「法を犯しているわけではない」スイッチ2転売購入YouTuberに批判殺到 ゲーム業界には深刻な悪影響も?

YouTuberラファエルさんが2025年6月にスイッチ2の転売品を購入し、プレゼント企画として発表したことが議論を呼んでいます。「法を犯してるわけでも無い」という反論に対し、批判が殺到。なぜゲーマーたちはここまで反発するのでしょうか。その背景には、ゲーム業界特有の深刻な問題が隠れていました。

「Nintendo Switch 2」(編集部撮影)

 YouTuberのラファエルさんが2025年6月9日に公開した動画で、Nintendo Switch 2の転売品を購入し、視聴者にプレゼントすることを発表。その後、6月12日にX(旧:Twitter)で批判に対して「法を犯してるわけでも無い」「ロレックスの転売と同じ」といった趣旨の反論したことで、議論が巻き起こっています。とくにスイッチ2を欲しくても手に入れられない人たちから非難が殺到しました。

 たしかに転売自体は合法です。資本主義の論理からすれば、需要と供給のバランスで価格が決まるのも自然なこと。

 しかし、そんな正論を聞いても、スッキリしない人が多いのではないでしょうか。

●読者の声が示す「違和感」の正体

 ラファエルさんの言動について、スイッチ2を買いたくても買えない人やゲームファンからは次のような声があがっています。

「札束持った大人が子供のおもちゃを横取りするような真似をするのは、人としてどうなのか」

「法律違反ではないが、道義的にどうかと思う」

 こうした声を見ると、問題は単純な法的判断を超えた部分にあることが分かります。特に印象的なのは「子供のおもちゃを横取り」という表現。ここには、任天堂のゲーム機が持つ特別な意味が込められています。

 任天堂は長年にわたり、幅広い年齢層に向けたゲームを開発し、特にファミリー層を重要な顧客として位置付けてきました。スイッチ2も例外ではなく、家族みんなでゲームを楽しんでもらうために、手に取りやすい価格設定がなされています。そんな商品が投機の対象になることに、多くのファンが怒りをあらわにしています

●PS5で起きた「見えない被害」を振り返る

「でも、売れれば企業にとっては同じでしょ?」 そう思う人もいるかもしれません。しかし、PS5の転売問題を振り返ると、ことはそう単純ではないことが分かります。

 PS5は2020年11月の発売から長期間にわたって品薄状態が続き、転売価格は定価の2倍近くまで跳ね上がりました。たしかにソニーにとって本体の売上は変わらなかったかもしれません。でも、本当の問題はその先にありました。

 ゲーム業界のビジネスモデルは特殊です。多くのゲームハードは、本体だけでは利益に乏しいか、場合によっては赤字で販売されていることもあります。利益の源泉は、そのハードで遊ぶゲームソフトの売上なのです。ソフトが売れるたびに、開発会社からハードメーカーにロイヤリティーが支払われ、これがビジネスの根幹を支えています。

 転売で購入されたPS5の多くは、転売屋の在庫として眠り続けました。誰も遊ばないゲーム機からは、当然ソフトの売上は生まれません。ハードが普及しない→ソフトが売れない→開発者の収益が減る→新しいゲームが作られなくなる。この悪循環こそが、転売問題の「見えない被害」なのです。

●なぜスイッチ2は特に狙われるのか

 スイッチ2の転売問題が特に注目される背景には、任天堂の商品特性があります。読者からも指摘があったように、任天堂のゲーム機は幅広い年齢層、特にファミリー層に人気が高く、比較的手に取りやすい価格設定がなされています。今回のスイッチ2も価格は約5万と、過去の任天堂ゲーム機と比較すると高価であるように思えますが、スペックや昨今の物価高を踏まえると「安い」という意見もあります。

 これはラファエルさんが引き合いにだしたロレックスのような高級ブランドとは正反対のアプローチです。ロレックスは富裕層をターゲットに、希少性も含めて価値を提供しています。一方、任天堂のゲーム機は多くの人に楽しんでもらうことを前提とした価格設定になっているとみられます。

 だからこそ、転売によって価格が高騰すると、本来の購買層であるファミリー世帯などが買えなくなってしまいます。その結果、「ハードは売れたけれど、本当に遊びたい人の手には届かない」という皮肉な状況が生まれるのです。これは2025年5月に転売が相次ぎ問題となった、「ちいかわ」とコラボしたマクドナルドのハッピーセット問題にも同じことがいえます。

●複雑に絡み合う問題

 ラファエルさんの「法を犯してるわけでも無い」という発言は、確かに事実です。しかし、影響力のあるインフルエンサーが転売品購入を肯定的に発信することで、転売を容認する風潮が広がる懸念も指摘されています。

 さらに深刻なのは、ゲーム業界への長期的な悪影響です。PS5の事例で見たように、転売によってハードが本来のユーザーに届かなければ、ソフトの売上低迷から開発者の収益減少、ひいては新作ゲームの減少という悪循環が生まれかねません。

 転売問題の根本的な解決は容易ではありませんが、ひとりひとりの消費行動が市場を形作っていくのも事実です。「転売品は買わない」と決めている人もいれば、「どうしても欲しいから購入する」と考える人もいます。それぞれの判断があるなかで、その積み重ねがゲーム業界の未来を少しずつ変えていくことになるでしょう。

(マグミクス編集部)

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