見た目はガラケー、中身はスマホの「MIVE ケースマ」徹底レビュー どこまで実用的で、誰に向くのか(1/3 ページ)

 韓国発のモバイルデバイスメーカー「ALT(アルト)」の日本法人であるALT JAPANは、2026年2月より日本市場での展開を開始した。日本参入後、第1弾製品となるSIMフリー端末「MIVE(マイブ) ケースマ(以下、ケースマ)」を2月19日に発売した。量販店やMVNOから3万5000円前後で販売されている。

「MIVE ケースマ(型番:AT-M140J)」

 ALTは、韓国で2020年に本格展開して以降、主にシニア向けやキッズ向けなどのセグメント市場に特化したスマホを展開してきた。約2年で主要通信キャリア3社が取り扱いを開始するなど、急成長を遂げている新興メーカーだ。AIを活用したセットトップボックスなど、スマホ以外のITデバイスも開発、製造しており、2025年11月には韓国の株式市場KOSDAQへ上場を果たした。

ALTは韓国の企業。AIを活用したセットトップボックス「AI 5 Set-top Box」。OSにはAndroid TVを採用している
キッズ向けスマートフォン「KTシナモンロールキッズフォン」

 そんなALTが日本市場に向けて売り出したのは、見た目はフィーチャーフォンなのに中身はスマートフォンというコンセプトの端末だ。2026年現在、国内市場で同様のコンセプトを持つ端末は類を見ない。ケースマは非常に貴重な存在といえる。だが、果たしてその実用性はどこまであるのだろうか。実機を使って詳しく確認していこう。

見た目はフィーチャーフォンなのに中身はスマートフォンというコンセプトのケースマ

 まずはスマートフォンのように使える点について見ていこう。

 OSには「Android 14 Go Edition」を採用した。アプリは基本的にスマホ向けに配信されているものをインストールできる。「LINE」や「Yahoo!ニュース」「乗換案内」「X」などは問題なく導入できた。ただし、「えきねっと」や「Google Gemini」など一部のアプリは、Google Playで検索しても結果が表示されずインストールできなかった。ALT JAPANによればOSによる制約だという。

 インストールできたYahoo!ニュースや乗換案内といった各アプリは、基本的にはスマホ向けに開発されており、タッチ操作を前提としている。ケースマのディスプレイは約4.3型で、フィーチャーフォンの3型クラスよりは大きく見やすい。とはいえ、6型台が主流のスマホほどではない。

 それでも、本機にインストールできたアプリは画面上でのタッチ操作が可能だ。スマホと遜色のないレベルで操作できるため、確認した限りではタッチ操作に制約が生じることはなかった。ただ、スマホを使い慣れた身からすると、方向キーでカーソルを都度合わせて中央キーで決定するのは少し手間に感じる。気が付けばついついタッチ操作に頼ってしまっていた。

 ちなみに、ケースマはタッチ操作に不慣れな人や基本機能だけを使いたい人に向け、タッチ操作を一時的に無効化する機能を搭載している。具体的にはキーパッド内の「#」を長押しするだけで、画面のタッチ機能をロックして物理キーだけを使用することが可能だ。

キーパッド内の「#」を長押しすると、画面のタッチ機能をロックすることが可能だ
#の長押しによりディスプレイにもタッチ機能をロックするとのメッセージが表示される

 キーパッドについて触れたので、続いて文字入力についても見ていこう。

 本機の特徴である物理キーボードだが、開発段階では日本特有の入力環境という大きな壁にぶつかったそうだ。韓国版のハードウェアをそのまま持ち込んだ結果、「平仮名・片仮名・漢字・英語」の複雑な文字切り替えや、日本人にとって当たり前の予測変換がスムーズにいかず、文字入力のしやすさを完璧には実現できなかった。

 そこでALTは、30年以上にわたり文字入力システムを開発してきたオムロン デジタルと協業した。Android向け多言語入力システム「iWnn IME」を採用し、OSの深いレイヤーからチューニングを行った。結果として、物理キーならではの入力ができる確実性と、Wnnの先読み予測変換を見事に融合させた。物理キーと画面上のソフトウェアキーボードをシームレスに行き来できる、直感的な操作性を実現している。

オムロン デジタルがケースマの発表会で公表した開発時の苦労
文字入力のしやすさにこだわった点もアピールされていた

 開発時にこだわったポイントだけあって、実際の入力で不便さを感じることはほぼなかった。例えば「あ」と入力すると「青空」「秋冬」「暖め」などが予測変換候補に表示される。「い」と入力すると「異」「今」など、「う」では「卵」「鶏」の他、「うち」や「受け」「上」などが表示された。至って自然な予測変換候補だ。例えば「ありがとう」を何度か入力していくと、学習機能により予測変換候補の先頭(画面の左端)に出てくるようになる。

メッセージを送信する画面。例えば「ありがとう」を何度か入力していくと、学習機能により予測変換候補の先頭(画面の左端)に表示されるようになる

 キーパッドの面積は想定以上に広く、指がしっかりと触れるようなスペースを設けている。本体の横幅は50mm台のフィーチャーフォンと比べると横長なので、乗り換えた人にとっては違和感があるだろう。それでも指が届かないほどではなく、片手で十分に入力できる幅だと感じる。

 具体的に各社の端末とサイズ(幅×高さ×奥行き)や重量を比較してみよう。確かにケースマが一回り大きく、重い端末であることが分かる。

  • MIVE ケースマ:約65.3×127.8×16.2mm、約195g
  • らくらくホン F-41F:約52×113×16.9mm、約134g
  • arrows ケータイ ベーシック F-41C:約51×113×15.8mm、約132g
  • DIGNO ケータイ KY-42C:約51×112×18.1mm、約125g
  • かんたんケータイ ライト KYF43:約51×115×17.9mm、約133g
  • ソフトバンク かんたん携帯11:約51×115×17.9mm、約125g
キー入力やカーソルの移動、決定といった基本的な操作はキーパッドで行えるようになっている。ただし、フィーチャーフォンに比べて幅があり、乗り換えた人にとっては違和感があるだろう

 ケースマを使って意外だと感じたのは、安心機能が充実していることだ。音声通話については、連絡先に登録された相手からのみ受信を可能にしたり、特定番号の受信を遮断したりできる。公衆電話をはじめとする非通知番号からの着信も拒否できるので安心だ。加えて、通話時には内容を録音する機能もあるため、いざというときのメモ代わりにも使えそうだ。

非通知の電話番号からの着信を拒否したり、通話を録音したりできる

 本体側面には物理キーとして「SOSボタン」を搭載する。このボタンを5秒以上長押しすると、あらかじめ設定した相手に位置情報をSMSで送信できる。相手にはSMS経由で「Google マップ」にアクセスできるリンクが届く。それをタップすると送信主の居場所を確認できるわけだ。GPSを活用した機能のため、電波を取得できないトンネルや地下では機能しづらいが、万が一の備えとしては心強い。指が届きやすい部分にSOSボタンを配置しているため、片手で簡単かつ迅速にボタンを押せる。短く押せばよく使うアプリを起動することも可能だ。

本体側面の「SOSボタン」
5秒以上長押しすると、あらかじめ設定した相手に位置情報をSMSで送信できる
受信者側には位置情報がSMSで届く。そのリンクをタップするとGoogle マップで発信者側の位置が分かる
SOSボタンを押した際に起動するアプリを後から変更することが可能だ

 また、定刻時間になったら「午後5時です」と知らせたり、電話やメッセージの着信時には「田中さんから電話が来ました」と教えたりする音声案内機能を搭載している。他にも、小さな文字を大きな文字に拡大して表示する拡大鏡機能を備えており、視覚や聴覚に不自由を感じる高齢者に適した安心機能がそろっている。

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 アウトカメラは約800万画素のシングル構成で、LEDフラッシュも搭載する。インカメラは約500万画素で、こちらもシングル構成だ。今回の試用では、アウトカメラで撮影した写真の画質を確かめた。都内の丸ビルと新丸ビルの中間地点(千代田区丸の内1丁目5ー1付近)から皇居を背にして東京駅舎を撮影したところ、昼間の方が鮮明な写真となった。倍率は1、2、3、4倍の4種類から切り替えられる。

アウトカメラは約800万画素のシングル構成となっている

 一方、夜に同じ場所から撮影したところ、昼間の写真とは異なり、ノイズや手ブレが十分に補正されず、全体的に不鮮明になってしまった。フィーチャーフォンに近いサイズのボディーに収められるカメラやセンサーのサイズには限界があり、こうした結果になるのも仕方がない。

まずは1x(1倍)で撮影した。左が昼、右が夜に撮影した写真となる(並びは以下同)
続いて2x(2倍)で撮影した
これは3x(3倍)で撮影した写真だ
最後に4x(4倍)で撮影。日中の屋外であれば、建物のディテールもしっかり描写されている。一方、全ての倍率で夜間の撮影は苦手だということが分かる

 ネットワークについても確認しておこう。

 SIMはeSIMに非対応の代わりにnanoSIMを1枚挿入できる仕様だ。Wi-Fiは2.4GHz IEEE802.11b/g/n、5GHz IEEE802.11a/n/acをサポートしている。ケースマとPCやタブレットをつないで、インターネットに接続するテザリングも利用できる。

 ケースマの対応バンドは次の通りだ。

  • 3G(W-CDMA): B1/B6/B8
  • 4G(LTE): B1/B3/B8/B18/B19/B26/B28/B41

 ALT JAPANによると、楽天モバイルについては動作検証ができておらず、コミュニケーションアプリ「Rakuten Link」にも未対応とのこと。一方、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアの通信には対応している。

 FeliCaは搭載していないため、おサイフケータイは利用できない。キャッシュレス決済サービスをケースマで利用するなら、Google Playからインストール可能な「PayPay」「楽天ペイ」などのQRコード決済サービスに頼るしかない。

 このように、ケースマは「スマホでのタッチ操作は不慣れだけれど、LINEなどのアプリは利用したい」というシニア層を主なターゲットとしている。従来の携帯電話の物理ボタンによる操作性と、スマホの快適性を両立したケータイ型スマートフォンといえる。物理キーがなければ嫌だ――そんな人はこれ1択といえるのではないだろうか。

 大手キャリアからも4Gに対応したフィーチャーフォンは出ているが、タッチ操作やLINEには非対応だ。その点で、ケースマは希少価値の高い存在といえる。

 ALTによると、ケースマのベースモデルである「STYLE FOLDER」は、韓国国内ではシリーズ累計約100万台を売り上げた人気シリーズ。通常のスマホからの乗り換えユーザーも多く、購入者の約60%が70代以上と、シニア層に広く支持されている。また、懐かしいガラケースタイルの2つ折りのデザインは、昨今のレトロブームやデジタルデトックスを目的とした若年層にも支持されている。シールやストラップでデコレーションして持ち歩くなど、新たなムーブメントも誕生しているという。

 日本でもMIVE ケースマをきっかけに新たなブームが起きるのか、今後の展開や進化を含めて期待したい。

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