英国が発表する国防投資計画に批判が集中、新首相候補も沈黙を選択

英国防省は29日「首相が30日に国防投資計画を発表し、国防費を迅速かつ積極的に増額していく方法を明らかにする」と発表したが、主要メディアや野党は辛辣な批判を展開しており、新首相に近いバーナムも何も語らないことで将来の可能性を確保するつもりだろう。

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英国防省は29日「スターマー首相が30日に国防投資計画を発表し、国家防衛のために国防費を迅速かつ積極的に増額していく方法を明らかにする」「この計画には過去最大規模となる今後4年間で50億ポンド以上のドローン投資が盛り込まれる予定だ」「この投資は英軍のドローン運用における変革を推進し、新たな技術とインフラによってイノベーションを牽引する立場を維持し、国内雇用を強力に下支えするものになる」と発表した。

出典:GOV UK

“首相は6月30日、英国の防衛企業での重要な演説において国防投資計画を発表し、新たな国防投資が全軍におけるドローンおよび自律型システムの運用をいかに加速させ、今後何年にもわたって国家の安全を維持するかについて説明する。イランやウクライナでの紛争が示すように安価なシステムが高価値の目標を破壊し、技術革新のサイクルが年単位ではなく週単位で測定されるなどドローンは急速に戦争の形を変えつつある。ウクライナはロシアの野蛮な侵略から国を守るために月約20万機のドローンを使用しており、イラン紛争のピーク時には1日あたり700機の攻撃用ドローンが発射されていた”

“この50億ポンドの投資により、陸軍のヘリコプターと並行して飛行する攻撃用ドローン、新たなドローン技術によって敵の探知を無効化する空軍のジェット機、そして有人艦艇と無人艦艇で構成されるハイブリッドな海軍の艦隊を構築することになる。この資金はスウィンドンに開設された欧州最大のドローン試験センター=Uncrewed Systems Centreや、産業界とともに新たな自律型能力を迅速に開発・実戦配備するための新たな無人システム・タスクフォースにも充てられる。これにより英国は生産規模を継続的に拡大し、英国および同盟国を守るための最新鋭ドローンを確実かつ継続的に軍へ提供することが可能となる”

出典:Babcock International

“海軍は自律型艦艇およびAIを軍艦や航空機と組み合わせたハイブリッド海軍=Hybrid Navyへと変貌を遂げつつあり、これには以下のものが含まれる。ハイブリッド艦隊の火力を増強する91型無人ミサイルプラットフォーム、新型フリゲート艦を支援し、北大西洋全域で敵潜水艦を捜索するために設計された92型無人水中センサープラットフォーム、有人攻撃型潜水艦と連携して敵潜水艦を捜索し撃破する93型超大型無人潜水艦、ハイブリッド海軍や本土に対する脅威を上空から警戒・監視するために設計された94型無人探知プラットフォーム”

“2030年代には上記プラットフォームの数を増やし、ネットワーク化された海上防空システムの頭脳として最低でも6隻の共通戦闘艦=Common Combat Vesselsを就役させる予定だ。さらにパンテオン計画=Project PANTHEONを開始し、 F-35B部隊と連携して運用するためのジェット推進型ドローンの試験を含むハイブリッド空母航空団=Hybrid Carrier Air Wingを開発し、海兵隊の変革もさらなる投資の恩恵を受け、新たな高速ボートや最新のドローンおよび自律型技術が配備される”

出典:Defence Nuclear Enterprise

“陸軍は安価な使い捨ての自律型システムおよび徘徊型兵器に対する大規模投資を行い、FPVドローンや迎撃ドローンを調達するラップストーン計画=Project RAPSTONEに今後12ヶ月間で5,000万ポンドが追加投入される。英産業界を通じて無人車両やミッションシステムを迅速に開発・生産するための新たな計画、アップグレードされたアパッチに随伴して偵察、精密打撃、電子戦を実行する最大24機の自律型武装ドローンを2030年までに開発するニクス計画=Project NYX、情報収集、監視、目標捕捉、偵察を実施するウォッチキーパー更新のため最大24機の監視用ドローンを導入するコルヴス計画=Project Corvusなどの取り組みを通じて殺傷能力を向上させていく”

“空軍は有人ジェット機と協調して飛行し、英国の空を防衛する新たな自律型戦闘機=Collaborative Combat Airを開発する。少なくとも2030年までにCCAのデモンストレーターを飛行させる。今年中に新たな無人電子戦ドローン=ストーム・シュラウドを配備する”

出典:BAE

英国防省は共通戦闘艦=CCVについて「現在運用されている6隻の45型駆逐艦に取って代わるもの」「2030年代初頭からの納入が予定されている」「少数の大型で高価な艦艇に能力を集中させるのではなく有人および無人能力を組み合わせることで現代戦に適したものになる」「最低6隻のCCVは8隻の26型フリゲート艦、5隻の31型フリゲート艦、91型無人ミサイルプラットフォーム、92型無人水中センサープラットフォーム、93型超大型無人潜水艦、94型無人探知プラットフォームと連携して運用される」と説明している。

BBCは「退任前に国防投資計画を発表するというスターマー首相の決定は後任者=アンディ・バーナム(次期労働党党首候補)との間に緊張を生む可能性がある」「後任者は政権を引き継いだ際に国防費の見直しを望むかもしれないからだ」「バーナムは自身のチームが国防省との協議に参加した後、30日に発表する国防投資計画を承認したとThe Timesは報じたが、この件について首相官邸は確認を拒否した」と報じた。

Cut Welfare. Fund Defence. pic.twitter.com/OuQnyF2h7f

— Conservatives (@Conservatives) June 27, 2026

影の国防相=保守党のジェームズ・カートリッジ議員は30日に発表される国防投資計画について「これは少なすぎるし遅すぎる。ヒーリーとカーンズが『英国の安全が損なわれる』と言って辞任した時とほとんど金額が変わっていない。これはスターマーが何としても政治的遺産を残したいと切望しているため急いで進められたからだ。こんなものは紙切れ同然でスターマーは名ばかりの首相でしかない。次期首相は福祉を削減し、英国の安全を守るために必要な資金を軍隊に提供する必要がある」と述べ、自由民主党のエド・デイヴィー党首も「国防当局は本来必要なものを与えられるべきなのに厳しい選択を迫られている」と指摘。

軍は今後10年間をカバーする国防投資計画に対して「国防戦略の見直し結果=62項目の勧告反映と即応性を向上させるため最初4年間に280億ポンドが必要だ」と要求、辞任したヒーリー国防相は「(280億ポンドが無理でも)最低180億ポンドの国防費増額が必要だ」と訴えたが、スターマー首相は135億ポンドしか提示しなかったためヒーリー国防相が辞任し、後任のジャービス国防相が追加資金(10億ポンド~15億ポンドの間)を確保したものの、国防投資計画への追加資金は最大で150億ポンドしかなく、The Telegraphも29日「スターマーは最後の仕事として国防を軽視した」と報じている。

出典:16 Dywizja Zmechanizowana

“英国以外のNATO加盟国では既に歳入の多くを国防費に割り当てており、ポーランドはGDPの4.48%、リトアニアは4%、ラトビアは3.73%、米国は3.22%を支出している。ドイツは2030年までにGDP比3.7%の国防支出を予定しており、スウェーデンも同じ年までに3.5%を達成すると約束している。ヒーリーが辞任したのはスターマーが2030年までにGDP比2.68%しか支出しないと告げたからで、ジャービスが称賛している今回の合意内容も2030年までの支出額がGDP比2.69%に過ぎない。これはヒーリーが要求していた額(2030年までにGDP比3.0%達成)に年間93億ポンドも不足している”

“ヒーリーは下院での辞任声明の中で「この危険な時期に現在の国防投資計画は必要とされる水準をはるかに下回っている」「来年から2030年まで0.08%の増加にとどまり、3.0%に達する時期も3.5%への道筋も示されていない」「2030年までにNATO加盟国の半数以上がGDP比3.0%以上を国防費に充ててくるだろう」「英国も他の加盟国に国防費増額で遅れをとってはならない」と指摘した”

出典:Number 10

英国の主要メディアや野党は30日に発表される国防投資計画について辛辣な批判を展開しており、このような状況で新首相に近いバーナムが「スターマーの国防投資計画に同意する」と政治的に認めるはずがなく、正式に首相を引き継いだ後で「スターマーの国防投資計画を見直して再編する」と言い出す可能性は非常に現実的なシナリオだ。

スターマー首相は自身が約束した「2035年までに3.0%達成」や昨年のNATO首脳会談で自身が合意を支持した「2035年までに3.5%達成(軍事インフラに活用可能な投資を含めた場合の総額5.0%)」について何も触れず「作戦効率が向上する自律型無人システムの積極的な採用」を前面に押し出したインフォメーション・キャンペーンを展開し、国防投資計画の本質的な問題=資金不足の解決を「技術革新でカバーできる」とすり替えているに過ぎず、バーナムは現在の国防投資計画について何も語らないことで将来の可能性を確保するつもりで、このまま静かにスターマーの自滅を見守るのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Royal Navy

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