衆院選で争点「責任ある積極財政」って? 高市政権の新たな考え方とは<かほQチェック>
高市早苗首相が衆院選(2月8日投開票)で最大の争点に掲げたのが「責任ある積極財政」です。経済成長につながる分野に予算を重点的に投じ、経済成長率が債務残高の伸び率を上回れば、相対的な財政健全化を実現できる。そんな筋書きは果たして可能なのでしょうか? 人口減が進む日本で成長率を高めるのは容易ではなく、金融市場では財政規律の緩みに警戒感が広がっています。狙いと実現への課題を整理しました。
税率を上げずに税収増加?
高市首相が昨年10月、衆参両院で行った初の所信表明演説によると、「責任ある積極財政」は①戦略的な財政出動で所得や事業収益を増やし、税率を上げずに税収を増加させる②成長率の範囲内に政府債務残高の伸び率を抑えて財政の持続可能性を実現する―との2本柱で構成されます。
街頭演説する高市首相=1月27日、仙台市青葉区1本目の柱は予算規模を見れば明らかです。政府が昨年11月に閣議決定した物価高対応の経済対策は21兆円台で、高市首相は財務省が示した17兆円規模の原案を「しょぼい」と一蹴したとされます。財源の裏付けとなる2025年度補正予算(一般会計歳出総額)はコロナ禍後で最大。26年度予算案(同)も人工知能(AI)、量子技術といった成長分野への重点投資で過去最大の122兆円台に膨らみました。
2本目の柱を巡っては、高市首相は昨年11月、就任後初の衆院予算委員会で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の単年度黒字化目標を「変更」すると表明しました。
財政健全度を示す指標を修正
PBは借金に頼らず税収などで政策的経費を賄えているのか、財政健全度を示す指標です。歴代の政権が重視してきましたが、あっさりと修正した形です。
背景にはインフレ時代に入り、名目の国内総生産(GDP)成長率が堅調であれば、PBが黒字化しなくても、GDPに対する債務残高の比率は見かけ上、低下しうるとの考え方があります。
昨年11月の経済財政諮問会議で、首相の立場に近い若田部昌澄・前日銀副総裁(早稲田大教授)が文書で「PBの黒字化目標はデフレ時代の歴史的産物。歴史的使命を終えた」と強調しました。
金融市場は国債売り加速
要人の発言に敏感な金融市場は目下、財政規律の緩みを警戒し、国債売りを加速させています。
長期金利の指標となる新発10年債利回りは高市政権発足時の1・6%台から、首相が衆院を解散して食料品への消費税を非課税とする方針を発表すると一時、2・3%台まで上昇しました。約27年ぶりの高水準となり、住宅ローンを抱える人々は気が気でありません。
予算の財源となる国債を低金利で安定的に国内で買ってもらいたくても、金融緩和から脱却を模索する日銀にかつての大量購入は期待できません。民間の金融機関もリスク管理の観点から買い入れ余力は限られそうなのが現実です。
首相官邸で開かれた経済財政諮問会議=1月22日長期的な日本経済の成長力を示す「潜在成長率」も、内閣府の試算では2000年代に入って1%を切っており、上向かせるには経済構造を変える取り組みが必要です。1980年代に4%台だった潜在成長率は、少子高齢化に伴う労働投入量の低下で押し下げられ、過去の政権の成長戦略ではこの傾向は変えられませんでした。
1月の経済財政諮問会議で、永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミストら民間議員4人は書面で「『成長すれば債務比率が下がる』というメカニズムを、政策運営の中心に据えるべきだ」と主張しました。