最高裁判所裁判官の「国民審査」 今回対象の裁判官はどんな人? 投票の注意点は

2月8日の衆院選では、最高裁裁判官の国民審査も同日に行われます。

今回審査の対象となるのは、高須順一(たかす・じゅんいち)氏と沖野眞已(おきの・まさみ)氏です。制度のポイントと、二人の経歴や扱った主な裁判を簡単にまとめました。

●「✕」が過半数ならその裁判官は罷免される

国民審査とは、最高裁の裁判官が裁判官としてふさわしいかを、国民が判断する制度です。衆院選と同じ日、同じ会場で行われます。衆院選の投票箱と国民審査の投票箱が並び、順に投票する流れです。

会場では、裁判官の名前が一覧になった用紙を渡されます。やめさせたい裁判官の欄に「✕」をつけて投票します。「✕」が有効投票の過半数だった場合、その裁判官は罷免、つまりやめさせられます。

●用紙に「◯」は書いてはならない

注意が必要なのは、「◯」をつけてはいけないという点です。やめさせたくない裁判官には「◯」をつけたくなりますが、「✕の記号以外の事項を記載したもの」は無効とされています(最高裁判所裁判官国民審査法22条1項2号)。

やめさせたくない裁判官については、何も書かずに投票用紙を投票箱に入れます(同法15条1項)。

●過去に罷免された裁判官は一人もいない

国民審査で罷免された裁判官は、これまで一人もいません。史上最も「✕」の割合が高かったのは下田武三(しもだ・たけそう)裁判官で、15.17%(昭和47年(1972年))でした。

下田裁判官は、沖縄の返還をめぐる発言が反発を招いたなどといわれています。

●国民が法律の専門家として判断する必要はない

「その裁判官の下した判決や考え方もよく知らないのに、✕をつけることなどできない」と思う方もいるかもしれません。

二人の略歴や関わった主な裁判の詳細は、最高裁のウェブサイトで確認できます。最高裁判所の裁判官の紹介ページ(https://www.courts.go.jp/saikosai/about/saibankan/index.html)の、それぞれの裁判官ついて、関わった主な裁判が全文とともに掲載されています。

こういった資料を熟読して判断できれば理想ですが、かなり難しい法律論を含んでいるため、理解するのはなかなか難しいかもしれません。

国民審査で求められているのは、専門家としての知見に立って裁判官の適性を審査することではなく、国民の感覚を司法に反映させることではないでしょうか。

必ずしも、法専門家でない方々が判決を丁寧に読み、理解したうえで判断する必要まではなく、自分が知っている事件で、納得のいかない判決を出した裁判官には「✕」をつける、というくらいの感覚でよいと思います。

●今回の対象は2人(高須順一氏・沖野眞已氏)

2人の略歴や扱った主な裁判を簡単に紹介します(最高裁HP参照)。

高須順一(たかす・じゅんいち)氏

1959年(昭和34年)生まれ。弁護士を経て、法政大学大学院法務研究科教授、日弁連司法制度調査会委員長などを歴任し、2025年(令和7年)3月に最高裁判事に就任しました。

趣味は万年筆を集めることで、仕事で使うことを前提に、新しい仕事のたびにどの万年筆で書くか考えて買うのが楽しみだそうです。好きな本の1つにJ・R・R・トールキンの『指輪物語』があります。

最高裁では、2024年(令和6年)衆院選の小選挙区の「1票の格差」が争われた裁判で、区割りは憲法に違反しないとする多数意見に対して、「違憲状態」であったとする意見(ただし、選挙までの期間が短く是正は困難だったとして結論には賛成)を付しています(令和7年(2025年)9月26日・第二小法廷)。

このほか、国有財産法に基づく使用許可を受けた県が、住戸の占有者に対し国の明渡請求権を代位行使できるとした判決(令和8年(2026年)1月9日・第二小法廷)などに関わっています。

沖野眞已(おきの・まさみ)氏

1964年(昭和39年)生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科教授、同研究科長・法学部長を経て、2025年(令和7年)7月に最高裁判事に就任しました。

趣味は「ミステリ」物を読むことや、観ること。お芝居も好きで、歌舞伎やミュージカルに行くことが多いそうです。

最高裁では、弁護士の「預り金口座」の預金と信託財産(預かっている財産)、差押えの関係を扱った判決(令和8年(2026年)1月20日・第三小法廷)で意見を付けています。

前提として、弁護士の仕事で預かる金銭は「預かり金口座」という、弁護士個人名の銀行口座とは別の口座に預けられます。

弁護士に対して債権を持っている人が、この弁護士の預かり金口座に対して差押えをした場合に、預かっている財産であるから差押えの対象とならない、としてこの差押えを排除するには、(弁護士個人の口座と預かり金口座が形式的に分かれているというだけでなく)信託の目的についての合意を具体的に主張する必要がある、などとしました。

令和7年(2025年)12月23日には、戸建て住宅のLPガス契約で、途中解約時に所定金額をガス事業者に支払う条項を消費者契約法に照らし無効とした判決(第三小法廷・全員一致)にも関わっています。

小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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