ASEAN、統合深化へ中期戦略 マレーシアで首脳会議

東南アジア諸国連合(ASEAN)は27日、マレーシアで首脳会議を開き、経済統合の深化に向けた5カ年の中期戦略をまとめ、公表した。(2025年 ロイター/Hasnoor Hussain)

[クアラルンプール 27日 ロイター] - マレーシアのアンワル首相は27日、首都クアラルンプールで開催した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議について、米国との関税交渉でどのような二国間協定を結んでも、他の加盟国の経済に悪影響を与えることがあってはならないとの認識で一致したと表明した。

米国と交渉するいかなる協定もASEAN全体の利益を守るものになるとの認識で一致したという。マレーシアは現在、ASEAN議長国。

ASEAN加盟6カ国は米国との交渉が不調に終われば、7月に32─49%の関税が課される可能性がある。

アンワル氏は「二国間交渉を進める中で、他国を犠牲にした決定が下されてはならないとの認識で一致した」と発言。同氏は、トランプ大統領に書簡を送り、関税を巡るASEANと米国の会合開催を要請したことを26日に明らかにした。

「人口6億5000万─6億6000万人(のASEAN)を守らなければならない」とも述べた。 もっと見る

<ミャンマー情勢>

内戦が長期化しているミャンマーに対しては、軍事政権と反政府武装勢力の一時停戦を全国に拡大し、信頼構築と対話開催を目指すよう促した。

アンワル首相は先月、タイの首都バンコクでミャンマーの軍事政権と、軍事政権に抵抗する「挙国一致政府(NUG)」と会談した。

アンワル氏は26日、ミャンマーへの関与で「重要な」進展があったと発言。27日には、ミャンマーの全ての当事者と関与していくことが前進の道であるとの認識でASEAN首脳が一致したと述べた。

<統合深化へ中期戦略>

首脳会議では、経済統合の深化に向けた5カ年の中期戦略をまとめ、公表した。「2045年までに世界4位の経済圏となるため、経済統合を深化し、多面的な課題に対応できるよう機動性を高める必要がある」と記した。

加盟国による貿易拡大、企業や人の自由な移動のほか、透明性向上や規制見直し、持続可能な産業の推進、外資誘致の促進などを掲げた。エネルギー安全保障やサプライチェーン(供給網)の強化なども求めた。

1967年に5カ国で創設されたASEANは近年、加盟国の急速な経済成長により、域内の総生産(GDP)が約3兆8000億ドル規模に達した。ただ経済や政治体制、人口規模、開発水準が大きく異なっていることから、統合の動きは遅れている。統合加速への課題としては、地政学的緊張や貿易関係の変化、技術革新、気候変動の影響、人口構造の変化などを列挙した。

合意や構想への遵守を保証する中心的機関がないものの、計画では、ASEAN経済共同体評議会が戦略の実行に責任を持ち、ASEAN事務局がその状況を監視するとしている。

専門家からは、米中間の関税摩擦や米政権による東南アジア諸国への高関税措置によって、ASEANの地域統合を加速させる必要性が高まっているとの声も聞かれた。

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