引越しで疲れた人間が「日高屋」を人生初体験すると、こうなる / 一瞬で心を奪う本格「ニラレバ炒め」
私事で恐縮だが、このたび引越しをした。そしてその結果、中華チェーン「日高屋」のことを深く愛するようになった。読者の方々もぜひ一度引越しをしてから「日高屋」を訪れてみてほしい。
と、興奮のあまり恐ろしく性急かつ歪んだ書き出しになってしまったので、落ち着いて事の次第を振り返りたい。繰り返しになるが、このたび引越しをした。なにぶん引越しというのは疲れるもので、生活圏が大きく変化した影響もあり、筆者の心はやや荒んでいた。
そして、そんな筆者の生活圏に立ち現れたのが、これまで住んでいた土地では縁遠かった「日高屋」であった。ある日の夕食時、「まあどうせなら」と軽い気持ちで未体験の同店にふらりと入った結果、冒頭のごとき一人の「日高屋の虜」が生まれることになったのである。
ふらりと初めて入店した筆者には、「日高屋がリーズナブルな中華チェーンである」ということ以外の知識はなく、それゆえ正直に言えば、クオリティに対する期待もあまりなかった。さらに付け加えれば、「数多存在するメニューのうち何を選ぶべきか」という明確な指針もだ。
が、しかしである。不思議なことに、メニュー表を目にした瞬間、「ある一つのメニュー」に強烈に惹かれた。そのメニューとはすなわち、「ニラレバ炒め」である。
熟達したゴルファーはパターを打つ際に、カップまでのラインが輝いて見えることがあるらしいが、その時の筆者の目にも「ニラレバ炒め」の写真がまばゆく映った。筆者はゴルファーではないうえに場所も日高屋なのだが、とにかく「これを頼むべきだ」という直感が働いた。
空腹だったので、ライスとザーサイ、スープが合わさった「ニラレバ炒め定食」を注文した。単品の価格は580円、定食は810円だった。
後になって公式サイトを確認したところ、「ニラレバ炒め」の紹介には「当社の炒め物人気No.1メニュー」との記載があった。だがその情報を知るまでもなく、最初の一口だけで十分に、筆者は己の直感が正しかったことを悟っていた。
みずみずしく弾けるような食感のもやし、柔らかく臭みのないレバー、それらをコク深く彩る香ばしいタレ。口の中で湯気を立てて化学反応を起こす味わいは、こちらの想像を遥かに、恥ずかしいほどに上回るハイレベル具合だった。
本格中華料理屋の出すものに勝るとも劣らない、いや、「日高屋は本格中華チェーンなのだ」と思い知らせるような、すさまじい破壊力を宿した「ニラレバ」だった。
風味の隙の無さもさることながら、箸が埋まるようなボリュームの多さもたまらない。この低価格で、このクオリティを、これだけたっぷり楽しめるのかと、そんな使い古された賛辞を、しかし心から新鮮な気持ちで脳裏に浮かべ、うきうきと食べ進めたのをよく覚えている。
引越しのことがなくても虜になっていただろうが、当時の筆者には、余計にこの幸福感が沁みた。引越し以降の約3週間、既に3度は「日高屋のニラレバ」を食べている。この多すぎず少なすぎない頻度に、かえって生々しい中毒性を感じ取ってもらえれば幸いである。
かくして「日高屋」のおかげで心の凪を手に入れた筆者だったが、無論これからも同店に足を運ぶ所存だし、「ニラレバ」以外の新規開拓も押し進めていきたいと思っている。
ふと、あの時働いた直感は何だったのかと思い返すことがある。「まずはこれで日高屋に心を寄せて、そして楽になれ」と、そういう導きだったのだろうか。そんな風に考えてしまうのは、性急なのだろうか。
・今回訪問した店舗の情報 店名 日高屋 所沢プロぺ通店 住所 埼玉県所沢市日吉町 8-2 時間 9:00~2:00(金土24時間営業)