検察のメンツを優先、外部の目を拒絶…江川紹子さんがみた検事性被害:朝日新聞

インタビュー

聞き手・大貫聡子

ジャーナリストの江川紹子さん=2025年、東京都内

 元大阪地検検事正だった北川健太郎被告(66)が準強制性交罪に問われている事件で、被害を訴え、独立した第三者機関によるハラスメントの実態調査などを求めていた女性検事が4月30日、大阪地検に辞表を提出した。同日の会見で女性検事は、「検事の仕事が大好きだった」と語り職場に戻ることを強く希望していたが、「もう耐えられないと思って辞表を出さざるを得なくなった」と語った。

 大阪地検特捜部の証拠改ざん事件後に設置された法相の諮問機関「検察の在り方検討会議」(2010年)委員を務め、長く司法を取材し、この事件にも注目してきたジャーナリストの江川紹子さんは、第三者機関による検証の必要性を指摘した上で、問題の根底には「自分たちは間違っていないという検察の独善的な体質がある」と批判する。

 ――女性検事はこの間、第三者委による検察全職員に対するハラスメントの実態調査などを求めてきましたが、法務省も検察庁も応じていません。元タレントによる性加害事案を受けてフジテレビは第三者委を設置し、報告書を公表。福井県も前知事によるセクハラ問題を受け、職員を対象とした実態調査を実施するなどしています。組織コンプライアンスとして客観的に原因や経緯を調査する例が増えるなか、今回の対応をどう見ますか。

 職場での性暴力被害を訴えている人が、職場で2次加害を受け、職場に復帰できない、と改善を求めていた。刑事事件とは別に、職場のあり方としてどうだったのか、労働環境に詳しい弁護士を入れるなど、第三者による実態調査や検証を行うべきです。

 この問題だけでなく、検察は一貫して外部の目を入れず、OBを含めた「検察一家」の利益やメンツを守ることを優先してきました。

 証拠改ざん事件でも、組織外の第三者を入れることに徹底的に抵抗しました。結果として、3人の弁護士がアドバイザーとして関わりましたが、調査自体は検察官が行いました。

 再審無罪が確定した袴田巌(いわお)さんについても、畝本直美・検事総長は、控訴断念時に「到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容」との談話を発表しました。弁護団から「今も犯人視しており、名誉毀損(きそん)だ」として提訴されています。

謙虚さのかけらもない 根底に人権意識の希薄さ

 謙虚さのかけらもなく、問題をきっかけにしてより良い組織に変えようとする意欲もない。

 今回の問題の根底には、人権意識の希薄さや自分たちは間違わないという独善的な体質がある。

 企業は株主による圧力や広告引きあげなど、適切に対応しなければ存続が危ぶまれる側面があります。しかし、刑事事件において起訴・不起訴を決める公訴権を独占する検察がなくなることはない。そうしたおごりもあると思います。

 ――江川さんが委員を務めた「検察の在り方検討会議」の提言で、検察内部での職員の不適正行為に関する情報窓口として監察指導部が設置されましたが。

 3月の記者会見に参加した際、女性検察官本人にたずねましたが、今回の問題でまったく役に立たなかったと言っていました。

会見する女性検事=2026年4月30日午後1時52分、大阪市北区、芹沢みなほ撮影

 ――女性検察官は性被害や一連の対応について「検察組織の問題」と訴えています。ただ、検察内部には事件の発端となった懇親会は職員有志が集まった私的なもので「個人の問題」であり「業務中のハラスメントと同じではない」という見方をする人もいるようです。

 いわゆるフジテレビ問題を検…

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この記事を書いた人

大貫聡子
くらし報道部
専門・関心分野
ジェンダーと司法、韓国、マイノリティー

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