クルド人組織PKK、武装解除と解散を宣言 トルコ政府と40年にわたり闘争

画像提供, Reuters

画像説明, トルコ・ディヤルバクルで2月に開かれた集会では、収監中のPKK指導者アブドラ・オジャラン氏の写真を参加者らが掲げた

オーラ・ゲリン(トルコ・ディヤルバクル)、ガブリエラ・ポメロイ

トルコ政府と40年にわたり武装闘争を続けてきた非合法組織「クルド労働者党」(PKK)が12日、武装解除し解散すると発表した。

PKKをめぐっては、収監中の指導者アブドラ・オジャラン氏(76)が2月、解散を呼びかけていた。この日の発表は、それを受けたものとみられる。

PKKの闘争は当初、トルコの人口の約2割を占めるクルド人の独立国家の創設が目的だった。しかしその後、分離主義的な目標から遠ざかり、自治とクルド人の権利の拡大に重点を置くようになった。

武装闘争を始めて以降、4万人以上が殺害されたとされる。

PKKはトルコ、欧州連合(EU)、イギリス、アメリカからテロ集団に指定されている。

PKKは、系列の通信社ANFが公表した声明で、「歴史的使命を終えた」とし、「武装闘争という方法を終える」と表明した。

また、クルド問題は今後、「民主的な政治によって解決できる」とした。

指導者のオジャラン氏は2月、自らの組織に武器を手放し、解散するよう呼びかけていた。同氏は1999年から、イスタンブールの南西にあるマルマラ海の島にある刑務所の独房に収監されている。

オジャラン氏は獄中からの手紙で、「政治体制を追求し実現するうえで、民主主義に代わるものはない。民主主義的なコンセンサスが基礎となる道だ」と書いた。

同氏やその支持者らが、PKK解散の見返りに何を得るかは不明。同氏が仮釈放されるとの憶測も出ている。

クルドの政治家らは、新しい政治対話と、クルド人の権利拡大に向けた道筋を期待することになる。

PKKとトルコ政府の双方にとって、現時点の合意に意味はあった。

PKKは近年、トルコ軍によって大きな打撃を被ってきた。中東情勢の変化で、PKKや関連組織がイラクやシリアで活動することも難しくなっている。

一方、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、2028年に予定されている次期大統領選挙に再び立候補するのに、親クルド人の政党の支持を必要としている。

ロイター通信によると、エルドアン氏率いる公正発展党(AKP)の広報担当は、今回の解散の決定を「テロのないトルコ」に向けた重要な一歩だとし、国の機関がPKK解散の過程を監視すると説明した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、PKKの決定を歓迎。実施されれば、和平への重要な一歩になると述べた。

AFP通信によると、EUは「すべての当事者がこの瞬間を生かす」よう呼びかけた。シリアのアサド・アルシャイバニ外相は、「地域全体の安定」にとって「極めて重要な瞬間」だと述べた。

英シンクタンクの王立国際問題研究所(チャタムハウス)のウィンスロップ・ロジャーズ氏は、トルコがクルド人の諸政党の要求を受け入れるには「本格的な民主主義への移行」が必要だと分析。ここ数カ月、トルコの指導者らが「一定の友好の意思」を示していたことから、PKKの解散が実現したとの見方を示した。

「それが、クルド人の政治や社会への完全参加に必要な大きな変化につながるかは、はるかに不透明だ」とロジャース氏は言い、「多くの意味で、ボールはトルコ側にある」とした。

PKKの発表と、トルコ政府の「テロのないトルコに向けた重要な一歩」だとするコメントを、クルド人らはどう受け止めたのか。

住民の大多数をクルド人が占める南東部の古都ディヤルバクルの茶店では、運転手のネクメティン・ビルメズさん(65)が、今後何が起こるかわからないと懐疑的な考えを述べた。

「あの人たち(政府)は何千年も、私たちをだまし続けてきた」

「自分はクルド人だと示す身分証をポケットに入れた時に初めて、何もかも大丈夫と信じる。そうならない限り、これを信じることはできない」

近くにいたメフメット・エクさん(80)は、「遅すぎる」と言った。

「10年前にこうなってほしかった。それでも、この流血を止めようという人には敬意を表する」

「この争いは兄弟同士によるものだ。山で死ぬ人(PKK)は私たちの一員であり、兵士ら(政府軍)も私たちの一員だ」

エクさんはさらに、PKK戦闘員の恩赦と、収監されているクルド人政治家の解放を望むと述べた。

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