「働いても食べていけない」最低賃金2000円求め労組が会見…時給1820円でも“生活に余裕が生まれない”ワケ(弁護士JPニュース)

2026年度の最低賃金額を決める「目安審議」が、6月26日から始まる。 中央最低賃金審議会が各都道府県の地方審議会に示す引き上げの目安を決める手続きで、今年の改定額を左右する。 都道府県別の最低賃金(時給)一覧 政府はこれまで、最低賃金について「2020年代に全国加重平均1500円を達成する」との目標を掲げていたが、時期を見直し、「2030年代前半」に先送りすると報じられている。 審議入りの前日となる6月25日、全国労働組合総連合(全労連)と国民春闘共闘委員会が都内で会見。最低賃金を「いますぐ全国一律1700円以上」に引き上げ、将来的に2000円を目指すよう求める意見書を、中央最低賃金審議会に提出したと明らかにした。 会見では、全労連の黒澤幸一事務局長が要求の全体像を説明し、最低賃金近傍で働く郵便事業の集配員と地方の労働組合幹部が現場の実態を証言した。

黒澤事務局長は会見の冒頭、日本を「賃金が上がらない国」と表現した。 2025年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1121円と、前年度比で66円・6.3%増と過去最高の引き上げ幅を記録した。 だが、黒澤事務局長は「それでも実質賃金はプラスに転じていない。働く労働者や国民の生活は、物価高でどんどん苦しくなっている。今の最低賃金では、労働者はまじめに働いてもまともに食べていけず、引き上げ額としては不十分だった」と主張。 「もともと日本の最低賃金は低い水準にある」として、当面は全国一律1700円以上、将来的に2000円を目指すべきだと訴えた。

黒澤事務局長が審議の核心に据えたのが「生計費」だ。最低賃金法9条2項は、最低賃金の決定にあたり「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を考慮すると定めている 黒澤事務局長は、このうち生計費が「全くと言っていいほど考慮されていない」と指摘した。 根拠として示したのが、全労連が全国29都道府県・5万人超の協力で実施した「最低生計費試算調査」だ。 25歳の単身者が人間らしく暮らすには月額27万円(税込み)、時間額1700円以上(月150時間換算)が必要で、物価上昇を加味した直近の試算では1800円、1900円に達するという。また、都市部と地方で大きな差はないとされ、海外ではオーストラリアが約2887円、イギリスが約2656円に上る。 こうしたことから、黒澤事務局長は引き上げとともに、現在地域別に決められている最低賃金の全国一律化もあわせて求めた。


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黒澤事務局長の問題提起を裏づけるように、この日の会見では当事者2人が現場を語った。 郵政産業労働者ユニオンの組合員で勤続19年の船山良成氏は、郵便物や荷物の集配を担い、時給は額面では1820円。 しかし、時給のうち550円は評価による「資格給」で、ミスが一度でもあれば半年ごとの評価で時給が引き下げられるという。 また、市立横手病院労働組合の千葉崇仁書記長は、「発効日先送り」の影響を報告した。 病院のある秋田県の最低賃金は、2025年9月の改定で上乗せ額が目安の64円を上回る80円で時給1031円と決まった。 最低賃金法14条2項は、最低賃金が改定された場合の発効日を原則「公示の日から30日を経過した日」と定めているが、例外として、それより後の日を定めることも認められる。秋田県では発効日が翌年3月31日に設定されたため、千葉さんは「1年で見れば実質40円ほどの引き上げにとどまり、目安にも届かない」と訴えた。 また、会見で物価高の影響について聞かれた船山氏は、「子どもが通う塾の費用などがある中で、生活に余裕がない」と話し、「少しでも安い食材を求めて以前より多くのスーパーを回るようになり、何を買うかに神経を使い、買い物に時間がかかっている」と現状を説明。 千葉書記長も「職場まで車で片道約1時間。ガソリン代がかさむため、雪の多い地域に暮らしながら、四輪駆動車から燃費のよいFF(前輪駆動)車に乗り換えた」と明かした。 黒澤事務局長は会見の終盤、26日から始まる審議について、次のように注文をつけた。 「最低賃金法1条では、『賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする』と定められています。 ですが、この『労働者の生活の安定』に資する内容に、これまで中央最低賃金審議会、あるいは地方の最低賃金審議会での審議がなっていなかったのではないでしょうか」 全労連では7月にも最新の「最低生計費試算調査」の結果を公表するとしている。

弁護士JPニュース編集部

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