火山噴火が排出した汚染物質を自ら浄化していた 温室効果ガス削減の新たな武器になる可能性
(CNN) 2022年1月に南太平洋で海底火山が噴火し、地表から約64キロ上空まで灰や蒸気、ガスが噴き上げられた。この噴火は現代における火山噴火の中でも最も激しい部類に入る。今回発表された研究によれば、こうした噴火が強力な温室効果ガスと闘える新たな武器の存在を明らかにした可能性がある。 【映像付き記事】2022年に発生した海底火山噴火の様子 トンガのフンガトンガ・フンガハアパイ火山は広島の核爆発の数百倍の威力で噴火し、津波と、地球を2周する衝撃波を引き起こした。学術誌ネイチャー・コミュニケーションズに先月28日に発表された新たな研究によると、このとき「予想外の」ことが起きた。噴火は引き起こした汚染の一部を自ら浄化し始めたというのだ。 この発見は、噴火に関する高度な衛星データを分析することで得られた。「通常そこには存在しないはずの巨大なホルムアルデヒドの雲を発見した」と語るのは、研究著者でオランダのコンサルタント会社アカシア・インパクト・イノベーションの物理学者マールテン・バン・ヘルペン氏。ホルムアルデヒドは、強力な温室効果ガスであるメタンが大気中で分解されるときによく生成される。 研究者たちは、かつて大西洋上で確認された化学プロセスを観察していると考えた。 サハラの砂塵が大西洋上に吹き飛ばされると塩水の飛沫と混ざり合い、鉄を含む微小粒子を形成することが発見されていた。そこに太陽光が当たると塩素原子が生成され、大気中のメタンと反応してその分解を促す。 研究によると、噴火により、オリンピック規格のプール約5万8000個分に相当する塩分を含んだ水蒸気と火山灰が成層圏に放出された。研究者らは、太陽光がその混合物に当たった際に塩素が生成され、噴火で放出されたメタンの一部を分解したと考えている。 研究チームはホルムアルデヒドの雲を10日間追跡。「ホルムアルデヒドは数時間しか存在しないため、このデータは雲が1週間以上にわたってメタンを分解し続けていたことを示している」とバン・ヘルペン氏は言い添えた。 この噴火では約33万トンのメタンが生成され、そのうち約900トンが1日で分解されたと研究者らは推計する。 今回の発見は気候変動の取り組みに新しい貴重な手段をもたらす可能性があるという。 メタンは20年間で二酸化炭素の約80倍の温室効果がある。現在では地球温暖化の要因の約3分の1を占めており、大気中の濃度は過去2世紀で倍になっている。 気候危機に対応するには、数百年にわたって大気中にとどまる炭素による汚染を削減することが重要だが、メタンの削減は実現しやすいと考えられてきた。メタンのほうが比較的短命で、濃度を下げることが短期的に見た地球温暖化の抑制に大きな影響をもたらしうるからだ。 今回の発見は理論上、排出源でのメタン排出の分解に活用できるとバン・ヘルペン氏は述べた。また、地球の温度を人為的に下げようとする気候工学手法にも示唆を与える可能性がある。海洋上の大気に鉄を含む粒子を注入して、噴火後に観察された化学プロセスを再現し、メタンを除去するというのだ。 しかし英ヨーク大学の大気化学者ピート・エドワーズ氏は慎重な見方を示している。この研究は成層圏でのデータを基にしているが、メタン除去の手法が実施されるのは対流圏になるとエドワーズ氏は指摘する。その影響を予測するのは難しく、「気候や大気汚染、生態系の健全性に意図しない影響を招く可能性がある」という。同氏は今回の研究に関わっていない。