ニンテンドースイッチ2を発売日に入手した記者が緊急リポート…まさに「正統進化」だが長時間遊ぶと気になる点も

 任天堂の新型家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」が発売された5日、事前の抽選販売で当選していたファンの自宅にも商品が相次いで届けられた。

 転売品が高騰し、全国的に購入できない人があふれる中、いまスイッチ2を買うべきか、待つべきか――。発売日に入手した記者が緊急リポートする。(寺田航)

一回り大きく

「ニンテンドースイッチ2」。従来のスイッチより一回り大きい(大阪市北区で)

 5日午前9時30分、大阪市北区の自宅に、それは届いた。新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」。任天堂の歴代ハードは初代からほぼ「攻略」しているが、新型機を手にする瞬間の高揚感はやはり格別だ。

 ヤマト運輸から発送の連絡があったのは4日午後。国内だけで220万人もの購入希望者が殺到したとされるだけに、到着の遅れを危惧していたが、杞憂だったようだ。

 SNS上は、この日も購入できない「スイッチ難民」の声があふれていた。記者は1度目の抽選で購入権を手に入れている。彼らを気の毒には思いつつも、無事入手できた 安堵(あんど) が広がる。あいにく休暇が取れなかったため、仕事を終えて帰宅後、深夜に起動してみた。

 手に取ったスイッチ2は、従来機のニンテンドースイッチ(初代)より、一回り大きくなったものの、携帯型と据え置き型の両方の機能を持つほか、ボタンの配置や基本的な操作感もほぼ変わらない。

 あえていえば、ジョイコン(コントローラー部分)が少し大きくなって持ちやすくなり、スティック部分も従来のスイッチより滑らかに動くようになった。

一番の違いは

 全体を通して、一番違いを感じたのは、重さだ。長時間遊ぶプレーヤーにとって本体の重さは重要な要素になる。米バルブ社が2022年に発売した携帯型ゲーミングPC「Steam Deck(スチームデック)」は、性能の評価は高いが、重量が669グラム(LCDモデル)あり、ユーザーからは不満の声が相次いだ。

 重すぎる端末は手にとって遊ぶと、腕が疲れてゲームどころではなくなる。

 スイッチ2は、ジョイコン付きで534グラム。従来機(スイッチ)は398グラムだったことを考えると、約100グラム重くなっている。

 比較するために、新旧スイッチを持つと、明らかにスイッチ2が重い。10分間、携帯モードで使用していると、腕が疲れた。寝転がると、頭に落下したら痛そうで、少し怖い。休憩時間や通勤・通学時間などでカジュアルに遊びたい人には、やや使いにくく感じるのではないか。子どもであれば、据え置き型が基本の遊び方になるかもしれない。

「ニンテンドースイッチ2」。据え置きモードでも楽しめる(大阪市北区で)

うれしい「まるごと転送」

 起動して、すぐに始まるのが「まるごと転送」。文字通り、スイッチ(初代)で遊んでいたプレーデータを自動で丸ごと転送してくれる機能で、データの移行に悩んでいた人は、これで安心できるだろう。

 記者の場合、20分足らずで移行が完了した。ユーザー目線に立ったサービスだと感じる。

 早速、購入したスイッチ2向けレーシングゲーム「マリオカートワールド」を遊んでみた。このソフトは、全世界で6820万本を販売した大ヒットタイトル「マリオカート8 デラックス」の後継にあたる作品で、映像は美しく、動きは滑らか。お気に入りのキャラクター「ヘイホー」を操作した初戦のレースは、いつも通りのステアリングで難なく1位を獲得した。

 シリーズ最多のBGM、直感的に楽しめる操作感など評価できるポイントは尽きない。ただ、マリカ8デラックスと比較して、劇的な進化は感じなかった。

 本作はスイッチ2の特徴である「ゲームチャット」にも対応している。ゲーム中にプレーヤー同士でボイスチャットができる機能で、家族や友人たちと一緒に遊べる環境が整えば、十分楽しめるのかもしれない。

 現在、発売されているスイッチ2向けソフトは、本作を含めても20作品あまり。格闘ゲーム「ストリートファイター6」や、アドベンチャー「ホグワーツ・レガシー」といった、すでにプレイステーション5などでヒットしたタイトルの移植版が大半を占めるため、新鮮さは乏しい。

「破格」の価格設定

 スイッチ2について、任天堂ハードの「正統進化」(国内証券アナリスト)と評価する声が多い。

 任天堂は、1983年に家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を投入して以降、コントローラーなど、機能面の刷新で新旧の「違い」を際立たせてきた。それが、映像の美しさなどにこだわってきたソニーとの決定的な違いともいえる。

 今回、スイッチ2を実際にプレーしてみると、本体のデザイン、画像の美しさ、処理能力など、すばらしい点は多い。他社の家庭用ゲーム機が軒並み高騰する中、国内専用モデルで4万9980円とした価格設定は、「破格」といえる。

 ゲーム業界からも「想像以上に価格帯のインパクトはあった」(カプコンの辻本春弘社長)と驚きの声が上がるのもうなずける。ただ、この価格を除けば、特段の大きな驚きがなかったことが、驚きだった。

 これまでの刷新の歴史を振り返るならば、今回を「正統進化」と評価するのはやや違和感がある。

 マウス機能やボイスチャット、高い処理能力など、スイッチ2の強みを生かせるソフトのラインアップがそろうのは、早くても年末から来年にかけてとなる。その頃には、店頭販売も始まり、本体の品不足はある程度落ち着くだろう。

 今から急いで買うメリットはなく、ましてや一時の熱狂に惑わされ、「高値づかみ」をしてまで、入手すべきものではない。スイッチからスイッチ2への「スイッチ」(切り替え)は、いったん待つという選択肢を入れて良いのではないか。

 フリーマーケットサイト「メルカリ」では、高額転売に関する注意喚起がされていたが、発売初日から10万円前後で出品するケースが相次いでいる。任天堂が、見事な手際で転売対策を打ち出したにもかかわらず、いたちごっこになる実態が浮き彫りになった。

 6日未明、メルカリに出品された商品の中にはスイッチ2の画像を載せて「4万4444円」と表示しておきながら、本体の販売ではなく、「画像をプリントして1枚発送いたします」とうたう詐欺まがいのケースもあった。間違えて買ってしまう人を見込んでいるのかもしれない。

 現状では、転売そのものは違法ではないが、こうした悪質な手法を排除する手立ては、待ったなしで考えるべきだ。

関連記事: