焦点:トランプ氏「二正面外交」に批判の声、ウクライナ・イラン問題同日協議で

2月17日、スイスのジュネーブで、イランと米国の協議の前に集まったオマーンのバドル・ビン・ハマドブサイディ外相、米国のウィットコフ特使、トランプ氏の娘婿クシュナー氏。Oman’s Ministry Of Foreign Affairs/Handout via REUTERS

[ワシントン/ジュネーブ/ドバイ 17日 ロイター] - トランプ米大統領が長年にわたってディール(取引)に執着してきたことは有名だ。それでもトランプ氏が起用したお気に入りの特使に、スイス・ジュネーブでたった1日のうちにイランの核開発問題とウクライナ和平という2つの重大な交渉を掛け持ちさせたことに、多くの外交政策の専門家は困惑を隠しきれない。

17日に米国のウィットコフ特使とトランプ氏の娘婿クシュナー氏が行った「シャトル外交」を巡って専門家からは、2人の能力を超えた任務ではないかというだけでなく、彼らが2つの危機を解決できると真剣な見通しを果たして持っているのか、といった疑問の声が聞かれた。

2期目に就任してから1年間で複数の戦争や紛争を終わらせたと自慢するトランプ氏は、ノーベル平和賞の獲得を目指して、自身の実績として誇示できるような国際的合意をさらに積み重ねたい姿勢を鮮明に打ち出している。

しかし長らく続いてきたイラン、ウクライナ双方の問題に関する今回の大事な話し合いはにわかに設定されたもので、なぜ双方の協議の場としてジュネーブが選ばれたのかについても、当地が国際外交の舞台となってきた歴史があるという以外、何も説明されていない。

オバマ政権の外交政策顧問で、現在はグローバル・シチュエーション・ルームの戦略コンサルタントを務めるブレット・ブルーン氏は「トランプ氏は外交における困難で緻密な実務、すなわち質的側面よりも、『量』を重視しているように見受けられる。同じ場所で同時に双方の問題に取り組むのは全く合理性を欠いている」と批判した。

 オマーンを仲介役として間接協議の形で行われたイランと米国の協議について、イランのアラグチ外相は「(議論の)指針で基本合意した」と述べ、対話継続の方針を表明。ただ最終的な合意につながるかどうかはまだ見通せない状況だ。 もっと見る

<手に余る>

 このイランとの交渉を行ったウィットコフ氏とクシュナー氏ら米国代表は、ほとんど休む間もなくウクライナ、ロシアとの3カ国高官協議に臨むためジュネーブ市内のホテルに移動した。 もっと見る

イラン指導部に近いある当局者は、米国代表がジュネーブで「二重の課題」を掛け持ちしたことによって、米政府がどちらの外交努力にも誠実に向き合っているのかとの疑念が強まったと述べた。

同当局者はロイターに「この手法は対応の限界を超えるリスクがある。2人の重篤な患者がいる救命救急室に医者が1人しかおらず、どちらの患者にも継続的な注意が払えない事態に似ており、失敗の確率を高めている」と語る。

ベイルートにあるカーネギー中東センターのモハナド・ハジ・アリ氏は、イラン危機においては、米国がこのような方法で外交を処理するには多くのものが賭けられ過ぎていると分析。「ウィットコフ氏とクシュナー氏のチームに世界中の全問題の解決を委ねるとは、率直に言って衝撃的な現実だ」と付け加えた。

複数の専門家は、ウィットコフ氏とクシュナー氏のいずれも、アラグチ氏やロシア側代表のような百戦錬磨の交渉相手と対等に渡り合うには知識、経験とも浅過ぎるし、これほど複雑な対立は力量不足で手に負えないとの見方を示した。

ジュネーブでの2つの協議には、外交政策に精通しているルビオ米国務長官は出席しなかった。

<仕事の足かせ>

トランプ政権幹部はウィットコフ氏とクシュナー氏が果たす役割の妥当性をずっと擁護してきた。ディールを成立させる腕前や、トランプ氏が寄せる信頼、そして多年にわたるより伝統的な外交アプローチが失敗してきた点をその理由に挙げる。

ウィットコフ氏はトランプ氏の長年の友人で、その幅広い仕事範囲から「全ての事案の特使」としばしば称され、昨年のパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意実現で重要な役割を果たしたが、より恒久的な解決に向けた進展は見えない。イランやロシアに対するウィットコフ氏の外交努力も今のところほとんど成果はない。

クシュナー氏は、第1次トランプ政権でいわゆる「アブラハム合意」を主導し、複数のアラブ諸国とイスラエルの歴史的な外交関係樹立の立役者になった。ところがこの取り決めもトランプ氏の大統領復帰後大きな進展は見られない。

一方、複数の専門家によると、ウィットコフ氏とクシュナー氏の足元の外交任務遂行能力は、トランプ氏による国務省や国家安全保障会議の外交政策機構の縮小や、多くのベテラン職員解雇のせいで、損なわれているという。

ブルーン氏は「外交の専門人材には大穴が開いている。だからこのような大問題で適切に仕事ができる人材がなお残っているのかどうか疑問がある」と述べた。

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