人工重力ステーションの米Vast Spaceが後発でも急成長できた理由とは?-同社CROが来日
民間の人工重力宇宙ステーションを開発する米Vast Spaceの最高収益責任者(CRO)であるOlivier Farache(オリヴィエ・ファラッシュ)氏が来日し、アジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2025」に登壇。商業宇宙ステーション「Haven-1」の進捗状況や日米連携の可能性などについて語った。 人工重力ステーション「Haven-1」を2026年に打ち上げへ 同社では、回転させることで人工的に重力を発生させることができる円筒形状の宇宙ステーション「Heaven-1」を開発している。 2026年の打ち上げに向けて、現在は米国の砂漠地帯でのモジュールの耐圧テストや振動試験、飛行モジュールの組み立てなどが、複数のフェーズで順調に進行中だという。また、同年中には主要な90以上のシステムを試験する500kg級「Haven Demo」衛星の打ち上げも予定されている。 Haven-1は、観光目的ではなく「科学実験のためのラボラトリー」として設計されていることも特徴。民間企業による微小重力環境下での、バイオ医薬品研究や先端製造技術、宇宙農業などの実験が可能になると話す。 後発ながらも「スピードと実行力」で注目 同社は2021年創業と後発ながら、民間主導の商業宇宙ステーションを建設することを目的とした、NASAの支援プログラム「Commercial Low Earth Orbit Destinations(CLD)」における注目企業の1社として急成長を遂げている。 その理由についてFarache氏は、民間資金で90%を社内製造する垂直統合モデルでの低コストかつスピーディな開発体制を挙げた。同社にはNASAやSpaceX出身の熟練技術者が多く在籍しているという。 「私たちはパワーポイントや紙の設計図だけでなく、実物を作って見せることを重視している」と同氏。すでに世界の宇宙シンポジウムでもHaven-1の実物大モックアップを展示するなどしており、エンジニアを900人規模で抱える組織になった現在も、シリコンバレー的な開発姿勢は変わらないと語った。 まずは2026年に実証試験用ステーションとしてHaven-1を打ち上げ、この実績を基に、CLDプログラムの第2フェーズで選定されれば、最初の Haven‑2 モジュールを2028年に打ち上げる予定だ。 日本は「米国に次ぐ重要な宇宙市場」 同氏は、日本市場を「米国に次ぐ重要な宇宙市場」と位置づけており、その一例として2025年4月の有人宇宙システム(JAMSS)とのパートナーシップを紹介した。日本の研究者や企業がHaven-1で科学実験を行うための窓口をJAMSSが担う。 また、Farache氏は自身が過去に石川県金沢市で暮らし、日本語を学んだ経験もあることから、日本市場に対する理解や関心の高さを強調。「日本の研究者や企業との連携を通じて、ISS後の実験環境の空白を埋め、国際的な研究の継続性を支えたい」と思いを語った。