「ね、泯さん、世界中みんなおかしいよ」 田中泯が明かす坂本龍一さんの信念と生き方

たなか・みん/1945年、東京都出身。74年から独自の身体表現を追求し、俳優としても活躍。85年から山村に移住。近作に映画「国宝」(2025年)など。本年度文化功労者に選定(撮影:写真映像部・東川哲也) この記事の写真をすべて見る

 坂本龍一さんの最期の3年半を記録したドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto:Diaries」が公開される。日記に綴られた坂本さんの言葉を朗読したのはダンサーで俳優の田中泯さん(80)だ。AERA 2025年12月1日号より。

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「最初に坂本龍一さんと会ったのは2007年ごろです。その後もほとんどニューヨークで会っていました」

 田中泯さんは柔らかい口調でそう話し始めた。長年お互いを見知ってはいたが、顔を合わせたのはそれが初めてだったという。

「あのときは夜が白々と明けるまで飲み続けて、フラフラになって別れたからよく覚えています。随分とお互いのことを話して、最後に彼が『泯さんは“本物”を目指すんですね』って言ったんです。『そりゃそうですよ。坂本さんもそうでしょう』と返した。それはつまり嘘つきになりたくないということ。常に自分で自分に納得できる瞬間を選びたい、という思いが同じでした」

同じ次元で話ができた

 会うときはカウンターに横並びで座り、自然や人間のありよう、戦争や森の話など、さまざまを語り合った。21年からは坂本さんの舞台作品「RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』」に出演。交流が続いていた。

「坂本さんとは子どもが『なぜ? どうして?』と聞くのと同じ感覚、同じ次元で話ができた友だちでした。一方で多くを話すよりもむしろ無音の会話ができるような。そういう人に出会えて、本当に僕は運が良かったと思います」

 23年3月に坂本さんの訃報を受け、「Ryuichi Sakamoto:Diaries」での日記朗読の依頼を受けた。亡くなるまでの3年半を映した映像と日記で綴られる本作。最期の言葉を読むことに、複雑な思いが去来したという。

hair & make up 横山雷志郎(Yolken)/styling 九(Yolken)/costume Yohji Yamamoto POUR HOMME、Y’s for men/photo 写真映像部・東川哲也
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フリーランス記者。東京都生まれ。新聞社の契約記者を経てフリーランスに。AERAでは「現代の肖像」「シネマ×SDGs」連載やアート・カルチャー記事などを担当。著書に『“ツウ”が語る映画この一本』『2』。日本ソムリエ協会ワインエキスパート。愛玩動物飼養管理士1級。多摩美術大学美術学部Ⅱ部芸術学科卒。(photo/© Yu MITAMURA)
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