Steamでヒットする“勝ち筋”「人気の近日登場」コーナー、掲載条件が猛烈に厳しくなったとのアナリスト分析。新機能が新たな生命線となるか
Valveは6月5日、それまでベータ版にて試験運用されていたSteamの新たなストアページを正式版としてリリースした。中でもユーザーごとの好みを反映しておすすめゲームが掲載されるパーソナルカレンダー機能が注目され、新しいゲームに出会えるとして話題になった(関連記事)。ゲームのマーケティングの専門家であるChris Zukowski氏は自身のブログ記事にて、このパーソナルカレンダーが多くのゲーム開発者にとって役に立つ新たなマーケティングツールになっているとの見解を示した。
SteamはValve社が運営するPCゲーム販売・配信プラットフォームである。もともとはValve社が開発したSource Engine製ゲームの配信や管理をおこなうものとして生まれたが、後にPCゲームを広く取り扱う世界的なプラットフォームへと成長を遂げた。リリースされるゲームの数は年々増加しており、2025年には2万本以上、2026年についても約半分が経過した本稿執筆時点で約1万2000本と昨年を上回るペースでゲームが発売されている(SteamDB)。
そんな群雄割拠のSteamでいかにして注目を集めるかは、ゲーム開発者にとって重要な問題であり続けてきた。特に重要視されてきたのが、Steamストアページのトップに掲載される「人気の近日登場」というコーナーである。このコーナーに掲載されると売り上げにつながるだけでなく、今すぐ購入しないものの欲しいと思った作品を登録しておける「ウィッシュリスト」への登録数を伸ばすことも期待できる。
ただし作品が「人気の近日登場」に掲載されるためには、一定数のウィッシュリスト登録が必要だとされている。草の根のマーケティング活動をおこなってウィッシュリスト登録を獲得し、「人気の近日登場」に掲載されることを狙うというのが、Steam上でのマーケティング手法として広く用いられてきた。
ところがSteamストアの仕様変更により、「人気の近日登場」に掲載されるために必要なウィッシュリスト登録数が跳ね上がることになった。過去の複数の調査によれば、もともと7000件程度だったところ、現在では10万件程度のウィッシュリスト登録が必要だと推測されている。これはすでに大注目を浴びていると言える数字であり、特にマーケティング予算の限られたインディーゲーム開発者にとっては到達が非常に困難な規模である。「人気の近日登場」への掲載条件はあくまで推測ではあるものの、これまで使われてきたマーケティングの黄金パターンのハードルは大きく上がった可能性があるわけだ。
そしてZukowski氏は複数のゲームのデータを引用しながら、ゲーム開発者にとって今後は掲載条件が厳しくなったとみられる「人気の近日登場」に代わり、パーソナルカレンダーが重要になるとの見解を示している。インプレッション数こそ少ないものの、ウィッシュリストに登録される割合が高く、掲載される期間も長いため、人気の近日登場よりもむしろ効果的に注目を集められるというのだ。
たとえば6月13日にリリースされた『Don’t Let It Starve』の開発者は、パーソナルカレンダーがリリースされた直後にウィッシュリスト登録数が急増して「寝てる間にいったい何があったんだ?」と驚きの声をあげている。パーソナルカレンダーの好みにマッチングする仕様のために「人気の近日登場」ではリーチできていなかったユーザーに知られるきっかけとなったものと思われる。
また、パーソナルカレンダーがリリースされて間もない6月8日にリリースされた『武装告解』は、リリース直前からフォロワー数が急増し始め、その後もじわじわと伸ばし続けている。発売後も最大1か月間は掲載のチャンスがあるパーソナルカレンダーの特性が反映されているのだろう。
パーソナルカレンダーは導入されたばかりの目新しい機能であり、事例もまだ少ない点には留意したいものの、かなり効果的にウィッシュリスト登録数が増加する可能性がうかがえる。このほか詳しいデータを確認したい場合は、同氏のブログ記事を確認されたい。
なお、パーソナルカレンダーに掲載される条件について詳しいことはわかっていない。Zukowski氏は自身のパーソナルカレンダーに掲載されているタイトルについて調査をおこない、およそ800人のフォロワーまたは8000件程度のウィッシュリスト登録があれば掲載されやすいとの推測をしている。ただし同氏の調査ではフォロワー145人での掲載が最低値として示されており、筆者の環境でもフォロワー数100人台のタイトルが複数表示されているのを確認できた。パーソナルカレンダーはユーザーの好みに合わせたタイトルが掲載されるため、人気の近日登場と比べてかなり少ないウィッシュリスト登録数でも掲載されるチャンスがあると思われる。
ところでパーソナルカレンダーのページは「過去1か月間にリリース」「過去7日間にリリース」「近日登場」の3つのセクションに分かれている。「近日登場」については閲覧日を含む週から8週間分のカレンダー形式になっており、今後リリースされる作品のカプセルアートを一望することができる。リリース日を設定する際には最低でも「2か月ほど先」にすると、パーソナルカレンダーに掲載されるチャンスを活かせることになるだろう。ちなみに早期アクセス配信と正式リリースのどちらの場合でもパーソナルカレンダーには掲載されるようだ。つまり、早期アクセス配信を開始して1か月以上が経過した後に、さらに正式リリースを2か月以上先に設定した場合、合計で約6か月間の掲載チャンスがあることになる。
Steamストアの仕様変更により、ゲームマーケティングの新たな黄金パターンを多くの開発者が模索していることだろう。今後ゲーム開発をおこなう際は、ただウィッシュリスト登録数を増やすのではなく、パーソナルカレンダーに掲載されるため「特定の層の好みに刺さる」ようなゲームを作ることがまず重要となるのかもしれない。
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