社会に出たら理科は必要ない 日本の高校生は4カ国中最多
日本の高校生の半数近くは、社会に出たら理科は必要なくなると考えていることが7月3日、国立青少年教育振興機構が日本、米国、中国、韓国の高校生に行った意識調査で浮かび上がった。日本の学校では、観察や実験、マルチメディアの活用、プログラミングの学習、動画の利用などがよく行われている半面、体験的な学習は他の3カ国と比べてあまり行われていないと認識されていた。 調査は2024年9月から25年1月にかけて、日本の高校生4955人、米国の高校生1857人、中国の高校生7747人、韓国の高校生1558人に実施した。
大学や専門学校で専攻したい分野で、理学系(数学、物理学、化学、生物学、地学など)を挙げた高校生の割合は▽日本 19.2%▽米国 22.5%▽中国 39.7%▽韓国 26.6%――で、日本が最も低かった。一方で社会に出たら理科は必要なくなると「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えた割合は▽日本 45.9%▽米国 27.6%▽中国 17.6%▽韓国 33.5%――となり、日本は理学系の学問への関心や理科の必要性の認識が他の国に比べて低かった(=グラフ)。
学校での学習活動に着目すると、「教科書に沿った観察や実験をすること」「コンピューターやテレビ、ビデオなどマルチメディアを活用して学ぶこと」「プログラミングについて学ぶこと」「模型や実験の動画などの教材を用いて勉強すること」について、「よくした」「時々した」と答えた割合が、日本は他の国より高かった。 しかし、「野外に出かけて、科学について学習する」や「学んだ科学の知識を日常生活の問題解決に活用する」「科学に関するセミナーや体験プログラムに参加する」「自然や科学に関するコンクールに参加する」などの学習活動を「よくした」「時々した」と答えた割合は日本が最も低く、体験的な学習の割合が比較的低い傾向が見られた。
動物や植物、人体、天文に「とても興味がある」「まあ興味がある」と答えた日本の高校生は6割を超えていたが、最近1年間で自然観察や植物採集、生き物の世話などの体験を「何度もした」「少しした」と答えた割合は、4カ国の中で最も低かった。 また、科学技術に関するニュースや話題に興味や関心が「とてもある」「まあある」と答えた割合は4カ国ともに男子の方が女子より高くなるなど、ジェンダーギャップが見られる項目もあった。
調査結果について文部科学省で記者会見した、同機構の古川和理事長は「学校外での自然体験や科学に関する体験活動への参加の機会が、国際的に見て乏しい。学校だけでは提供し切れない多様で質の高い学びの機会を、学校外の教育機関や企業などの連携を通じて社会全体でつくっていく必要性を改めて感じた」と話した。
藤井 孝良 教育新聞 報道記者