【大河べらぼう】長谷川平蔵宣以役・中村隼人さんインタビュー「平蔵役、すごく怖かった」「ダメダメに見えるが、やるときはやる」「“カモ平”と呼ばれびっくり(笑)」

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、長谷川平蔵宣以役を好演中の中村隼人さんにインタビューしました。序盤から主人公の蔦屋重三郎(蔦重、横浜流星さん)と花の井(小芝風花さん)にカモにされるなど、コミカルな演技で注目を集めている平蔵。第6回では後の「火付盗賊改方」を予感させる凛々しい姿も印象的でした。愛されキャラとして人気の平蔵ですが、演じるのは「最初すごく怖かった」と語ってくれました。(聞き手・田代わこ)

平蔵は男くさい色気がある

――長谷川平蔵宣以にはどんなイメージがありましたか?

隼人さん:世間のみなさんも、きっと池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』のイメージを強くお持ちで、ドラマでも中村吉右衛門さんや大叔父の萬屋錦之介、丹波哲郎さんなど大御所のスター俳優たちが渋く演じていました。最新作では松本幸四郎さんが40代後半から演じ、やはり平蔵といえば喧嘩が強く粋で、男くさい色気があるイメージ。まだ30歳の若い役者が演じるというのは、最初すごく怖かったです。

――実際に撮影が始まり、大河ドラマの平蔵はいかがですか?

隼人さん:これまでのイメージとは全然違いました。最初、監督に「シケ」という、髪の毛を横に少し出す髪形にするといわれて。「色シケ」と呼ぶこともありますが、ふだん整った髪の毛を少し垂らして色っぽさを出すもので、舞台ではよく使っていました。でも、映像では珍しい。しかも大河で使うとは思いませんでした。

――演じるうえで、シケは役に立ちますか?

隼人さん:シケがあることで、ナルシストな部分が強いというのが見た目で伝わります。シケをどう生かすか監督と話して、自分でフッと吹いてみたのがはじまりで(笑)。その後も触ってみるなど演技で使うようになりました。かっこつけすぎると逆に笑えるというのがあるので、シケをいじることで芝居のおもしろさも出せます。だからシケがうまく風になびくよう、床山さんと一緒にびんつけ油の量を研究し、長さもミリ単位で調整しています(笑)。

「シケ」は平蔵のチャームポイント!

――「鬼平」のイメージとは違いますね。

隼人さん:このドラマでは、ふだん切り込まないような吉原を描いています。目をそむけたくなるような部分も扱っているので、重くなりそうなところで平蔵が少しでも視聴者の方の息抜きになればいいと思って演じています。また、一年かけて放送するので、平蔵を成長させていける余白があると思います。そこは意識して、どうやって彼をこのドラマで立派に成長させていけるかと考えています。だから、今はもう怖さやプレッシャーはなくなりました。

「カモ平」にびっくり

――蔦重たちにカモにされているので、視聴者から「カモ平」とあだ名も付けられました。

隼人さん:歌舞伎の楽屋で先輩にも言われて(笑)。ちょうど、2月に蔦屋重三郎が主人公となる歌舞伎に出演させていただくので今稽古中なのですが、勘九郎さんがアドリブで「今日はカモ平のおごりだ」と(笑)。みんなも見ているから知っていて、本当にカモ平が浸透し始めているようで、非常にびっくりしています。

――平蔵は、カモにされたことに気づいていたのでしょうか?

隼人さん:僕はわかっていないイメージで演じました。カモにされたあと、第6回で蔦重と会うシーンがありますが、金や入銀本について触れていません。蔦重には「粋」を教えてもらったと感謝しているんでしょう。平蔵は計算高くなくて嫌味のないところが愛嬌につながるのかなと思います。

蔦重の言葉にのせられ、花の井の気を引こうと盛大に紙花(チップ)をまく平蔵

ダメダメに見えるが、やるときはやる

――第6回、鱗形屋で偽板を掲げるシーンはかっこよかったです。

隼人さん:まず、仕事になるとシケをしまっています(笑)。「平蔵、シケはどうした?」という笑いがお茶の間から欲しいですね(笑)。平蔵はダメダメに見えるけど、やるときはやる。行動力があり、頭も切れるので、仕事とプライベートのギャップをお見せでればいいなと。また、そのギャップがあるからこそ、精神面を成長させると、後のしっかりとした平蔵になるという感じにつなげられたらと思っています。

――粟餅を食べながら蔦重と語る場面も印象的でした。

隼人さん:平蔵のセリフで蔦重が気持ちを切り替えるところなので、大事にしようと思って演じました。また、蔦重を守ったというところが視聴者の方にも植えつけられる場面で、平蔵と蔦重の関係性が出る部分だと思います。史実を調べると、平蔵は武士より町人と仲が良かったらしいです。だからこそ、いろいろな情報が入って捕り物につながったようです。蔦重や町の人たちともっと関わりをもって、この先のシーンにつながればいいと思います。

――蔦重に話をした後、去り際におもしろい表情もされました。

隼人さん:あまり平蔵が立派になりすぎないよう、抜けた部分も出すために何かしてほしいと監督に言われて。でも、シケがないシーンだったので、演出の深川貴志さんに「自分で言ったことに対して自分に酔って笑う」と提案していただいて、あのちょっと気持ちの悪い表情をしました(笑)。視聴者の方には、またカモ平やっているなと思っていただければ(笑)。

役者のライバル心をくすぐるのがうまい

――横浜さんとは舞台で共演して以来、親しくされているそうですが、座長としての魅力は?

隼人さん:彼は年下なので、かわいいと思うところが多いですね。蔦重は非常に明るくムードメーカー的な役柄ですが、彼自身は物静かな人間なので、蔦重を演じる負荷は大きいと思います。しかも大変な日程で、大先輩方と共演しているので、想像を絶するストレスやプレッシャーもあると思うのですが、それを感じさせないカラッとした性格です。毎回、流星は後悔のないように、ワンシーンワンカット臨んでいる。その姿を見てすごいなと思います。

――士気が高まりますか?

隼人さん:ピリッとしますよね。主演がテストの段階からグッと力を入れてやっていると、自分も負けていられないと思います。役者のライバル心をくすぐるのが非常にうまいと思います。

――横浜さんとは、蔦重と平蔵との関係について話しましたか?

隼人さん:ドラマの中で二人は年齢も近いので、お互い気を許せる相手なのかな、と話しました。武士と町人なので身分は違うけれど、平蔵は気にしない。だからこそ、後に軽犯罪者を社会復帰させるための施設「人足役場」をつくるという提言もできた。あまり偏見を持たない人物なのだと思います。

――平蔵について、いろいろ学ばれたのですか?

隼人さん:撮影前、四谷にある平蔵さんのお墓に行き、お経をあげてもらいました。そこで住職の方にお話を聞いたり、本を読んだり映像を見たり。世間のイメージの根幹にあるものは大事にしながら、「べらぼう」での要素も取り入れるという点を大切にしています。

――今後は、渡辺謙さん演じる田沼意次とも絡んできます。謙さんとのシーンはいかがでしたか?

隼人さん:すごい迫力でしたね。ちょっと隙がありそうな感じで田沼様を演じられ、あえて猫背にされたりもするのですが、でも決めるところでは目力が強くなり、緊張感が伝わってきて、役者としてすごいなと思いました。また、第1回と第2回の平蔵をご覧になり、「飛ばしているね、君。いいよいいよ!」と言ってくださって(笑)。その流れで、田沼様の前でも平蔵はちょっと変なことをします(笑)。謙さんも、それを受けて芝居を変えてくださり、楽しかったです。

――今後の放送も楽しみにしています。ありがとうございました。

中村隼人さん 1993年生まれ、東京都出身。二代目中村錦之助さんの長男。2002年、初代中村隼人として『寺小屋』の松王丸一子小太郎役で初舞台。歌舞伎座舞台のほか、ドラマ、情報番組などでも活躍。『大富豪同心』シリーズ(NHK)で主演。大河ドラマは『龍馬伝』、『八重の桜』に出演。 <あわせて読みたい>

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