)台風が来てますが……。
増田: 南海上を進んでますが、もしこれが一気にグーッと北上したら……。
林: 鬼に金棒ってことですね。
増田: 気温のランキングは今年みたいに記録が一気に塗り替えられるような年が、今後は度々出ると思います。
林: これがまあ、次は2029年ぐらいにくればいいんだろうけど……来年だったらやだな(笑)
西村: 全体的に少しづつ上がって来てはいるんだけど、この、なんだろう? 細かな上がり下がりで今年はたまたまグッと上がったので、来年はちょっとは落ち着くんじゃないか。という見方もできますかね。
増田: そうですね。でもね、去年もそう思ったんですよねー(笑)そう思ってたらポーンで跳ねたから。どこかで必ず下がるタイミングは来ると思うんですけど、でもそれも結局またどっかでポーンと上がる、上がり基調になっている感じですね。
アクシデントで気温が一時的に下がる可能性は無きにしもあらず
林: 公害って、公害対策をしていたら、30年とか40年で東京の空気は変わったじゃないですか? 温暖化対策ってそんな20年、30年の短期間で効果はでるんでしょうか?
増田: 世界規模のスケールになると、さすがにすぐには。
林: 100年単位ぐらいで下がっていくのかな。
増田: ただ、それこそなにか大きな要因、アクシデント的なものが起こる、例えば大規模な噴火があって、火山灰が広範囲に広がるとか、1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときは、火山灰の影響で気温が少し下がりましたから。そういう可能性も、無くはない。
林: 火山の噴火に期待? いや、期待しちゃだめですけど、そうか、噴煙で日光が遮られて気温は少し下がるのか。
増田: 天気だけで考えると、気温はどんどん上がっていってしまうわけですけど、そういったアクシデントで下がるというのはあるかも知れませんね。
フィリピンピナツボ火山の噴火(Dave Harlow, United States Geological Survey, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で)今年の梅雨を総括。結局、増田さんの言った通りになった
林: 梅雨の話です。気象庁の梅雨の確定値が出ましたが、関東の梅雨は5月22日から6月28日ごろということになりました。東京の降水量のグラフに書いてみたんですが……。
赤い「速報値」が、気象庁が最初に発表した梅雨の期間。青い「確定値」が、9月に発表された今年の梅雨の期間(気象庁ホームページのデータを元に製作) (速報値:6月10日頃~7月18日頃・確定値:5月22日頃~6月28日頃)
林: これは速報値で出しそこねた……って感じですかね。
増田: 気象庁はなぜこんなに(梅雨明けを)待っていたのか……というのはありますね。
林: でも、わかりますよ、こういうことってありますよね「あー、乗りそこねた!」っていう、「どうしよう、今更言えない!」みたいな(笑)すごくみんな身に覚えのある感じじゃないですか?
西村: わかる……(笑)
林: 増田さんは3ヶ月前のこの連載で、もう5月の下旬から梅雨って言っちゃっていいじゃないですかと。で、梅雨明けは発表するなら6月の18日ぐらいじゃないかと。でも、それは気象庁は難しいだろうって、おおよそその見立ての通りになりました。結局、気象庁は速報値ではここの雨(7月10〜17日頃の雨)まで入れてたわけですね。
梅雨の確定値と速報値が大幅にズレた増田: 気象庁は6月下旬の雨(25〜27日頃の雨)は梅雨の確定値に入れましたけど、たった3日だけですよ。この3日の雨は梅雨と言っていいのかどうかっていうところはありますよ。
西村: この感じならただ、2、3日天気がぐずついただけっていう見方もできますもんね。
増田: ただ、いろんな推測をすると……このデータだけ見れば、梅雨明けはここ(6月半ば)だと思うんですよね。でもやっぱりね、7月半ばまで梅雨明けを引っ張ったのは、そんな早い梅雨明けの前例がないっていうのが大きかったんじゃないかなと思うんです。
林: なるほど。
増田: 6月末の梅雨明けというのは一応あるので、まあ6月末ならなんとか許せるんだけど、6月中旬の梅雨明けはそんな早いの今までなかったから……でも、6月末という早い梅雨明けの例がこれで増えましたから、じゃあ次、このへん(6月中旬)でどうかな? ってなった時に行けると思います。
林: それって、さっきの気候の変化の話でもそうですけど、前例主義とかそういう話じゃなくて、科学者としてそんなに急に変えちゃうとその後の整合性がとれないからっていうことかもしれないですね。
増田: そういうのもあると思います。やっぱり季節現象で、本当にまあ、この辺かな? というふうにやっているので、そうすると、変化も少しずつという感じにしないといけないというのはあるでしょうね。
林: 等圧線を急にグニャッと書いちゃだめなのと同じで。
増田: そうそうそう、滑らかに滑らかになるように。天気はそうかも知れないですね。梅雨に関しては、これはもう、今後こういう梅雨ってあり得ると思いますね。前にもお話しましたけど、夏が前と後ろに延びているんだから、当然梅雨だって前倒しになって、5月の梅雨入りっていうのもあると思うし、で、6月ごろまでが梅雨として、その後はまあ、いわゆる戻り梅雨という扱いにすればいいですし、別の言い方でしたら、梅雨シーズン2、シーズン3でもいい。
林: こうやって、データを眺めて見てみると、なんかむしろ、気象庁の人の苦労が、手に取るようにわかりますね。……なんか「乗り遅れて撤退しにくい」って、仕事とかでもあるじゃないですか、会社でも今更TikTokやるんですか? でも始めたからには3ヶ月はやるぞ! みたいな。そういうことですよね。
西村: 株価が上がってる時に……あぁ、今買っても遅いんだ、みたいな。
増田: 最初の気候の話なんか、経済指標みてるみたいですもんね(笑)
気温のグラフが経済指標みたいですね