「日本はもう『5G』すら買えないのか?」途上国向けスマホ「REDMI 17」が突きつける日本の現在地

シャオミ・ジャパンは、2026年8月28日より、エントリースマートフォン「REDMI 17」を発売する。市場想定価格は、4GBメモリ・128GBストレージ構成で34,980円(税込)からに設定され、早期割引期間中は29,980円(税込)で提供される。しかし、同機種の仕様や日本市場への投入背景は、部材高騰と円安に伴う日本経済の地盤沈下、インフラにおける新たな「デジタルデバイド(情報格差)」の懸念という構造的な課題を浮き彫りにしている。

5G・NFC非対応、「発展途上国向け仕様」の導入

REDMI 17は、7500mAhの超大容量バッテリーや6.9インチHD+ディスプレイを搭載する一方、現代の国内市場で標準となりつつある「5G」や、おサイフケータイだけでなく「NFC」も搭載していない。

同社担当者によると、本機はグローバルにおいて「デベロッピングカントリー(発展途上国)」向けに展開されている超廉価な4G専用モデルがベースである。日本向けにローカライズされた特別な仕様変更は行われず、最安の選択肢としてそのまま国内に導入された。この割り切った仕様の採用は、技術先進国とされてきた日本市場では異例の判断と言える。

部材高騰が強いる「価格スライド」と購買力の低下

この仕様の端末が日本で販売される背景には、深刻なコスト高と日本の購買力低下がある。同社によると、メモリなどの部材価格高騰が端末コストを直接押し上げており、全体の価格上昇が避けられない状況だという。

これまで国内では「3万円前後」がエントリー機の主要価格帯だったが、コスト上昇によりそのゾーンは4万~5万円台へと引き上げられた。その結果、従来の「3万円前後で一括購入できる端末」という需要を満たすためには、5GやNFCなどの機能を排した途上国向けの4Gモデルを投入するほかなかったのが実態だ。

根強い「最安需要」とデジタルデバイド固定化の懸念

一方で、こうした端末の需要は国内に根強く残っている。店頭販売を中心に、複雑な通信契約を組まずに「そのまま持ち帰れる、最も安くて壊れにくい端末」を求めるライトユーザーや高齢者、外国人層からの実需は無視できない規模だという。

しかし、5Gや決済機能を持たない端末がローエンド市場で定着することは、社会的なデジタルデバイドをさらに進行させる懸念がある。

▲2025年12月に発売された「REDMI 15 5G」はREDMI 17とほぼ同価格帯の36.980円ながら、名前のとおり5G対応(Xiaomi公式サイトより)

現在、通信キャリア各社による3Gの停波を経て、社会全体は5Gを活用した次世代インフラへの移行を進めている。また、キャッシュレス決済の普及が進む中、NFCを搭載しない端末はモバイル決済から遮断されてしまう。安さのみを理由に、これらのインフラから外れた4G端末に留まる層が固定化されることは、将来的なデジタル社会のサービスや利便性から彼らを事実上排除することになりかねない。

REDMI 17の投入は、物価高に苦しむ日本の消費者の「3万円前後で購入したい」という切実な実需に、メーカーが極限のコスト管理で応えた結果である。しかし、その内実が「発展途上国向けの仕様」をそのまま受け入れざるを得ない日本経済の現在地を示している点は見過ごせない。安価な選択肢が、一部のユーザー層をデジタル社会の進化から取り残すデジタルデバイドの引き金になりかねないという懸念は、極めて重い課題である。

▲このスマートフォンをローエンドとして受け入れるしかないのが、日本の現在地だ
旅人ITライター

雑誌『週刊アスキー』の編集記者を経て独立。世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。IT・通信業界やスマートフォンなどのモバイルテクノロジーを主軸に取材。世界各国の最新デジタル事情から、テクノロジーの力で旅をスマートにするガジェット・サービスまで、「旅×テック」の最前線を独自の視点で発信しています。

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