ライフはもうゼロに近いボイジャー1号と2号、NASAによる延命措置が施される

この画像を大きなサイズで見るボイジャー1のイメージ図 NASA / JPL-Caltech

  星間宇宙で孤独な旅を続けるボイジャー1号と2号。約半世紀に及ぶ過酷な宇宙旅でボロボロになった両機を守るため、NASAが延命措置を決定したそうだ。

 機体に搭載されたいくつかの科学装置を停止し、エネルギーの消費を最小限に抑えることにしたのだ。

 1977年に打ち上げられたボイジャー両機は、現在太陽系の外にある唯一の人工物で、星間宇宙の貴重なデータを送り届けてくれている。

 とは言え、1号も2号も高齢で、体力も限界に近い。一方、好奇心旺盛な地上の科学者たちは、まだまだ両機に働いてもらい、太陽系の外の状況が知りたい。

 そこでNASAのチームは、現在稼働している科学装置のスイッチを切り、両機にもう少し頑張ってもらうことにしたのだ。

 ボイジャー1号と2号の電力は、プルトニウムの崩壊熱を利用した原子力電池によって供給されている。

 だがいかに原子力を利用しているとはいえ、47年に及ぶの長旅で、両機ともにすでに体力の限界に近づいている。

 NASAジェット推進研究所のブログによれば、このままではあと数か月後に力尽きることになるほど、ボイジャーたちのライフはもうゼロに近いのだ。

 実際1号2号も深刻なトラブルに見舞われ、あわやという目にも遭っている。

 近い将来、ボイジャーズと永遠のお別れが来ることになるだろう。

この画像を大きなサイズで見るボイジャー2号のイメージ図 Credit: ESA/Hubble / M. Kornmesser / CC BY-NC-SA 2.0

 だが、それはできるだけ先であってほしい。今回の延命措置は、その最後のときを少しでも先延ばしにするためのものだ。

 ボイジャー両機は当初、それぞれ10基の科学装置を搭載して、地球を後にした。

 実はそのうちかなりの数がすでに停止されており、現在稼働しているのは「太陽圏」(太陽系周囲の荷電粒子の泡)と、その外に広がる「星間宇宙」を観察するうえで重要と考えられるものだけだ。

 だが今回、昨年の機器停止に引き続き、使用機器がさらに減らされる。

 じつのところ、ボイジャー1号の直近の延命はすでに行われている。それは2025年2月25日に停止された「宇宙線サブシステム」だ。

 この機器は、銀河や太陽から届く陽子などの宇宙線を観測するためのもので、1号が太陽圏を脱出したかどうかを判断する際にも重要なデータをもたらした。

この画像を大きなサイズで見るボイジャー1号 public domain/wikimedia

 そして2号については、3月24日に実施される。

 停止が予定されるのは、イオン・電子・宇宙線を観測する「低エネルギー荷電粒子装置」だ。

 これは2つのサブシステムで構成されており、広範囲なエネルギー測定を行うサブシステムと、磁気圏粒子を測定するサブシステムの両方が停止される。

この画像を大きなサイズで見るボイジャー2号イメージ図 NASA

 今回の延命措置によって、ボイジャー1号と2号の体力はあと1年は持つと考えられている。

 その間、1号は「磁力計」「プラズマ波サブシステム」「低エネルギー荷電粒子装置」、2号は「磁場装置」「プラズマ波装置」「宇宙線サブシステム」を運用しながら星間宇宙の探索を続ける。

 星間宇宙に存在する唯一の人工物として、両機が送り届けてくれるデータはきわめて貴重なものだ。

 それゆえに、今後さらに使用機器を絞ることで、NASAの技術者たちは、ボイジャーズが2030年代までデータを送り続けてくれることを期待している。

 とは言え、それも確実な話ではない。ボイジャー両機はすでに47年にわたる深宇宙の過酷な環境に耐えてきた。ゆえに予期せぬトラブルに見舞われ、突然の別れが来る可能性も否定できないのだ。

 そもそも半世紀も前に設計された機体が、今でも稼働してくれていること自体が驚きだ。

 それは当時の科学者や技術者の設計がいかに優れていたかを証明するものであると、現代のNASAスタッフは称賛している。

 ちなみにボイジャーズの現在の位置はNASAの公式サイトで確認できる。

Where are Voyager 1 and Voyager 2 Now?

References: Voyager 2 Detects Intense Radio Emissions - NASA Science

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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